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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その82 立ち塞がる障害!
しおりを挟むその日。僕らはいつも通り、次の「どん・だー」に向けての練習をやっていた。
「先輩。ここでリズムが崩れるんですけど、どうやったらミスなしでいけますか?」
「あぁ、そこね。……実は私もニガテなんだ」
「えぇ……」
まさか望子先輩も僕と同じところがニガテだとは思っておらず、どうやら対処法は分からないようだった。
これじゃここの部分だけ対処法が分からず、どうにもならない状況だった。
「路世先輩……」
望子先輩では話にならず、僕はもう一人の先輩である路世先輩に相談する。
「ん、あぁ。そこはだな……」
「失礼します」
と、そこへ紗琉が部室の扉を開いて、入ってくる。僕らが練習中であることなんてお構いなしに。
「どうしたのさ、紗琉。こんな時にノックもなしに」
「いや、少し尋ねたいことがあってね……。望子先輩」
「はっ、はい!?」
急に紗琉に呼ばれ、素っ頓狂な声をあげる望子先輩。紗琉が望子先輩に話があるということは、また大事な話なのだろう。
紗琉は「コホン」と咳払いをすると、望子先輩に問いかけた。
「この部に顧問の先生はいらっしゃるのですか?」
「……え?」
僕は耳を疑った。そもそも部活には、一人以上の顧問の先生がいるハズで、紗琉がわざわざそんなことを聞くことはないからだ。
生徒会はすべての部活のことを把握しており、どの部活に顧問が何人いるのか、それが誰なのかをしっかり把握しているハズだ。それなのに、わざわざ太鼓部の部長である望子先輩にそんなことを尋ねること自体がおかしかった。
「望子……」
路世先輩はため息を吐きながら、望子先輩の肩をぽんぽん、と叩いた。その表情はまるですべてを悟ったかのよう。
なにかを諦めたかのような表情で、僕はなんだか嫌な予感がしてならなかった。
「……そうだね。この太鼓部には今現在、顧問と呼べる先生はいません」
「えっ……」
僕は耳を疑った。確かに、部活中に顧問の先生が現れたことは一度もなかったがそれでも、顧問の先生はいるのだと思っていた。それなのに……今この部活には顧問の先生がいないとのことなのだ。
「やはりですか……。それでは、顧問の先生を探してきてください。顧問の先生が見つかるまでは活動を禁止し、部活動自体を停止してもらいます」
「ちょ、ちょっと待ってよ! それじゃ、顧問の先生が見つからなかったときはどうしたらいいのさ!」
僕は紗琉の肩を掴む。例え顧問の先生がいなくても、別に部活動に支障はないハズだ。それなのに、顧問が見つかるまで部活動を停止だなんて……いきなりすぎてワケが分からなかった。
「その時はこの部を解散してもらいます。勿論、「どん・だー」の出場枠も消えるけどね」
「そんな……」
それだけを告げると、紗琉は部室を去っていった。その紗琉の後ろ姿を見つめながら、僕は呆然とそこに立ち尽くしていた。
……折角ここまで来たというのに、またしても僕らに障害が降りかかってきたのだ。どうしてこんなに残酷なのだろうか。僕らはただ、みんなで楽しく部活をやりたいと言うのに。
僕らは部の存続のためにも、急遽部室を閉め、顧問の先生となる人物を探しに行くのだった。
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