76 / 142
第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その76 久々のランチタイム③
しおりを挟む
紗琉たちとともにお昼をすることになった僕だが、こうして紗琉の別の一面を見れて、ただただ驚くことしか出来なかった。
まさか紗琉が、望子先輩のことを嫌っているわけではないと知った時は本当に驚いてしまったほどだ。
あんな態度を取っていたので、てっきり嫌っているのだとばかり思っていたのだが……。
「……あれ?」
と、ここで僕はふと、ある疑問に気付く。
「どうしたのよ、鍵」
「いや、じゃあ紗琉は望子先輩のことが嫌いじゃないのに、なんで太鼓部のことを嫌うのかなって」
そう。紗琉は毎度毎度太鼓部のこととなると、忌み嫌うかのように扱うのだ。
その由来は望子先輩を嫌っているからだと思っていたのだが、紗琉が望子先輩を嫌っていないのであればどうしてなのか。そこが疑問になっていた。
「そっ、それは……」
珍しく紗琉が頬を掻きながらそっぽ向いた。これはなにか理由がある様子だった。
「なんでなのさ、紗琉?」
「それは……」
「それはね、紗琉ちゃんおかしな部活に部費を入れるのを嫌ってるのよ」
と、一夜がお茶を啜りながらそう答えた。
「おかしな部活……?」
「えぇ。太鼓部って、ケンくんたちが入るまでは生徒会に活動記録をまったく提出していなかったのよ。それで紗琉ちゃんが勝手に『太鼓部はおかしな部活』って思ってて。活動記録も提出しないのに部費を貰うだなんておかしいでしょ?」
言われてみれば確かにそうだ。どんな部活であれ、活動記録を生徒会に提出するのがこの学校の義務でもあるのだ。
それを無視して、ただ部費だけ貰うだなんてそんなのは不正とも言える行為だ。部費が個人的なものに使用されていないかを確かめるための活動記録なのに、それを提出しなければそりゃ、おかしな部活だと思われてもおかしくはない。
「だからこそ、紗琉ちゃんは太鼓部のことを嫌ってるの。でも最近はケンくんが色々と話してくれるからイメージも前よりかはだいぶ変わってきてるのよ?」
「そうなんだ……。良かった。僕はてっきり、太鼓に関してなにか嫌な思い出でもあるのかと思ったよ」
「そっ、そんなわけないでしょ! 私は太鼓とは縁のない女なのっ!」
珍しくムキになりながら紗琉は答えた。
でもまぁ、太鼓部を嫌っている理由も大体分かったことだし、これから改善していけばいいか。
「っと、そろそろ時間ね。次は移動教室だったわよね」
「そうだね。それじゃ、この辺でお開きにしよっか」
三人とも、自分の弁当箱を仕舞い、そのまま教室へと戻っていく。
なんだか、今日は一夜と紗琉と三人でお昼を食べれて良かったような、そんな気がするのだった。
まさか紗琉が、望子先輩のことを嫌っているわけではないと知った時は本当に驚いてしまったほどだ。
あんな態度を取っていたので、てっきり嫌っているのだとばかり思っていたのだが……。
「……あれ?」
と、ここで僕はふと、ある疑問に気付く。
「どうしたのよ、鍵」
「いや、じゃあ紗琉は望子先輩のことが嫌いじゃないのに、なんで太鼓部のことを嫌うのかなって」
そう。紗琉は毎度毎度太鼓部のこととなると、忌み嫌うかのように扱うのだ。
その由来は望子先輩を嫌っているからだと思っていたのだが、紗琉が望子先輩を嫌っていないのであればどうしてなのか。そこが疑問になっていた。
「そっ、それは……」
珍しく紗琉が頬を掻きながらそっぽ向いた。これはなにか理由がある様子だった。
「なんでなのさ、紗琉?」
「それは……」
「それはね、紗琉ちゃんおかしな部活に部費を入れるのを嫌ってるのよ」
と、一夜がお茶を啜りながらそう答えた。
「おかしな部活……?」
「えぇ。太鼓部って、ケンくんたちが入るまでは生徒会に活動記録をまったく提出していなかったのよ。それで紗琉ちゃんが勝手に『太鼓部はおかしな部活』って思ってて。活動記録も提出しないのに部費を貰うだなんておかしいでしょ?」
言われてみれば確かにそうだ。どんな部活であれ、活動記録を生徒会に提出するのがこの学校の義務でもあるのだ。
それを無視して、ただ部費だけ貰うだなんてそんなのは不正とも言える行為だ。部費が個人的なものに使用されていないかを確かめるための活動記録なのに、それを提出しなければそりゃ、おかしな部活だと思われてもおかしくはない。
「だからこそ、紗琉ちゃんは太鼓部のことを嫌ってるの。でも最近はケンくんが色々と話してくれるからイメージも前よりかはだいぶ変わってきてるのよ?」
「そうなんだ……。良かった。僕はてっきり、太鼓に関してなにか嫌な思い出でもあるのかと思ったよ」
「そっ、そんなわけないでしょ! 私は太鼓とは縁のない女なのっ!」
珍しくムキになりながら紗琉は答えた。
でもまぁ、太鼓部を嫌っている理由も大体分かったことだし、これから改善していけばいいか。
「っと、そろそろ時間ね。次は移動教室だったわよね」
「そうだね。それじゃ、この辺でお開きにしよっか」
三人とも、自分の弁当箱を仕舞い、そのまま教室へと戻っていく。
なんだか、今日は一夜と紗琉と三人でお昼を食べれて良かったような、そんな気がするのだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
へたくそ
MO
青春
野球が大好きなのに“へたくそ”な主人公、児玉良太。
チームメイトで野球センス抜群なキャッチャー、松島健介。
後輩マネージャーで児玉に想いを寄せる、町村早苗。
3人の視点から物語は進行していきます。
チームメイトたちとの友情と衝突。
それぞれの想い。
主人公の高校入学から卒業までの陵成高校野球部の姿を描いた物語。
この作品は
https://mo-magazines.com/(登場人物一覧も掲載しています)
小説家になろう/カクヨム/エブリスタ/NOVEL DAYS
にも掲載しています。


Vママ! ~中の人がお母さんでも推してくれる?~
ウメ
青春
「こんマリ~! メタライブ0期生、天母(あまも)マリアですぅ」
個性豊かなVTuberを抱える国内最大の運営会社メタライブ。マリアはそれを発足時から支える超有名VTuberだ。
そんな彼女の大ファンである秋山翔は、子離れできない母を煙たがる思春期の高校一年生だった。
しかし翔はある日、在宅ワークをする母の仕事部屋を覗き、マリアとして配信する姿を目撃してしまう。推しの中の人は、自分のウザい母だったのだ!
ショック死しそうになる翔。だが推しを好きな気持ちは変わらず、陰から母(推し)をサポートすることに。そんな事情を知らず、母はお風呂配信やお泊り配信の仕事を約束してしまい……
――中の人が母だと知った息子を中心に織りなす、VTuber母子コメディ開幕!
(※本作は【切り抜き】がきっかけで物語が進みます。また、第1話はキャラ紹介が中心になっています)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

優等生の美少女に弱みを握られた最恐ヤンキーが生徒会にカチコミ決めるんでそこんとこ夜露死苦ぅ!!
M・K
青春
久我山颯空。十六歳。
市販の安いブリーチで染め上げた片側ツーブロックの髪型。これ見よがしに耳につけられた銀のピアス。腰まで下ろしたズボン、踵が潰れた上履き。誰もが認めるヤンキー男。
学力は下の下。喧嘩の強さは上の上。目つきも態度も立ち振る舞いまでもが悪い彼が通うのは、言わずと知れた名門・清新学園高等学校。
品行方正、博学卓識な者達ばかりが集まる学校には似つかわしくない存在。それは自他ともに持っている共通認識だった。
ならば、彼はなぜこの学校を選んだのか? それには理由……いや、秘密があった。
渚美琴。十六歳。
颯空と同じ清新学園に通い、クラスまでもが一緒の少女。ただ、その在り方は真逆のものだった。
成績はトップクラス。超が付くほどの美少女。その上、生徒会にまで所属しているという絵にかいたような優等生。
彼女の目標は清新学園の生徒会長になる事。そのため"取り締まり"という名の点数稼ぎに日々勤しんでいた。
交わる事などありえなかった陰と陽の二人。
ひょんな事から、美琴が颯空の秘密を知ってしまった時、物語が動き出す。

あの音になりたい! 北浜高校吹奏楽部へようこそ!
コウ
青春
またダメ金か、、。
中学で吹奏楽部に挫折した雨宮洸。
もうこれっきりにしようと進学した先は北浜高校。
[絶対に入らない]そう心に誓ったのに
そんな時、屋上から音が聞こえてくる。
吹奏楽部で青春and恋愛ドタバタストーリー。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
クルーエル・ワールドの軌跡
木風 麦
青春
とある女子生徒と出会ったことによって、偶然か必然か、開かなかった記憶の扉が、身近な人物たちによって開けられていく。
人間の情が絡み合う、複雑で悲しい因縁を紐解いていく。記憶を閉じ込めた者と、記憶を糧に生きた者が織り成す物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる