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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その76 久々のランチタイム③
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紗琉たちとともにお昼をすることになった僕だが、こうして紗琉の別の一面を見れて、ただただ驚くことしか出来なかった。
まさか紗琉が、望子先輩のことを嫌っているわけではないと知った時は本当に驚いてしまったほどだ。
あんな態度を取っていたので、てっきり嫌っているのだとばかり思っていたのだが……。
「……あれ?」
と、ここで僕はふと、ある疑問に気付く。
「どうしたのよ、鍵」
「いや、じゃあ紗琉は望子先輩のことが嫌いじゃないのに、なんで太鼓部のことを嫌うのかなって」
そう。紗琉は毎度毎度太鼓部のこととなると、忌み嫌うかのように扱うのだ。
その由来は望子先輩を嫌っているからだと思っていたのだが、紗琉が望子先輩を嫌っていないのであればどうしてなのか。そこが疑問になっていた。
「そっ、それは……」
珍しく紗琉が頬を掻きながらそっぽ向いた。これはなにか理由がある様子だった。
「なんでなのさ、紗琉?」
「それは……」
「それはね、紗琉ちゃんおかしな部活に部費を入れるのを嫌ってるのよ」
と、一夜がお茶を啜りながらそう答えた。
「おかしな部活……?」
「えぇ。太鼓部って、ケンくんたちが入るまでは生徒会に活動記録をまったく提出していなかったのよ。それで紗琉ちゃんが勝手に『太鼓部はおかしな部活』って思ってて。活動記録も提出しないのに部費を貰うだなんておかしいでしょ?」
言われてみれば確かにそうだ。どんな部活であれ、活動記録を生徒会に提出するのがこの学校の義務でもあるのだ。
それを無視して、ただ部費だけ貰うだなんてそんなのは不正とも言える行為だ。部費が個人的なものに使用されていないかを確かめるための活動記録なのに、それを提出しなければそりゃ、おかしな部活だと思われてもおかしくはない。
「だからこそ、紗琉ちゃんは太鼓部のことを嫌ってるの。でも最近はケンくんが色々と話してくれるからイメージも前よりかはだいぶ変わってきてるのよ?」
「そうなんだ……。良かった。僕はてっきり、太鼓に関してなにか嫌な思い出でもあるのかと思ったよ」
「そっ、そんなわけないでしょ! 私は太鼓とは縁のない女なのっ!」
珍しくムキになりながら紗琉は答えた。
でもまぁ、太鼓部を嫌っている理由も大体分かったことだし、これから改善していけばいいか。
「っと、そろそろ時間ね。次は移動教室だったわよね」
「そうだね。それじゃ、この辺でお開きにしよっか」
三人とも、自分の弁当箱を仕舞い、そのまま教室へと戻っていく。
なんだか、今日は一夜と紗琉と三人でお昼を食べれて良かったような、そんな気がするのだった。
まさか紗琉が、望子先輩のことを嫌っているわけではないと知った時は本当に驚いてしまったほどだ。
あんな態度を取っていたので、てっきり嫌っているのだとばかり思っていたのだが……。
「……あれ?」
と、ここで僕はふと、ある疑問に気付く。
「どうしたのよ、鍵」
「いや、じゃあ紗琉は望子先輩のことが嫌いじゃないのに、なんで太鼓部のことを嫌うのかなって」
そう。紗琉は毎度毎度太鼓部のこととなると、忌み嫌うかのように扱うのだ。
その由来は望子先輩を嫌っているからだと思っていたのだが、紗琉が望子先輩を嫌っていないのであればどうしてなのか。そこが疑問になっていた。
「そっ、それは……」
珍しく紗琉が頬を掻きながらそっぽ向いた。これはなにか理由がある様子だった。
「なんでなのさ、紗琉?」
「それは……」
「それはね、紗琉ちゃんおかしな部活に部費を入れるのを嫌ってるのよ」
と、一夜がお茶を啜りながらそう答えた。
「おかしな部活……?」
「えぇ。太鼓部って、ケンくんたちが入るまでは生徒会に活動記録をまったく提出していなかったのよ。それで紗琉ちゃんが勝手に『太鼓部はおかしな部活』って思ってて。活動記録も提出しないのに部費を貰うだなんておかしいでしょ?」
言われてみれば確かにそうだ。どんな部活であれ、活動記録を生徒会に提出するのがこの学校の義務でもあるのだ。
それを無視して、ただ部費だけ貰うだなんてそんなのは不正とも言える行為だ。部費が個人的なものに使用されていないかを確かめるための活動記録なのに、それを提出しなければそりゃ、おかしな部活だと思われてもおかしくはない。
「だからこそ、紗琉ちゃんは太鼓部のことを嫌ってるの。でも最近はケンくんが色々と話してくれるからイメージも前よりかはだいぶ変わってきてるのよ?」
「そうなんだ……。良かった。僕はてっきり、太鼓に関してなにか嫌な思い出でもあるのかと思ったよ」
「そっ、そんなわけないでしょ! 私は太鼓とは縁のない女なのっ!」
珍しくムキになりながら紗琉は答えた。
でもまぁ、太鼓部を嫌っている理由も大体分かったことだし、これから改善していけばいいか。
「っと、そろそろ時間ね。次は移動教室だったわよね」
「そうだね。それじゃ、この辺でお開きにしよっか」
三人とも、自分の弁当箱を仕舞い、そのまま教室へと戻っていく。
なんだか、今日は一夜と紗琉と三人でお昼を食べれて良かったような、そんな気がするのだった。
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