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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その75 久々のランチタイム②
しおりを挟む「そういえばなんだけど」
と、唐突に一夜が声を漏らす。僕と紗琉は持参した弁当を食べながら、ふと一夜の方を振り向く。
「どうしたのよ、急に」
「いや……この前、望子先輩が生徒会室に来たでしょ?」
「あっ、あー……」
そういえば、そんなこともあったな、と紗琉は感嘆の声を漏らす。きっと昨日の扇風機の件だろう。
部室にクーラーをつけろと言いに行ったことだろう、きっと。
「その時ね、紗琉ちゃんったらいつも通りの態度で追い返したんだけど……」
「ちょっと! その話はやめなさいよ!」
と、紗琉は一夜の話を遮ろうとするが、それを無視し、一夜は話を続ける。
「望子先輩が帰った後、紗琉ちゃんってばまんざらでもなさそうな顔しながら、『やれやれ……困った先輩だわ』なんて言ってたのよ?」
「……え?」
そこで僕は紗琉のほうを見返した。紗琉はほのかに頬を赤くしながら絶句していた。
……まさか、紗琉は望子先輩のことを嫌っているわけではないのだろうか?
かつての会話の中で、僕はてっきり紗琉は望子先輩のことを嫌っているのだと思っていたが……。
「まったく。紗琉ちゃんって意外とツンデレよねぇ~」
「だーかーらー! やめなさいって言ってるでしょ!! ……って、鍵もそんな意外そうな顔でこっち見ないでよ!」
「あ、うん……ごめん」
まさかそんな顔をしていたとは。
でも正直意外だった。紗琉のことだし、面倒な先輩こそ嫌う対象かと思っていたのだが……まんざらでもないとは。
「きっと最初のほうはツンケンしてるけど、次第にデレていくに違いないわ! うん!」
と、どこか別の場所を見ながら一夜は独り言を呟いていた。……一体なんのことを言ってるのだろうか?
「……一夜ってたまーにこうなるから怖いのよね」
と、自分の弁当をついばみながら紗琉はぼそりと呟いた。
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