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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その73 蒸し暑いこの季節
しおりを挟むとある練習の合間。僕らは次の試合へ向けた練習をこなしつつ、休息を摂っていた。
やはり次が名門校と戦うというだけあってみんな気合の入り方が全然違っていた。
「ふぅ……」
カラッカラに渇いた喉を、キンキンに冷えた麦茶が潤す。
やはり暑い時には麦茶が一番だ。夏場こそ、麦茶が一番美味しい季節だと、僕個人としては思う。
「いやー……今日も暑いねぇ」
「そうですねー」
汗をタオルで拭う望子先輩を横に、僕は水分補給をしながら休んでいた。
最近梅雨に入ったにもかかわらず、雨が降らない日は物凄く暑かったりする。
まるで真夏のような蒸し暑さに加え、室内での練習だ。そりゃ暑いに決まっている。
部室にクーラーなんてものはないから、扇風機が何よりの救いだった。
ぶんぶんと首を振りながら、蒸し暑くなった室内を頑張って冷却しようと努力している。……頑張ってくれ、扇風機よ。
「まさか、今年からこんなに蒸し暑くなるとはな……」
確かに、今年は例年と違って非常に蒸し暑い六月となっていた。テレビでもまるで真夏のように扱われており、異常気象の象徴のようだともいわれるほどだ。
その暑さのせいか、すでに部室内を閉め切れば完全にサウナとなってしまい、完全に暑さで気が滅入るほどだ。
「まぁ、異常気象のようなものですし、仕方ないですよ」
「やっぱり部室にもクーラーは必須だよねー」
パタパタと下敷きで扇ぎながら、望子先輩はそう告げた。
クーラーは教室と職員室、一部の特別教室などには完備されているもの、部室に完備されていることはまずなく、部活動生は扇風機一台でこの蒸し暑さを過ごせと言われていた。
流石のこの暑さを扇風機一台で過ごすことは不可能に近く、どの部活動も部室にクーラーを完備してほしいと心から願っていたのだ。
「でも、部室に完備すると電気代がバカになりませんよ」
「それでも、学校側は部活動を応援するためにもクーラーを完備するべきだよ」
「……学校は部活するための場所じゃないと思うんだが」
望子先輩の名言のような言葉に的確な突っ込みを入れる路世先輩。
まぁこの暑さだし、何かしら学校側も対策してほしいとは僕も思った。
「よし、ちょっと生徒会に言ってくる!」
「ちょっ……! 先輩、まだ練習中……って」
望子先輩は話も聞かずにそのまま生徒会室へと向かっていった。
……まぁ先輩が話を聞かないのはいつものことだし、どうせ紗琉にこってり絞られて帰ってくるだろうと予想はしているが。
先輩が飛び出してから数分後、先輩は僕の予想通りこってり絞られて帰ってきたのだったが、次の日から全部室に扇風機がもう一台完備されるのだった。
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