どん・だー ~私立海老津学園太鼓部活動録~

とらまる

文字の大きさ
上 下
73 / 142
第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~

その73 蒸し暑いこの季節

しおりを挟む

 とある練習の合間。僕らは次の試合へ向けた練習をこなしつつ、休息を摂っていた。
 やはり次が名門校と戦うというだけあってみんな気合の入り方が全然違っていた。

「ふぅ……」

 カラッカラに渇いた喉を、キンキンに冷えた麦茶が潤す。
 やはり暑い時には麦茶が一番だ。夏場こそ、麦茶が一番美味しい季節だと、僕個人としては思う。

「いやー……今日も暑いねぇ」
「そうですねー」

 汗をタオルで拭う望子先輩を横に、僕は水分補給をしながら休んでいた。
 最近梅雨に入ったにもかかわらず、雨が降らない日は物凄く暑かったりする。
 まるで真夏のような蒸し暑さに加え、室内での練習だ。そりゃ暑いに決まっている。
 部室にクーラーなんてものはないから、扇風機が何よりの救いだった。
 ぶんぶんと首を振りながら、蒸し暑くなった室内を頑張って冷却しようと努力している。……頑張ってくれ、扇風機よ。

「まさか、今年からこんなに蒸し暑くなるとはな……」

 確かに、今年は例年と違って非常に蒸し暑い六月となっていた。テレビでもまるで真夏のように扱われており、異常気象の象徴のようだともいわれるほどだ。
 その暑さのせいか、すでに部室内を閉め切れば完全にサウナとなってしまい、完全に暑さで気が滅入るほどだ。

「まぁ、異常気象のようなものですし、仕方ないですよ」
「やっぱり部室にもクーラーは必須だよねー」

 パタパタと下敷きで扇ぎながら、望子先輩はそう告げた。
 クーラーは教室と職員室、一部の特別教室などには完備されているもの、部室に完備されていることはまずなく、部活動生は扇風機一台でこの蒸し暑さを過ごせと言われていた。
 流石のこの暑さを扇風機一台で過ごすことは不可能に近く、どの部活動も部室にクーラーを完備してほしいと心から願っていたのだ。

「でも、部室に完備すると電気代がバカになりませんよ」
「それでも、学校側は部活動を応援するためにもクーラーを完備するべきだよ」
「……学校は部活するための場所じゃないと思うんだが」

 望子先輩の名言のような言葉に的確な突っ込みを入れる路世先輩。
 まぁこの暑さだし、何かしら学校側も対策してほしいとは僕も思った。

「よし、ちょっと生徒会に言ってくる!」
「ちょっ……! 先輩、まだ練習中……って」

 望子先輩は話も聞かずにそのまま生徒会室へと向かっていった。
 ……まぁ先輩が話を聞かないのはいつものことだし、どうせ紗琉にこってり絞られて帰ってくるだろうと予想はしているが。
 先輩が飛び出してから数分後、先輩は僕の予想通りこってり絞られて帰ってきたのだったが、次の日から全部室に扇風機がもう一台完備されるのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【短編】怖い話のけいじばん【体験談】

松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。 スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。

光のもとで2

葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、 新たな気持ちで新学期を迎える。 好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。 少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。 それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。 この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。 何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい―― (10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

イケメンプロレスの聖者たち

ちひろ
青春
 甲子園を夢に見ていた高校生活から、一転、学生プロレスの道へ。トップ・オブ・学生プロレスをめざし、青春ロードをひた走るイケメンプロレスの闘い最前線に迫る。

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

あの音になりたい! 北浜高校吹奏楽部へようこそ!

コウ
青春
またダメ金か、、。 中学で吹奏楽部に挫折した雨宮洸。 もうこれっきりにしようと進学した先は北浜高校。 [絶対に入らない]そう心に誓ったのに そんな時、屋上から音が聞こえてくる。 吹奏楽部で青春and恋愛ドタバタストーリー。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

優等生の美少女に弱みを握られた最恐ヤンキーが生徒会にカチコミ決めるんでそこんとこ夜露死苦ぅ!!

M・K
青春
久我山颯空。十六歳。  市販の安いブリーチで染め上げた片側ツーブロックの髪型。これ見よがしに耳につけられた銀のピアス。腰まで下ろしたズボン、踵が潰れた上履き。誰もが認めるヤンキー男。  学力は下の下。喧嘩の強さは上の上。目つきも態度も立ち振る舞いまでもが悪い彼が通うのは、言わずと知れた名門・清新学園高等学校。  品行方正、博学卓識な者達ばかりが集まる学校には似つかわしくない存在。それは自他ともに持っている共通認識だった。  ならば、彼はなぜこの学校を選んだのか? それには理由……いや、秘密があった。  渚美琴。十六歳。  颯空と同じ清新学園に通い、クラスまでもが一緒の少女。ただ、その在り方は真逆のものだった。  成績はトップクラス。超が付くほどの美少女。その上、生徒会にまで所属しているという絵にかいたような優等生。  彼女の目標は清新学園の生徒会長になる事。そのため"取り締まり"という名の点数稼ぎに日々勤しんでいた。  交わる事などありえなかった陰と陽の二人。  ひょんな事から、美琴が颯空の秘密を知ってしまった時、物語が動き出す。

処理中です...