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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その70 テスト勉強なう
しおりを挟むテストを目前に迎えたとある放課後。僕らはいつものように部室で勉強会を開いているところだった。
「路世先輩。ここってどうなるんですか?」
「あー、それはだな……」
いつも通り、みんな真剣にテストに向けて勉強しており、いつにない静けさを保っていた。
と、そんな中、どたどたと廊下が何やら急に騒がしくなり、ガラガラと部室の扉が開かれる。
「太鼓部全員揃ってるかしら?」
そこへ現れた人物はなんと、紗琉だった。勿論生徒会の仕事でここに来たのだろう。副会長の一夜もそこに立っていた。
「どうしたのさ、紗琉。そんなに大慌てで?」
「さっき校長から伝達があったのよ」
「へー」
まるで興味がないような返事を返す。今はそれどころではないからだ。
テスト前だというのに、そんな紗琉からのどうでもいい伝達なんて聞くつもりはなかったからである。
「……どうでもいいワケないでしょ。今回も太鼓部関連の話なんだから」
「それならそうと早く言ってくれよ……」
と、しぶしぶ握っていたシャーペンを机に置き、紗琉の話を聞く姿勢をとる。
一体こんな大事なテスト期間って時に、僕ら太鼓部に何の用なのだろうか。
「実は、今回のテストで太鼓部員のうち一人でも赤点を取れば、太鼓部を廃部にするってことらしいの」
「……またかい」
なんだか今の校長、太鼓部になにか因縁でもあるかのように色々この部に難題を持ってきては、ない度のようにクリアできなかったら廃部にするって言っているような気がした。
「まぁそりゃそうよ。こんなホントに太鼓をしてるクセに、練習もあまりせずにただ部室で駄弁ってるような部活を野放しには出来ないのでしょうね」
「それもそうだな。俺も毎度ながら、こんな部活がこのまま野放しで良いのかとずっと思ってたからな」
「路世先輩……」
まさか現部員の路世先輩までもがそんなことを言うとは思ってもなかったものだ。
まぁ確かに、こんな名前だけ達者で、活動内容がちゃらんぽらんの部活をそのまま野放しにはしておきたくはないだろう。
部費や施設費なんかも先生が払わないといけないし、そう考えれば廃部も有り得る話ではあった。
「まぁ、そういうことで。今回は赤点なしで頑張ってくださいねー」
と、言いながら紗琉は僕らのいる部室を後にした。
まさか、また校長から廃部回避のためのミッションが来るとは……。こりゃどうにか、赤点だけは回避してやらないと、これからの活動に支障をきたすし、なにより「どん・だー」の予選に出場しているのに、こんなところで止まるわけには行かないと思った。
「赤点か……。回避できなかったら、部室の掃除を一人でやってもらうって罰ゲームを交えて頑張ろっか!」
と、望子先輩。しかし、そのやる気に満ち溢れた望子先輩の表情を見ながら、路世先輩はこう告げたのだった。
「でもよ、この前の二月のテストだけど……誰だっけ? 誰かが赤点とって、一時期大問題にならなかったっけ?」
望子先輩は汗だくになりながら、自分の行っていた勉強を再開するのだった。
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