どん・だー ~私立海老津学園太鼓部活動録~

とらまる

文字の大きさ
上 下
69 / 142
第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~

その69 お勉強

しおりを挟む

「どうして……」

望子先輩が今にも泣きそうな声でそう呟いた。

「先輩、こればっかりは仕方ないですよ」
「でも、こんなのって……こんなのってあんまりだよ!」
「先輩。いい加減認めたらどうですか……」
「でも……でも!」

僕がどれだけ言い聞かせても、先輩はいつものように言い訳をするばかり。
それもそうだ。僕らは「どん・だー」の予選二回戦目が目前と迫っているというのに……まさかこんなことになるなんて、誰も想像していなかったのだから。

「だって……おかしいよ!  こんな時にテストだなんて!」

そう。望子先輩がぶつくさ文句を言っていたのは定期テストのことだ。
そのせいで一切の部活動は停止となり、大会前である部活動は大ダメージを受けたのだった。
もちろん、「どん・だー」予選二回戦目を目前とした僕らだって、テスト期間はかなりの痛手だった。
何せ次の相手は強豪校なのだ。そんな敵を相手にしているのに、今は練習のひとつもせずに、ただひたすらにペンを書き殴る音しか聞こえなかった。

「ねー、路世ちゃーん。ここの公式教えてー」
「お前……その公式はこの前の授業で習っただろ……」
「あれ? そうだっけ? いやー、この時の授業覚えてないよー……」

あはは……と苦笑いを浮かべる望子先輩。対して路世先輩は呆れたように肩をすくめていた。
そんなことを他所に、ただ黙々と勉強を進めていくちぃ。どうやらちぃも初めてのテストではあるが、本気のようだ。

「ちぃ、分からないところがあったら遠慮なく聞いていいから」
「はい、ありがとうございます」

と、そう軽く返し、自分の勉強へと戻っていった。
……さてと、僕も自分自身の勉強を始めよう。
そう思い、ノートと教科書を開いて勉強に取り掛かった。
すると突然、望子先輩が僕にちょっかいを出してくる。

「ねー、鍵くーん。テスト勉強なんてしてないで遊ぼうよー」
「先輩。流石にテスト期間くらいはしっかり勉強しましょうよ」
「えぇー……」
「ほら、ケン後輩だってこう言ってんだ。このまま遊んでると、また留年候補になるぞ」
「先輩……」

先輩は小さくバツの悪そうな顔を顔を見せるのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】幻のような君を僕だけはずっと憶えている

猪本夜
青春
病気の兄を亡くした経験を持つコウは、余命一年のサヤと出会う。 そんなサヤに少しだけ振り回されるけれど、 いつもの毎日に彼女が入り込んで、だんだんと彼女が気になりだしていく。 明るい彼女だけど、余命以外にも謎めいた背景を抱えていて、 悲しい願いを望んでいることを知る。 そんな『幻』の彼女と過ごした僕の高校二年生の記憶――。 ※9万字超ほどで完結予定。 ※もしや、と思う地域や場所があるかもしれませんが、実在のものとは関係ありません。 ※青春小説ボカロPカップにエントリー中。応援よろしくお願い致します。

坊主女子:スポーツ女子短編集[短編集]

S.H.L
青春
野球部以外の部活の女の子が坊主にする話をまとめました

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Vママ! ~中の人がお母さんでも推してくれる?~

ウメ
青春
「こんマリ~! メタライブ0期生、天母(あまも)マリアですぅ」  個性豊かなVTuberを抱える国内最大の運営会社メタライブ。マリアはそれを発足時から支える超有名VTuberだ。  そんな彼女の大ファンである秋山翔は、子離れできない母を煙たがる思春期の高校一年生だった。  しかし翔はある日、在宅ワークをする母の仕事部屋を覗き、マリアとして配信する姿を目撃してしまう。推しの中の人は、自分のウザい母だったのだ!  ショック死しそうになる翔。だが推しを好きな気持ちは変わらず、陰から母(推し)をサポートすることに。そんな事情を知らず、母はお風呂配信やお泊り配信の仕事を約束してしまい……  ――中の人が母だと知った息子を中心に織りなす、VTuber母子コメディ開幕! (※本作は【切り抜き】がきっかけで物語が進みます。また、第1話はキャラ紹介が中心になっています)

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

優等生の美少女に弱みを握られた最恐ヤンキーが生徒会にカチコミ決めるんでそこんとこ夜露死苦ぅ!!

M・K
青春
久我山颯空。十六歳。  市販の安いブリーチで染め上げた片側ツーブロックの髪型。これ見よがしに耳につけられた銀のピアス。腰まで下ろしたズボン、踵が潰れた上履き。誰もが認めるヤンキー男。  学力は下の下。喧嘩の強さは上の上。目つきも態度も立ち振る舞いまでもが悪い彼が通うのは、言わずと知れた名門・清新学園高等学校。  品行方正、博学卓識な者達ばかりが集まる学校には似つかわしくない存在。それは自他ともに持っている共通認識だった。  ならば、彼はなぜこの学校を選んだのか? それには理由……いや、秘密があった。  渚美琴。十六歳。  颯空と同じ清新学園に通い、クラスまでもが一緒の少女。ただ、その在り方は真逆のものだった。  成績はトップクラス。超が付くほどの美少女。その上、生徒会にまで所属しているという絵にかいたような優等生。  彼女の目標は清新学園の生徒会長になる事。そのため"取り締まり"という名の点数稼ぎに日々勤しんでいた。  交わる事などありえなかった陰と陽の二人。  ひょんな事から、美琴が颯空の秘密を知ってしまった時、物語が動き出す。

あの音になりたい! 北浜高校吹奏楽部へようこそ!

コウ
青春
またダメ金か、、。 中学で吹奏楽部に挫折した雨宮洸。 もうこれっきりにしようと進学した先は北浜高校。 [絶対に入らない]そう心に誓ったのに そんな時、屋上から音が聞こえてくる。 吹奏楽部で青春and恋愛ドタバタストーリー。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

処理中です...