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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その66 予選一回戦!
しおりを挟む「いよいよだね……」
「そうですね……」
僕と望子先輩は互いに顔を見合わせながら、真剣な表情でそう会話を交わす。
この日をどれだけ待ちわびていただろうか……。この日のために僕らは物凄い練習をこなし、物凄い雑談を交わし、物凄い時間をムダに浪費してきた。
「なんだかムダなのがいくつかなかった?」
「気のせいですよ」
まぁ、ともかくだ。今日が運命の日。「どん・だー」の予選一回戦の日だった。
あれから物凄い練習をこなし、僕らはメキメキと腕をあげてきた。これで勝てなかったら僕らはそれだけだったとしか言いようがない。
「きっと大丈夫だよ。私たちなら勝てるよ!」
自信満々の望子先輩。ぐ、と胸の前でガッツポーズを取るほど気合十分だった。
「その自信はどこから湧いてくるんですか……?」
「私は喉から」
「ベンザブ〇ックのCMですか……」
こういう時でも望子先輩はいつも通りのテンションだ。緊張しているのかしていないのかなんて分からない。
でも、それが逆に僕らの緊張をほぐしているような……そんな気がした。
「でもきっと私たちならなんとかなるよ! だって、そのためにこれまで努力してきたんだから!」
確かに、先輩の言う通りだ。今日この日のためにここまで練習してきたんだ。きっとうまく行くハズだ。
「そうですね……。きっとなんとかなりますよね!」
「うんうん! だから今日は精一杯、これまでの練習を思い出して頑張っていこうよ!」
「はいっ!」
「おー、ケン後輩も自信満々じゃねぇか。こりゃ俺も負けてられねぇな」
と、そこへ人数分の飲み物を買いに行っていた路世先輩とちぃが戻ってくる。
「はい。なんだか望子先輩に元気づけられちゃいました」
「望子はこう見えても周りのヤツを元気づけるのだけは得意だからな」
「だけってなんでよ!? なんかヒドくない!?」
「いえ、望子さんは大体そんな人です」
「えぇ……。ちぃちゃんまで……」
「あははははは……」
なんだかこのメンバーといると、どんな困難も軽々と超えられそうな気がする。僕も含めてみんなのほほんとしているけれど。
いつの間にか僕の緊張は逆に確信に変わっていた。このメンバーならばきっと、この一回戦も勝てると。
このメンバーだからこそ、この一回戦を超えることができるんだと。
「よし、それじゃ時間だし……いくよ!」
「はい!」「おう!」「はい!」
これから始まるのは僕らの始めの一歩。
新たなステージを踏みしめ、僕らは精一杯自分たちの力を出し切ろうと奮闘すべく、その一歩を踏み出したのだった。
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