66 / 142
第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その66 予選一回戦!
しおりを挟む「いよいよだね……」
「そうですね……」
僕と望子先輩は互いに顔を見合わせながら、真剣な表情でそう会話を交わす。
この日をどれだけ待ちわびていただろうか……。この日のために僕らは物凄い練習をこなし、物凄い雑談を交わし、物凄い時間をムダに浪費してきた。
「なんだかムダなのがいくつかなかった?」
「気のせいですよ」
まぁ、ともかくだ。今日が運命の日。「どん・だー」の予選一回戦の日だった。
あれから物凄い練習をこなし、僕らはメキメキと腕をあげてきた。これで勝てなかったら僕らはそれだけだったとしか言いようがない。
「きっと大丈夫だよ。私たちなら勝てるよ!」
自信満々の望子先輩。ぐ、と胸の前でガッツポーズを取るほど気合十分だった。
「その自信はどこから湧いてくるんですか……?」
「私は喉から」
「ベンザブ〇ックのCMですか……」
こういう時でも望子先輩はいつも通りのテンションだ。緊張しているのかしていないのかなんて分からない。
でも、それが逆に僕らの緊張をほぐしているような……そんな気がした。
「でもきっと私たちならなんとかなるよ! だって、そのためにこれまで努力してきたんだから!」
確かに、先輩の言う通りだ。今日この日のためにここまで練習してきたんだ。きっとうまく行くハズだ。
「そうですね……。きっとなんとかなりますよね!」
「うんうん! だから今日は精一杯、これまでの練習を思い出して頑張っていこうよ!」
「はいっ!」
「おー、ケン後輩も自信満々じゃねぇか。こりゃ俺も負けてられねぇな」
と、そこへ人数分の飲み物を買いに行っていた路世先輩とちぃが戻ってくる。
「はい。なんだか望子先輩に元気づけられちゃいました」
「望子はこう見えても周りのヤツを元気づけるのだけは得意だからな」
「だけってなんでよ!? なんかヒドくない!?」
「いえ、望子さんは大体そんな人です」
「えぇ……。ちぃちゃんまで……」
「あははははは……」
なんだかこのメンバーといると、どんな困難も軽々と超えられそうな気がする。僕も含めてみんなのほほんとしているけれど。
いつの間にか僕の緊張は逆に確信に変わっていた。このメンバーならばきっと、この一回戦も勝てると。
このメンバーだからこそ、この一回戦を超えることができるんだと。
「よし、それじゃ時間だし……いくよ!」
「はい!」「おう!」「はい!」
これから始まるのは僕らの始めの一歩。
新たなステージを踏みしめ、僕らは精一杯自分たちの力を出し切ろうと奮闘すべく、その一歩を踏み出したのだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
へたくそ
MO
青春
野球が大好きなのに“へたくそ”な主人公、児玉良太。
チームメイトで野球センス抜群なキャッチャー、松島健介。
後輩マネージャーで児玉に想いを寄せる、町村早苗。
3人の視点から物語は進行していきます。
チームメイトたちとの友情と衝突。
それぞれの想い。
主人公の高校入学から卒業までの陵成高校野球部の姿を描いた物語。
この作品は
https://mo-magazines.com/(登場人物一覧も掲載しています)
小説家になろう/カクヨム/エブリスタ/NOVEL DAYS
にも掲載しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

優等生の美少女に弱みを握られた最恐ヤンキーが生徒会にカチコミ決めるんでそこんとこ夜露死苦ぅ!!
M・K
青春
久我山颯空。十六歳。
市販の安いブリーチで染め上げた片側ツーブロックの髪型。これ見よがしに耳につけられた銀のピアス。腰まで下ろしたズボン、踵が潰れた上履き。誰もが認めるヤンキー男。
学力は下の下。喧嘩の強さは上の上。目つきも態度も立ち振る舞いまでもが悪い彼が通うのは、言わずと知れた名門・清新学園高等学校。
品行方正、博学卓識な者達ばかりが集まる学校には似つかわしくない存在。それは自他ともに持っている共通認識だった。
ならば、彼はなぜこの学校を選んだのか? それには理由……いや、秘密があった。
渚美琴。十六歳。
颯空と同じ清新学園に通い、クラスまでもが一緒の少女。ただ、その在り方は真逆のものだった。
成績はトップクラス。超が付くほどの美少女。その上、生徒会にまで所属しているという絵にかいたような優等生。
彼女の目標は清新学園の生徒会長になる事。そのため"取り締まり"という名の点数稼ぎに日々勤しんでいた。
交わる事などありえなかった陰と陽の二人。
ひょんな事から、美琴が颯空の秘密を知ってしまった時、物語が動き出す。

あの音になりたい! 北浜高校吹奏楽部へようこそ!
コウ
青春
またダメ金か、、。
中学で吹奏楽部に挫折した雨宮洸。
もうこれっきりにしようと進学した先は北浜高校。
[絶対に入らない]そう心に誓ったのに
そんな時、屋上から音が聞こえてくる。
吹奏楽部で青春and恋愛ドタバタストーリー。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
クルーエル・ワールドの軌跡
木風 麦
青春
とある女子生徒と出会ったことによって、偶然か必然か、開かなかった記憶の扉が、身近な人物たちによって開けられていく。
人間の情が絡み合う、複雑で悲しい因縁を紐解いていく。記憶を閉じ込めた者と、記憶を糧に生きた者が織り成す物語。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる