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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その61 忘れてた
しおりを挟むなんとか無事に体育大会も終わり、僕らはつかの間の休みを部室で満喫していた。
「やっぱり部室でだらだらしてる方がいいよねー」
「そうですねー」
僕とちぃはいつも通りの読書。路世先輩はパソコンとにらめっこ。望子先輩はテーブルに頬杖をつきながら「ぐだーっ」としていた。
やっぱりこうしてぐだぐだしていた方が僕ららしい。太鼓部という仮の名前はあるのだが、こうして部活動という部活動をせずにただ、時間をムダに過ごす方が僕たちらしかった。
なによりこの時間が楽しいし、この部室が第二の自宅みたいな感じがして、自然とぐだってしまうのだ。
「体育大会終わって、こうして毎日ぐだぐだできるっていいよねー」
望子先輩はにへら、と自然と笑みを零しながらそう呟いた。
確かに、体育大会の時は全部活動停止となり、部活動の時間まで体育大会の練習がぎっしりと詰まっていたのだ。
しかし、体育大会が終わった今、こうして部活動の時間は解放され、自由に部活動に励むことができるのだ。
「そういえば、体育大会がこの学校にあるってことは、文化祭もあるんですか?」
ちぃが読んでいた本から目を離し、尋ねてくる。
「そうだね。ウチの学校は五月に体育大会やって、十月に文化祭をやるんだ」
ウチの学校はかなり特別で、体育大会と文化祭を両方やるのだ。
基本的にどちらか一方だろうとは思うが、ウチは生徒会長のおかげによって、両方ともそれができるようにしているという訳だ。
これには紗琉さまさまといったところだろうか。流石は生徒会長としか言いようがなかった。
「なぁ、望子」
と、パソコンの画面を見ながら路世先輩が口を開く。
その口調はいつもよりも少し低く、なんだかいつもと様子が違うような気がした。
「なーにー? 路世ちゃん」
「俺も忘れてたから、すっげぇ言い辛いんだが……どん・だーの予選っていつからなんだ? 公式サイトを見ると、もう始まってるみたいなんだが」
「あっ……」
望子先輩は慌てて、自分のケータイを確認し、僕らの予選の日程を調べる。
全部員、自分たちが「どん・だー」に出場していたことをすっかり忘れていたのだった。
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