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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その57 猛暑
しおりを挟む時は既に五月も終わりかけ。そんな中、この学校では体育大会が開催される時期でもあったのだ。
先週から体育大会の練習は始まっており、僕らは毎日の暑さと疲れで参っていた。
「毎日暑いねー……」
「そうですねー」
部室備え付けの扇風機を回しながら、望子先輩は下敷きをうちわ代わりにして扇いでいた。
クーラーのない部室では、扇風機が忙しく稼働しており、今では扇風機なしでは生きていけないほどの猛暑だった。
五月といえど、去年はこんなにも暑かっただろうか? 今日の最高気温は二十三度くらいだった。
「先輩、扇風機こっちにも風が来るように強くしてくださいよー」
「えー……。これでも一番強い風力だよー?」
「えぇー……」
距離は十二分に近いのに、どうしてか僕とちぃに風が来ることはなかった。
風力の問題かと思いきや、それも違うらしい。
仕方なく僕は扇風機に近づき、直に当たる場所へと移動し、読書を再開する。
やはりクーラーは必要だ。こうしてクーラーのない場所に来ると、そのことに毎度気づかされる。
五月なのに自宅ではすでにクーラーが稼働しており、今では僕の家のリビングはオアシスと化しているほどだった。
それなのに、学校ではまだ早いという理由でクーラーをつけず、窓を開けるだけという原始的な解決策だった。
職員室はついてるのに、どうして教室をつけないのか……。
「まぁ、少し工夫すりゃ暑さだって耐えしのげるからな。昔の人だって、クーラーなしで夏を過ごしてきたんだから、きっと俺たちでもできるさ」
「路世先輩。流石に昔の気温と今年の気温は比べちゃいけませんよ……」
今年の気温は特に暑く、五月ながら夏の気温と変わらないくらいだ。
こりゃ、アイスの一つくらい食べたくなるくらいだった。
と、そんな中聞こえる一つの声。それはまさしくアイスクリーム屋の移動販売だった。
「あ、アイス屋だ! よーし! じゃ、今日のおつかいはジュースじゃなくて、アイスにしよっか!」
と、いきなり立ち上がり、今の太陽に負けないくらいな燃え方をしながら先輩はその右手を突き出してきた。
いつものおつかいという名のパシリだ。今日はジュースではなく、アイスだと言うのだ。
「いいですね! それじゃいきますよー!」
何度かのあいこの末、いつも通り僕がおつかいとなってしまったのだった。
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