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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その55 雨漏り
しおりを挟む「やまないねー」
「やみませんねー」
窓の外に目を向けながら、僕は望子先輩とともにため息混じりにそう告げた。
今日は朝から雨が降っているのだが、夕方になってもやむことはなさそうな様子だった。
流石は降水確率八十パーセント。ちょっとやそっとじゃやまないハズだ。
「そりゃそうだろうな。今日の深夜まで降るらしいからな。まさか、この前みたいに傘持ってきてないなんて言わないだろうな?」
「まさか。今日は朝から降ってたんですから、持ってこない訳ないじゃないですか」
「それもそうだな。どっかの誰かとは違うし、ケン後輩はそんなことはないよな」
どっかの誰かって望子先輩のことだろうか、と思いながら、僕は苦笑い。
「でも、なんか雨降ってると気分までこう……落ちますよね?」
「だよねー……。やっぱり天気は晴れが一番いいよねー」
ちぃと望子先輩は二人でぶつぶつと文句をぶーたれていた。
まぁ僕も正直ながら、雨より晴れの方が好きだ。ちぃの言うように気分が下がるのもあるが、やっぱり一番は洗濯物が乾かない点だろう。
僕は毎日自分で家の洗濯物を干したりしているので、天気によって洗濯物が左右されるのが一番困っているのだ。
だからこそ、雨は嫌いだし、それによって洗濯物が乾かないとなると、なかなかの痛手を受けるほどだ。
「あ、雨漏り!」
と、望子先輩は天井を見ながら指を指す。
部室の中まで雨が入り込んでおり、完全に雨漏りしていた。
すかさず路世先輩が部室にあったバケツを持ってきては雨漏りしている天井の真下に置く。
「意外ですね、部室も雨漏りするだなんて……」
「そうなんだよな。そもそもここの建物が古いからな、雨漏りしてしまうんだよ」
こっちの部室棟も改装してくれないかなー……と、言いながら路世先輩はパソコンの前へと戻った。
路世先輩がパソコンの前のイスに座ると同時にまた、望子先輩が天井で雨漏りしている場所を見つけた。
「あ、あそこも!」
望子先輩が指を指す前に、路世先輩の俊敏な行動によってバケツが置かれる。
……どれだけ雨漏りが嫌いなのだろうか。
「雨漏りを放置してると床まで腐ってしまうだろ? それだけはなんとしてでも防がないとな」
「ま、まぁ……そうですね」
確かに、床が腐ってしまってはいつか床に穴が空いてしまう。そうなれば、誰かがその穴にハマって大怪我してしまう可能性は大いにあり得る。
路世先輩はそれをどうにか防ごうとしているのだろう。……あるいは、望子先輩がそ雨漏りで出来た穴にハマるのを理解した上でやっているのだろうか?
「あ、あっちにも……」
サーッ!
「こっちでも……」
サーッ!
路世先輩はまるで、望子先輩の手下のように雨漏りの場所を望子先輩が見つければ、そこへバケツを置いていく。
その光景を見ながら、僕とちぃはこう思うのだった。
「まるで望子先輩の手下みたいだね」
「まるで望子さんの手下みたいですね」
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