どん・だー ~私立海老津学園太鼓部活動録~

とらまる

文字の大きさ
上 下
55 / 142
第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~

その55 雨漏り

しおりを挟む

「やまないねー」
「やみませんねー」

窓の外に目を向けながら、僕は望子先輩とともにため息混じりにそう告げた。
今日は朝から雨が降っているのだが、夕方になってもやむことはなさそうな様子だった。
流石は降水確率八十パーセント。ちょっとやそっとじゃやまないハズだ。

「そりゃそうだろうな。今日の深夜まで降るらしいからな。まさか、この前みたいに傘持ってきてないなんて言わないだろうな?」
「まさか。今日は朝から降ってたんですから、持ってこない訳ないじゃないですか」
「それもそうだな。どっかの誰かとは違うし、ケン後輩はそんなことはないよな」

どっかの誰かって望子先輩のことだろうか、と思いながら、僕は苦笑い。

「でも、なんか雨降ってると気分までこう……落ちますよね?」
「だよねー……。やっぱり天気は晴れが一番いいよねー」

ちぃと望子先輩は二人でぶつぶつと文句をぶーたれていた。
まぁ僕も正直ながら、雨より晴れの方が好きだ。ちぃの言うように気分が下がるのもあるが、やっぱり一番は洗濯物が乾かない点だろう。
僕は毎日自分で家の洗濯物を干したりしているので、天気によって洗濯物が左右されるのが一番困っているのだ。
だからこそ、雨は嫌いだし、それによって洗濯物が乾かないとなると、なかなかの痛手を受けるほどだ。

「あ、雨漏り!」

と、望子先輩は天井を見ながら指を指す。
部室の中まで雨が入り込んでおり、完全に雨漏りしていた。
すかさず路世先輩が部室にあったバケツを持ってきては雨漏りしている天井の真下に置く。

「意外ですね、部室も雨漏りするだなんて……」
「そうなんだよな。そもそもここの建物が古いからな、雨漏りしてしまうんだよ」

こっちの部室棟も改装してくれないかなー……と、言いながら路世先輩はパソコンの前へと戻った。
路世先輩がパソコンの前のイスに座ると同時にまた、望子先輩が天井で雨漏りしている場所を見つけた。

「あ、あそこも!」

望子先輩が指を指す前に、路世先輩の俊敏な行動によってバケツが置かれる。
……どれだけ雨漏りが嫌いなのだろうか。

「雨漏りを放置してると床まで腐ってしまうだろ? それだけはなんとしてでも防がないとな」
「ま、まぁ……そうですね」

確かに、床が腐ってしまってはいつか床に穴が空いてしまう。そうなれば、誰かがその穴にハマって大怪我してしまう可能性は大いにあり得る。
路世先輩はそれをどうにか防ごうとしているのだろう。……あるいは、望子先輩がそ雨漏りで出来た穴にハマるのを理解した上でやっているのだろうか?

「あ、あっちにも……」

サーッ!

「こっちでも……」

サーッ!
路世先輩はまるで、望子先輩の手下のように雨漏りの場所を望子先輩が見つければ、そこへバケツを置いていく。
その光景を見ながら、僕とちぃはこう思うのだった。

「まるで望子先輩の手下みたいだね」
「まるで望子さんの手下みたいですね」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

アルファポリスで規約違反しないために気を付けていることメモ

youmery
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスで小説を投稿させてもらう中で、気を付けていることや気付いたことをメモしていきます。 小説を投稿しようとお考えの皆さんの参考になれば。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

へたくそ

MO
青春
野球が大好きなのに“へたくそ”な主人公、児玉良太。 チームメイトで野球センス抜群なキャッチャー、松島健介。 後輩マネージャーで児玉に想いを寄せる、町村早苗。 3人の視点から物語は進行していきます。 チームメイトたちとの友情と衝突。 それぞれの想い。 主人公の高校入学から卒業までの陵成高校野球部の姿を描いた物語。 この作品は https://mo-magazines.com/(登場人物一覧も掲載しています) 小説家になろう/カクヨム/エブリスタ/NOVEL DAYS にも掲載しています。

異世界でのんびり暮らしたい!?

日向墨虎
ファンタジー
前世は孫もいるおばちゃんが剣と魔法の異世界に転生した。しかも男の子。侯爵家の三男として成長していく。家族や周りの人たちが大好きでとても大切に思っている。家族も彼を溺愛している。なんにでも興味を持ち、改造したり創造したり、貴族社会の陰謀や事件に巻き込まれたりとやたらと忙しい。学校で仲間ができたり、冒険したりと本人はゆっくり暮らしたいのに・・・無理なのかなぁ?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

バタフライエフェクト

ゆた
青春
ユニット、「炭酸水」は、「ソーダ」というファンがいる。 だが、アイドル業界は、崩壊の一途を辿っていた。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...