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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その51 音楽
しおりを挟むとある部活中、ふと望子先輩がそうぼそりと呟いたのだ。とても唐突に。
「みんなどんな音楽聴いてるの?」
「急にどうしたんですか? そんなこと聞いて」
僕は読んでいた本から目を離し、望子先輩のほうを見る。
先輩はソファに横になりながら、雑誌を読んでいた。
なにかその雑誌にミュージシャンのことでも書いてあるのだろうか?
「いやー、私が最近聴いてるアーティストの記事がたまたまこの雑誌についてて、それでふっ、と思いついたんだよ」
「そうなんですか……」
つくづく僕は、望子先輩は唐突だなぁ……と思いつつ、好きなアーティストを思い出す。
……最近はJPOPも聴かないし、基本的アニソンばかり聴いていた。
僕は特にがっつりとアニメを観たりしてはいないが、曲だけは動画サイトで聴いたりしており、そこで「かっこいい!」と思った曲を近くのTSU〇AYAでレンタルしてパソコンに取り込んでいるのだ。
取り込んだ曲はWA〇KMANに入れ、いつでも聴けるようにしている。
「そうですね……。僕は最近アニソンを聴いてますね」
「……鍵くんってオタク?」
「違いますよ。アニメは観てないんですけど……曲だけは動画サイトの試聴動画で聴いて、そこからパソコンに取り込んでるんですよ」
そう説明すると、望子先輩は「あーなるほどね」と納得した表情を見せた。
まぁオタクでないことは確実だが、アニソンは結構頻繁によく聴くものだ。
「ちぃちゃんは?」
「私ですか……? そうですね……。最近曲は聴かないほうなので。……あ、でもジャ〇ーズは時たまテレビで流れて来るメジャーなものを聴いたりはしてます」
ちぃのその言葉で僕は思い出した。
そういえば、ちぃはあまり曲は聴かないほうである。カラオケに行ってもあまり歌うほうでもないし、歌ったとしてもほんの二、三曲くらいだ。
ちぃは歌に関する知識が疎く、テレビのミュージック番組で流れるくらいのどメジャーな曲しか聴かないのだ。
「そうなんだ……。路世ちゃんは?」
「俺か? 俺もちぃとあまり変わらないかな……。俺も対して音楽に関する知識が疎いからな」
と、路世先輩はへらへらと笑いながらそう言った。……まぁ見た目からそんな気はしていたが。
路世先輩もちぃと同じで音楽番組は観ないし、CDも借りたりしないタイプのハズだ。そう音楽に対してがっつり行くような感じはまったくしなかった。
「そっか……。……うん、これで条件は大体あってるかな」
「……え? 望子先輩? 何の話をしてるんですか?」
と、望子先輩の読んでいる本に目を向ける。
そこには、「初心者でも大丈夫! バンドの始め方」と書いてあった。
「よし、じゃあ今日から結成! バンドチーム、b'sを!」
「太鼓部どこ行ったんですか……」
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