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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その49 くじ引き
しおりを挟む「昨日の話なんだがな、」
と、くるりと椅子を一回転させ、路世先輩がそう唐突に話し始めた。
僕らはいつも通り自由な活動をしており、本当にこれで「どん・だー」に出場予定のチームなのか分からないくらいだった。
「商店街でいくら買うとくじが引けるってのがあるだろ?」
「あーありますね、そんなの」
そういえば最近、そんなイベントもあってたなぁ……と僕は思い出す。
確か、千円程度の買い物をすればその時点でくじが一回引けるというシステムだ。
はずれで箱ティッシュが貰えるが、大当たりの特等はなんと、大分、別府の温泉旅行だったハズだ。
僕も気にはなっていたものの、スーパーのほうが家から近く、商店街をあまり利用しなかったのだ。
「あ、それ私も昨日引いてきたよー。でもやっぱりはずればっかりなんだよねー」
トホホ……と、望子先輩は肩を落としながらそう話す。
まぁそりゃ、ほんの数人しか当たらない程度のくじ引きだ。そんな大勢に当たってしまっては赤字になってしまう。
スーパーにお客を吸い取られていっているほどだし、今回のこのイベントで商店街を活気づけようと頑張ってるのだろう。
「鍵くんは商店街行かないんだ?」
「えぇ。やっぱりスーパーのほうが近いですし、あそこならなんでも揃ってますし」
「えぇー……なんだか勿体ないなぁ……。スーパーじゃおまけしてくれたりしないじゃん! 昨日だって、魚屋のおじちゃん、私が可愛いからっておまけしてくれたんだよー! それなのに商店街でお買い物しないなんて……」
…………先輩。それはきっと先輩だからこその話だと思います。
でも確かに、スーパーよりも友好的な商店街を利用しないのはなんだか勿体ないように思えてくる。
スーパーだと、まるで機械のようなパートのおばさんが商品をレジに通して会計を済ませるだけ。
商店街は色んな人と話したりできるし、なによりお店の人と何気ない会話をしながら楽しく買い物できるのが利点だ。
「……ですね。今度行ってみようかと思います」
「うん、それがいいよ!」
「……俺の話、続けていいか?」
と、手を挙げながら路世先輩はそうぼそりと呟く。
そういえば、話の始まりは路世先輩だった。
「すみません、うっかり話が弾んでしまって……」
「まぁいいさ。それで、俺も昨日くじを引いてきたんだ。それで……これが当たったんだよ」
と、そこには「特等:大分、別府温泉巡り旅」と書かれていたのだ。
「俺の親父も行く予定はないって行ってるから……良かったら新チーム結成の祝いに、と思ったんだが……」
「「行きます!」」
こうして全員一致で大分、別府温泉巡り旅が決定したのであった。
温泉の旅はまだまだ先の話ではあるが……。
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