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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その48 家族構成
しおりを挟む「そういえば、」
と、唐突に望子先輩が口を開く。
僕らはいつものように自由な部活の時間を満喫していた。
「どん・だー」に勝手にエントリーされていたにも関わらず、こうして自由に活動しているのだ。
「鍵くんって一人っ子だったよね?」
「え、あ、はい。そうですけど……?」
と、先輩は急にそんなことを聞いたのだ。
そう。僕は前にも説明した通り、兄弟はおらず、僕は正真正銘一人っ子なのだ。
ちぃのことを「妹のようだ」とは言ったが、あくまでちぃは妹扱いしている後輩だ。そのため、僕に本当の兄弟は一人としていない。
「でも急にどうしたんですか? そんなこと改めて聞いたりなんかして」
「ほら。提出するプリントに書く欄があるじゃん? それ見てふと思ったんだよー」
あぁ、そういうことか。
学校に提出するプリント類には、たまに兄弟を書き込む欄があり、先輩はそれを見て、ふと疑問に思っただけらしい。
「そういえば、先輩たちの家族構成聞いてなかったですね。やっぱり兄弟とかおられるんですか?」
と、僕は先輩たちに聞いてみる。
ちぃ以外のここにいる人物の家族構成を聞いたことがなく、先輩たちにはやはり兄弟がいるのだろう、と思い、聞いてみた。
「そう……だな。俺も一人っ子だ」
と、路世先輩。
意外にも、路世先輩が一人っ子だったという事実に、僕は驚愕だった。
先輩のことだし、兄貴の一人や二人いてもおかしくはないと思っていたのだが……。
「意外ですね。路世先輩には兄がいると想像してたんですけど……」
「よく言われるよ。俺はこの男勝りな性格のせいで、初対面のヤツからは毎度毎度言われるが、俺に兄貴はいないし弟も妹も姉貴もいないんだ。この性格もオヤジ譲りだからな」
と、先輩はそうべらべらと話した。
ちぃは僕と同じで一人っ子だと、前にそう説明したし、残るは望子先輩だけだった。
「私? 私はねー……」
「そういや、望子には姉貴がいた気がするが……」
「……え?」
路世先輩のその言葉に僕は驚愕した。望子先輩にお姉さんがいるとは……。
望子先輩は照れくさそうに頬を掻きながら笑みを浮かべていた。
「そうだよ。私にはお姉ちゃんがいるの。大学生だけど、昔はこの学校にいて、一緒に太鼓部として活動してたんだ」
「へぇ……そうだったんですね」
つまるところ、望子先輩のお姉さんは、僕らの先輩に当たるのだ。
しかし、望子先輩にお姉さんがおり、なおかつそのお姉さんが僕らの先輩に当たる人物だとは意外だった。
一体どんな人なのだろうか……。
「あ、そうだ! あと一人、私の妹がいるの!」
「え? ってことは、先輩は三人姉妹なんですか!?」
「そうそう! ほら、ここにちぃちゃんって私の妹が!」
「私は望子さんの妹じゃありません……」
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