どん・だー ~私立海老津学園太鼓部活動録~

とらまる

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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~

その46 ポスター

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いつもの部室。その空間に僕は、その日だけ何故か違和感を感じた。
部員はそれぞれいつも通りに自由に行動しているし、これといってパッと見、変化したところはないのに……どうしてだろう、僕は違和感しかなかった。
まるでここが昨日まで来ていた部室ではないかのような感触だった。
かれこれその違和感を感じて三十分は経っただろう。僕ももう、ガマンの限界だった。

「ねぇ、ちぃ……」

恐る恐るちぃに聞いてみる。
ちぃは本から目を離すことなく、耳だけこちらに傾けていた。

「どうしたんですか、先輩?」
「その……今日の部室さ、何か違和感感じない?」
「そういえば……何か違うような気がしますね」

ちぃも薄々その違和感を感じている様子だった。
やはり、今日の部室は何かが違う。それは誰もが感じている様子だった。
と、ふと僕は部室をぐるりと見回すと、とある一枚のポスターに目がつく。今話題の「どん・だー」出場チームである、「Black Feathers」のメンバーが写っているポスターだった。

「……あれ?」

僕はそのポスターを見ながら、ふと疑問に思う。こんなポスター、昨日部室に貼ってあっただろうか?
あのスペースは昨日までは何もなかったハズだが、誰かが新しくあのポスターを貼ったのだろうか?

「きっと望子さんじゃないんですか?」
「あー……望子先輩かな、やっぱり?」

ちぃとともに勝手に決めつける。
そもそもああやって部室をリフォームするのなら、望子先輩以外考えられない。
確かに、路世先輩が絶対にやらないという確信はないが…………しかし、今回のこのポスターの主犯はきっと望子先輩だろう。ポスターについてる「Black Feathers」ですでに理解していた。

「……そっか、もうそんな時期なんだね」

僕はもう一度、そのポスターに目を向けた。そこには、「どん・だー、予選申し込み開始!キミも応募して、Black Feathersの後に続け!」と、いかにもキャッチーなフレーズが書いてあった。
そう。毎年この時期になると「どん・だー」の予選申し込みが始まるらしい。去年も似たようなポスターを昇降口前で見た覚えがあった。
きっと今年も望子先輩は出場するつもりでいるのだろう。それも僕らを入れて、この四人のチーム……「b's」で。
「どん・だー」がどれだけ大規模な大会化は知らないが……それでも、僕は「どん・だー」に出場し、優勝してみたいと思った。
まだこの部活に入って一ヶ月ほどだが、自分の実力が全国レベルでどこまで通用するのかを知りたかったからだ。
そんなことを思いながら、ポスターを見つめつつ、僕は自分の妄想に浸るのだった。
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