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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その41 特訓
しおりを挟む練習試合を控えた僕らは、いつも自由にやっている活動を停止し、練習試合に向けた練習に励んでいた。
……でも、太鼓部の練習ってどんな感じで行うのだろう、と思う方もいるだろう。
僕も最初はどうするのか分からなかった。が、意外にもありきたりなものだったのだ。
部室にある「太鼓の鉄人」の筐体を稼動させ、とにかく叩いて叩いて叩きまくるだけだった。
「とりあえず、練習試合まではこの楽曲の譜面を覚えることだけに専念しよう。そうすれば、勝利はきっと見えてくるハズだよ!」
なぁんて望子先輩。
確かに、譜面さえ覚えておけば、どのタイミングでどう叩けばいいのか分かるので、譜面の丸暗記が一番効率がいいのかもしれない。
……音ゲーなんてあまりやったことないので、僕はどうすればいいのか分からないので、望子先輩の言うことに従うしかなかった。
流れてくる譜面を叩きながら、僕はタイミングよく太鼓を先輩の作ったマイバチで叩いていく。
先輩の作ったバチはとても使いやすく、まるでドラムのスティックでも持っているかのように軽かった。
すべての譜面が流れ終え、リザルト画面が表示される。見逃した譜面や間違えた譜面は全部で十三個だったが、それでもスコアは前よりも伸びており、なかなかの成長ではないかと自分でも思ってしまった。
「お、ケン後輩。また新記録か。やるじゃないか!」
ばん、と路世先輩に背中を叩かれる。
激痛とともに、路世先輩の喜びが背中にひしひしと伝わってきて、僕はこのままでも十二分に勝てるのではないかと思ってしまった。
「……よし、じゃ次は部員同士でスコアを競い合ってみよっか! ちぃちゃん、鍵くん!」
「はっ、はい!」
このまま一人ずつ譜面を覚える作業をしてもラチが開かないとでも思ったのだろうか。望子先輩は部員同士で戦わせる練習へと変更させたのだ。
まぁ、こっちのほうが戦いながら譜面を覚えることだってできるし、何より相手がいる分、自分のミスなどを気にしてしまうからだ。
相手がいれば、それだけ実践に近い練習ができて、そっちのほうが効率は良かった。
「それでは、行きますよ、先輩」
「あぁ。全力でかかってこい、ちぃ!」
その後も僕らは、太鼓を叩く永久機関となり、時間いっぱいまで太鼓を叩くのだった。
練習試合まであと三日。それまでに相手チームに勝てるようにしないと……!
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