41 / 142
第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その41 特訓
しおりを挟む練習試合を控えた僕らは、いつも自由にやっている活動を停止し、練習試合に向けた練習に励んでいた。
……でも、太鼓部の練習ってどんな感じで行うのだろう、と思う方もいるだろう。
僕も最初はどうするのか分からなかった。が、意外にもありきたりなものだったのだ。
部室にある「太鼓の鉄人」の筐体を稼動させ、とにかく叩いて叩いて叩きまくるだけだった。
「とりあえず、練習試合まではこの楽曲の譜面を覚えることだけに専念しよう。そうすれば、勝利はきっと見えてくるハズだよ!」
なぁんて望子先輩。
確かに、譜面さえ覚えておけば、どのタイミングでどう叩けばいいのか分かるので、譜面の丸暗記が一番効率がいいのかもしれない。
……音ゲーなんてあまりやったことないので、僕はどうすればいいのか分からないので、望子先輩の言うことに従うしかなかった。
流れてくる譜面を叩きながら、僕はタイミングよく太鼓を先輩の作ったマイバチで叩いていく。
先輩の作ったバチはとても使いやすく、まるでドラムのスティックでも持っているかのように軽かった。
すべての譜面が流れ終え、リザルト画面が表示される。見逃した譜面や間違えた譜面は全部で十三個だったが、それでもスコアは前よりも伸びており、なかなかの成長ではないかと自分でも思ってしまった。
「お、ケン後輩。また新記録か。やるじゃないか!」
ばん、と路世先輩に背中を叩かれる。
激痛とともに、路世先輩の喜びが背中にひしひしと伝わってきて、僕はこのままでも十二分に勝てるのではないかと思ってしまった。
「……よし、じゃ次は部員同士でスコアを競い合ってみよっか! ちぃちゃん、鍵くん!」
「はっ、はい!」
このまま一人ずつ譜面を覚える作業をしてもラチが開かないとでも思ったのだろうか。望子先輩は部員同士で戦わせる練習へと変更させたのだ。
まぁ、こっちのほうが戦いながら譜面を覚えることだってできるし、何より相手がいる分、自分のミスなどを気にしてしまうからだ。
相手がいれば、それだけ実践に近い練習ができて、そっちのほうが効率は良かった。
「それでは、行きますよ、先輩」
「あぁ。全力でかかってこい、ちぃ!」
その後も僕らは、太鼓を叩く永久機関となり、時間いっぱいまで太鼓を叩くのだった。
練習試合まであと三日。それまでに相手チームに勝てるようにしないと……!
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ボクたち、孫代行をやってみました
makotochan
青春
中学二年になった松本拓海は、仲良しグループの海斗と七海、美咲との四人で、自由に使えるお金を増やすための方法を考えてみた。
そして、高齢者をターゲットにした孫代行サービスをやってみようという話になった。孫代行とは、孫と触れ合う機会のない高齢者のもとに自分たちが出向いて、孫と過ごしている時間を疑似体験してもらうサービスのことだった。
拓海がリーダー役に指名され、懸命に四人をまとめる。決断力のない拓海には荷が重たいことだったのだが、密かに思いを寄せていた七海に格好の悪い姿を見せないために、懸命に頑張った。
四人は、協力しながらチラシを配り、連絡をくれた高齢者の家に出向いて孫代行を行った。客の数も次第に増え、四人が手にするお金の額も増えていく。
しかし、商売をしていることが学校にばれてしまった。四人は、親と一緒に学校に呼び出され、先生たちから、校則違反となる行為であり二度とやってはならないと言い渡される。
その最中に、孫代行を利用していた高齢者たちがその場に姿を現し、拓海たちがしていることは自分たちも望んでいることなのだと主張した。
その様子を目の当たりにした四人の親たちも拓海たちのやったことに対して理解を表し、ボランティアという形でなら孫代行を続けてもよいという結論になった。
その結果を受けて、拓海は、今後どうしていくべきなのかを考えた。高齢者たちと交流を図る中で生きていくうえで大切なことを学ばせてもらえているという思いがあり、孫代行は続けていきたかったからだ。
他の仲間ともそのことを話し合い、全員が孫代行を続けていきたいという思いを抱いていることを知った拓海は、今まで稼いだお金を使って、客になってくれた高齢者たちと自分たちの親を招いた食事会をやらないかと三人に提案した。
それぞれに対する感謝の言葉を口にしたうえで、今後も孫代行を続けていきたいという全員の思いを伝えて再スタートすることが目的だった。
そして、食事会の日がやってきた。拓海が、四人を代表して感謝の言葉と全員の思いを、集まってくれた高齢者たちと親に伝える。
その姿を目にした七海の胸に、拓海のことを頼もしく思う気持ちが芽生え始めた。

2人の幼馴染が私を離しません
ユユ
恋愛
優しい幼馴染とは婚約出来なかった。
私に残されたのは幼馴染という立場だけ。
代わりにもう一人の幼馴染は
相変わらず私のことが大嫌いなくせに
付き纏う。
八つ当たりからの大人の関係に
困惑する令嬢の話。
* 作り話です
* 大人の表現は最小限
* 執筆中のため、文字数は定まらず
念のため長編設定にします
* 暇つぶしにどうぞ
イケメン御曹司とは席替えで隣になっても、これ以上何も起こらないはずだった。
たかなしポン太
青春
【第7回カクヨムコンテスト中間選考通過作品】
本編完結しました!
「どうして連絡をよこさなかった?」
「……いろいろあったのよ」
「いろいろ?」
「そう。いろいろ……」
「……そうか」
◆◆◆
俺様でイメケンボッチの社長御曹司、宝生秀一。
家が貧しいけれど頭脳明晰で心優しいヒロイン、月島華恋。
同じ高校のクラスメートであるにもかかわらず、話したことすらなかった二人。
ところが……図書館での偶然の出会いから、二人の運命の歯車が回り始める。
ボッチだった秀一は華恋と時間を過ごしながら、少しずつ自分の世界が広がっていく。
そして華恋も秀一の意外な一面に心を許しながら、少しずつ彼に惹かれていった。
しかし……二人の先には、思いがけない大きな障壁が待ち受けていた。
キャラメルから始まる、素直になれない二人の身分差ラブコメディーです!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

走れない新幹線
R3号
青春
初投稿です。
一人旅の帰りの新幹線で思いついた大学生と女子高生のお話です。
恋愛話ではありません。
歳の差で友達のような男女の関係性とか素敵だなあとか考えながら書いてました。
至らない文章力ですがお付き合いくださると嬉しいです。
構成・表現の改善点などがあれば是非教えてください。

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる