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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その39 とある出来事
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ゴールデンウィークを週末に控えたとある日。事件は起きた。
ガラガラガラ、と勢いよく開かれる部室の扉に、一同唖然としてしまった。
太鼓部の部員は全員、部室でそれぞれ自由に活動していたのに、この部室の扉を開ける者がいるとは誰も予想していなかったからである。
そして、その扉を開けた人物は―――――――
「……紗琉?」
黄金色の短い髪の毛をなびかせながら、彼女は仁王立ちでそこに立っていた。
その表情は険しく、何だかこれから重要な事柄を話すような雰囲気だった。
「どうしたの? 生徒会長がこんな所に?」
望子先輩が紗琉に問いただす。
確かに、こんな誰もが来ないような部室にこうして自分から向かいに来てくる物好きな人なんかいない。
だからこそ、こうしてわざわざ紗琉がこの部室に来た目的がイマイチ分からなかった。
「そうね。確かに、私はこんな部室に来るつもりなんてなかったわ。……でも、これは理事長からの伝言だからね」
と、紗琉はその髪をくるくる、と指に巻きつけながらそう告げた。いわゆるお嬢様ポーズをとりながら。
「理事長の伝言……?」
僕や望子先輩、ちぃや路世先輩までもが全員顔を合わせた。
理事長が、僕たち太鼓部に何の用なのだろうか?
「ゴールデンウィークも近いことですし、久々に練習試合を組んだとのご報告を頂きました」
「練習試合……?」
僕とちぃは目を丸くした。
僕らはロクに練習もしていないのに、練習試合を組んでもらえただなんて心外だったからだ。
そんな中、望子先輩と路世先輩だけがウキウキとした表情をしていた。
「久しぶりに練習試合を組んでもらえるとはな!」
「そうだね。実に三ヶ月ぶりかな?」
と、僕ら部員同士がそれぞれ会話をしている中、紗琉はコホン、と一つ咳払いをする。
どうやら話はこれで終わりではなかったようだ。
「喜んでいられるのもそこまでですよ。この練習試合で勝てなければ、理事長は太鼓部を廃部にする、とおっしゃっていましたから」
「は、廃部!?」
その二文字に僕は、驚きを隠せなかった。まさか、ただの練習試合ではなく、部の存続を賭けた試合になるとは思ってなかったからである。
普通、練習試合ってのは自分達の課題を見つけるためのものだが……それに部の存続を賭けられるとは。
「試合は五月の六日。相手は春日学園との事です。……ま、せいぜい頑張って下さいね、部の存続のためにも」
と、まるで嫌味のように吐き捨てると、紗琉は部室を出て行くのだった。
部室に残った僕たちは、練習試合の事で頭がいっぱいだった。
「まさか、練習試合に部の存続を賭けられるなんてな……」
「でも、その試合に勝たなくちゃこのまま太鼓部として活動できなくなるからね……。この試合、絶対に勝つよ!」
望子先輩のその一声で、僕たち部員一同気合いを入れるのだった。
ガラガラガラ、と勢いよく開かれる部室の扉に、一同唖然としてしまった。
太鼓部の部員は全員、部室でそれぞれ自由に活動していたのに、この部室の扉を開ける者がいるとは誰も予想していなかったからである。
そして、その扉を開けた人物は―――――――
「……紗琉?」
黄金色の短い髪の毛をなびかせながら、彼女は仁王立ちでそこに立っていた。
その表情は険しく、何だかこれから重要な事柄を話すような雰囲気だった。
「どうしたの? 生徒会長がこんな所に?」
望子先輩が紗琉に問いただす。
確かに、こんな誰もが来ないような部室にこうして自分から向かいに来てくる物好きな人なんかいない。
だからこそ、こうしてわざわざ紗琉がこの部室に来た目的がイマイチ分からなかった。
「そうね。確かに、私はこんな部室に来るつもりなんてなかったわ。……でも、これは理事長からの伝言だからね」
と、紗琉はその髪をくるくる、と指に巻きつけながらそう告げた。いわゆるお嬢様ポーズをとりながら。
「理事長の伝言……?」
僕や望子先輩、ちぃや路世先輩までもが全員顔を合わせた。
理事長が、僕たち太鼓部に何の用なのだろうか?
「ゴールデンウィークも近いことですし、久々に練習試合を組んだとのご報告を頂きました」
「練習試合……?」
僕とちぃは目を丸くした。
僕らはロクに練習もしていないのに、練習試合を組んでもらえただなんて心外だったからだ。
そんな中、望子先輩と路世先輩だけがウキウキとした表情をしていた。
「久しぶりに練習試合を組んでもらえるとはな!」
「そうだね。実に三ヶ月ぶりかな?」
と、僕ら部員同士がそれぞれ会話をしている中、紗琉はコホン、と一つ咳払いをする。
どうやら話はこれで終わりではなかったようだ。
「喜んでいられるのもそこまでですよ。この練習試合で勝てなければ、理事長は太鼓部を廃部にする、とおっしゃっていましたから」
「は、廃部!?」
その二文字に僕は、驚きを隠せなかった。まさか、ただの練習試合ではなく、部の存続を賭けた試合になるとは思ってなかったからである。
普通、練習試合ってのは自分達の課題を見つけるためのものだが……それに部の存続を賭けられるとは。
「試合は五月の六日。相手は春日学園との事です。……ま、せいぜい頑張って下さいね、部の存続のためにも」
と、まるで嫌味のように吐き捨てると、紗琉は部室を出て行くのだった。
部室に残った僕たちは、練習試合の事で頭がいっぱいだった。
「まさか、練習試合に部の存続を賭けられるなんてな……」
「でも、その試合に勝たなくちゃこのまま太鼓部として活動できなくなるからね……。この試合、絶対に勝つよ!」
望子先輩のその一声で、僕たち部員一同気合いを入れるのだった。
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