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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その38 お買い物
しおりを挟む「あれ? ちぃじゃないか」
「先輩っ!?」
僕がいつも行くスーパーへ買い物に来ていると、たまたま偶然ちぃと出会った。
部活が終わり、僕はそのまま直帰したのだが、帰ってくると母からおつかいを頼まれたのだ。
仕方なく僕は、最寄りのスーパーへと向かい、頼まれたものを買いに来たのだが……ちぃもどうやらここに来ていたようだ。
「なんだ、ちぃも買い物?」
「えぇ。母から頼まれまして……先輩もですか?」
「そーなんだよ……。帰ってきたと思ったら、また出ていかないといけないなんて……」
「ホント困っちゃうよ」と、ため息混じりに僕はそう付け足した。
やっとこさ、自分の自由な時間が手に入ったと思いきや、また外に出なくてはいけないなんて……完全に二度手間だ。…………部活の時間も自由な時間であるが。
こんな事になるくらいならば、せめて電話やメールで伝えてくれればいいものを……母さんは僕が帰宅した途端に頼んでくるのだから、溜まったもんじゃない。
「確かに。先輩のお母さんならば、そんな感じがします」
「完璧っぽくて、どこか抜けてるからなぁ……母さんは」
僕の母さんは、なんでもソツにこなすが、どこか抜けていて、卵焼きに砂糖を入れ忘れたり、料理の材料を買い忘れたり、はたまた間違えたりする事もしばしば。
そのため、買い物に行く時は決まってメモ紙を持っていくのだが……どうやら今回はそれすら忘れていっていた様子だった。
「それで、ちぃは何買いに来たの?」
「タマネギとジャガイモです。今日は肉じゃがにしようと母と相談してまして……。先輩こそ、何を買いに来たんですか?」
「僕? 僕はニンジン。今日はカレー作るって張り切ってたんだけどね……」
母さんが肝心なものを買い忘れてしまうから、こうして僕が買いに来たのだが……。
「先輩の家はカレーですか……いいですね、次の日も持ちますし、何より二日目のカレーっておいしいですよね」
「まぁね。でも、ちぃの肉じゃがもいいよねー。そういえば、最近肉じゃが食べてなかったな……」
なんて買い物をしながら、他愛もない話をしていく僕ら。
互いの晩ご飯事情を知りながら、こうして話をするのももう数え切れないほどやったものだ。
互いに買うものをカゴに入れ、そのままレジへと向かっていく。
商品をレジに通し、会計を済ませてから店を出る。すでに陽は暮れかけており、時計の針ももう七を指しかけていた。
「っと、それじゃちぃ、また明日」
「はい、先輩」
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