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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その36 部員の証
しおりを挟むいつもの放課後。いつもの部室の出来事だった。
「そうだ、鍵くん。これ渡すの忘れてた」
顔をあげると、そこには望子先輩が立っていた。そして、僕になにかの入った巾着を手渡してくる。
「はい? なんですかこれ?」
「これはそのー……太鼓部に入った時の支給品だよ。まぁカンタンに言えば、部員の証みたいなの」
「部員の証って……それじゃこれまでの僕はなんだったんですか?」
気になったそれを僕は、つい先輩に聞いてみる。
「まぁ……体験入部みたいな感じ?」
「えぇ……」
鍵はがっくりと肩を落とした。それじゃあ、これまで部員として部活に参加していたけど、本当は僕はここまでは体験入部みたいな状態だったって事なのだろうか?
「まぁウソだけど。単に準備ができなかっただけなんだけどね。遅れてごめんね」
と、先輩にその巾着を手渡された。一体なにが入っているのか、僕は期待と不安の意味を込めながら、巾着の袋を開けていく。
その中には木の棒が二本入っており、取っ手の部分のような場所には黒いラバーが巻いてあった。
そう。先輩からのプレゼントはまさしく、太鼓のバチだった。俗に言うマイバチを先輩に部員の証として貰ったのだった。
「マイバチですか」
「うん。これで今の太鼓部のみんなはマイバチ所持したね」
「え? ちぃももう持ってたんですか?」
「はい。ですが、望子先輩から受け取ったのはついこの前ですが」
と、ちぃは本を閉じながらそう言った。やはりマイバチだけあって、完成までかなりの時間を要するようだった。
きっとこれも望子先輩のお手製なのだろう。先輩の手に無数に貼られた絆創膏がとても痛々しくて、貰ったマイバチは大切にさせてもらおうと思うのだった。
「まぁ、とりあえずおめでとう。鍵くん」
「なんだか照れくさいですが……ありがとうございます」
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