どん・だー ~私立海老津学園太鼓部活動録~

とらまる

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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~

その29 アニメ

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「どもー」

 放課後となり、僕は太鼓部室に入る。部室にはすでにみんな揃っており、僕が一番最後のようだった。
 そのままソファの近くに座り、通学バックを降ろす。と、そこで先輩が何かに気づいたのか、僕に声をかける。

「鍵くん、そのキーホルダーって……」
「え?」

 先輩は、僕の通学バックに引っ掛かってるキーホルダーを指差す。そこには、僕のお気に入りのキャラクターのラバーストラップがついていた。

「あぁ、これですか? これは先日から始まったアニメのキャラクターですよ」

 そう。先日、自宅へと帰ってきてテレビをつけた時、たまたま放送していたアニメを観ていたら、意外とハマってしまったのだ。
 元々アニメは好きな方だった僕は、そのまま三十分テレビの前から離れる事もできず、オープニングからエンディングまでずーっとテレビの画面を凝視していたのだ。
 そして昨日、コンビニでそのアニメとのキャンペーンを行っており、対象のお菓子二個でそのストラップをもらえたので、ついつい買ってしまったのだ。

「だよね!? 私も実は観てたんだよね~」
「そうなんですか。あれって意外と面白かったですよね」
「お、そのアニメなら俺も観たぞ」
「……ちなみに私も観てました」

 何と、僕と望子先輩だけでなく、路世先輩やちぃまでも観ていたようだ。太鼓部全員視聴済みだとは意外だ。
 でもまぁ、あのストーリー性はなかなかにハマるものだった。単純な異世界転生かと思いきや、その世界はカードゲームですべてが決まる世界であり、最弱の主人公がカードを駆使して、戦っていくというものだ。
 異世界ものには最弱のクセにチートのような能力ばかりがあって、最弱ではないものが多いが、その話では完全に主人公が最弱であり、一話でモブキャラにすら負けていたほどだ。
 しかしそれでも、どうにか勝とうと駆使して戦っているのがよく伝わっており、主人公に感情移入できるものだった。

「へぇ~……。なんだ、みんな観てたんだね」
「俺はアニメなんて、小学生の頃までって思ってたが……意外と今観るのも面白いものだな」
「そうですよね。昔はキャラがかっこよくて観てたんですけど、今となるとストーリーに引き込まれて観てしまうんですよね」
「分かるぞ! 昔は主人公のライバルキャラに惚れたりしてて、毎回そいつの出番を楽しみにしてたんだよ」

 と、楽しそうに路世先輩はアニメについて語りだす。こんな楽しそうな表情を見せる路世先輩は初めてで、何だか新鮮だった。
 今日の部活はアニメについての話を、部員全員で熱く語って時間が過ぎるのであった。
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