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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その23 カードゲーム①
しおりを挟む「先輩、何切り抜いてるんですか?」
いつもの部活中、望子先輩はハサミを使って何かを切り抜いていた。
コピー用紙にイラストの描かれた同じようなものを印刷し、それを適切なサイズにチョキチョキと切り抜いている。
「これ? カードだよ、カード。部活メンバーのカードゲームを作って、生徒会にこの試作品を渡して申請しようと思って」
望子先輩の考える事はいつも突発的だ。まさかこうして、太鼓部のカードゲームを作ろうだなんて誰が思いつくだろうか。
……いや、それ以前にだ。メンバーは四人しかいないと言うのに、カードゲームになるのだろうか? カードプールの少ない状態の中、よくもこうして太鼓部のカードゲームを作ろうと考えたものだ。
「で、これがその試作品ですか……」
先輩が切り抜いたものを手に取ってみる。サイズは一般的なカードゲームのサイズと何かしら変わらず、他のカードゲームでトークンと呼ばれる代用カードに使ってもいいくらいの完成度だった。望子先輩には、こんなクオリティの高いものを作る技術はないため、きっとクラスの誰かに製作を協力してもらったのだろう。
「あ、ちなみに、そのカードのデサインは路世ちゃんにお願いしたの」
「路世先輩が!?」
ばっ、と路世先輩の方を振り返る。路世先輩は軽く手を振りながら、いつも通りパソコンの画面とにらめっこしていた。
意外にも協力者が身近にいて、驚きだった。
「何やってるんですか、路世先輩まで……」
「いやぁ、望子がなかなかにしつこくてな……断りきれなかったんだよ」
ははは……と路世先輩は、苦笑い。確かに先輩の事だ。どんな事があっても、自分の考えた意見は相当な事がない限り曲げる事はないだろう。
今回は望子先輩の粘り勝ちといった所だろう。
「しかし、二人で作ったとはいえ、凄い完成度ですね」
カードの材質はコピー用紙とはいえ、デサインはごく一般的なカードゲームと変わりはなかった。本当にこれが、太鼓部のやる事なのだろうか?
と、ふと僕の手にあるカードをよく見る。カードのイラストは部員のそれぞれの写真を貼ったもののようだったが、それじゃない。カードでテキストがびっしり書き込んである、効果欄の所だ。
そこには、『赤間望子』と名前が書いてあり、その下の欄には『部長権限:このカードとバトルを行うキャラは戦闘前に墓地に送られる。このキャラに逆らう人間は、すべて無に帰す。』と、何やらラスボスのような事が書き込まれていたのだ。
「先輩、これなんですか……」
「え? 効果でしょ? 私だもん、そりゃこのくらい強くないと!」
部長だしね、と先輩は付け足した。部活だからといって、こんなチート真っ青の効果にしていい訳がない。
そもそも、そんな効果ではカードゲームとして成り立たないのでは?
「まぁ、これはあくまで試作品だからね? 多少の効果の甘さは大目に見てよ~」
「これは甘すぎますよ……」
やれやれ、とため息を吐きながら、僕は他のカードに目をやる。……はたして、僕のカードには、どんな効果が書いてあるのか不安と期待でいっぱいだった。
そんな僕の効果がこれだった。
『黒崎 鍵
太鼓部随一の人畜無害:このカードはどんなキャラの攻撃を食らおうとも確実に墓地に送られる。まさに貧弱。種族はミジンコとしても扱う。』
「なんか僕の扱いだけ酷くないですかっ!?」
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