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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その22 図書館
しおりを挟むその日、鍵は図書館に来ていた。部活中に読む本を探すために、鍵は図書館をふらふらしていた。読書が趣味な鍵は、時たまこうして図書館をふらつき、気になる本を見つければ借りて読んでいるのだ。
鍵の家には鍵以外にも両親の購入した沢山の本があるが、それでも足りない時があったり、読みたいジャンルが違ったりしているので、こうして図書館に通うときがあるのだ。
小説のコーナーをぶらぶらしながら、本の背のタイトルを眺めていく。今日はなんとなくミステリーか、いつものラノベを読みたい気分だった鍵。
「アガザ・クリスティ……。綾辻行人……うーん、なんだか違うんだよなぁ……」
鍵は好きな作家の本を見つけるも、今日の鍵の気分とは少しズレている感じがしたのでやめた。
「やっぱりラノベでも探すほうがいいかなぁ?」
と、半ば諦めかけていたその時だった。
「ケン? どうしたの、こんなところで?」
声をかけられる。紗琉だった。紗琉も図書館に来ていたようで、本を探している僕が気になったようだった。
「本を探してるんだ。オススメのミステリーとかないかな?」
「そうね……。アガザ・クリスティの『そして誰もいなくなった』とかは?」
「それはもう何度も読んだからなぁ……」
「それならば、綾辻行人の『十角館の殺人』とかは?」
「それも読んだからねぇ……」
紗琉のあげるタイトルは、どれも僕がすでに読破したものばかりだった。しかし、紗琉もこうしてミステリーを読むなんて意外だった。
そもそも、紗琉の事だ。本を読む時間なんてなさそうな感じがするのに、まさかこうして読書家だとは思ってもなかった。
「そうね。最近は時間がないけど、それでも読むわ。一日一ページでも読めたら読もうとしているのよ」
「そうなんだ。ミステリーの他に読むジャンルとかないの?」
「そうね……。大抵の小説は読んでるつもりだけど、やっぱりミステリーに偏ったりするわね」
と、紗琉は本棚を眺めながらそう告げる。確かに、ミステリーは読んでいると次の展開が面白かったり、自分で考察していくのもなかなかだ。
そして最後ですべての伏線が回収されて、辻褄が合ったり、自分の考察の答え合わせをしたりするのがとても楽しいから、僕は読んでいるのだ。
「あ、そうだわ。ケン、これならどうかしら?」
と、紗琉は一冊の本を本棚から出す。タイトルには『水無月の夜』と書いてあった。
「廃村になった村に小学生数人で肝試しに行くんだけど、そっから色んな事件に巻き込まれていくって話なの。これは面白かったからオススメよ」
「そうなんだ。ありがとう、紗琉」
紗琉のオススメのその本を片手に、僕はその本を借りる事にした。
その日の放課後。部活中にその本を読み出すと、意外にもハマりだし、時間を忘れるかのようにページをめくっていくのだった。
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