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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その19 姉妹?
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「最近、ふと思うんだが……」
「はい」
と、路世先輩は望子先輩とちぃの方へと目を向ける。それに釣られて僕も目を向けると。
「ねぇねぇちぃちゃーん」
「なんですか、望子先輩……」
ちぃに必要以上にベタベタとくっついていく先輩。ちぃも流石にちょっと困った様子だった。
「あー……あれですか」
僕は小さくため息を吐きながら、路世先輩にそう返した。
最近の先輩は、ちぃにずっとあんな感じにアプローチしていたのだ。ちぃが読書している所にわざわざ向かっていったり、ちぃの背後からおぶさったり、何かと必要以上にちぃにアプローチしていたのだ。
「流石にちぃももう我慢の限界だろう? かれこれ、ああされてもう一週間は経っているんじゃねぇか?」
「そうですね……。ちぃの顔を見る感じ、何とも言えませんが……何だかそろそろ嫌な予感がするって感じがしますよ」
ちぃと長年一緒だった僕だからこそ分かる。あの少しむすっ、とした顔はまさしく、ちぃの機嫌が悪いサインだ。先輩に必要以上に触られ、自分の自由が奪われ、逆にイラついている。そんな気がしてならなかった。
「でも、何だか第三者から見ると姉妹に見えませんか?」
「姉妹?」
「はい。何となくですが、姉妹でじゃれているような感じがして、少し微笑ましいというかなんというか…………」
確かに。ちぃの機嫌が悪そうなのは認める。が、しかしだ。その光景を第三者である僕らから見ると、ただ単に仲の良い姉妹のじゃれ合いのようにしか見えなかったのである。
マイペースな姉が、妹に一生懸命にアプローチしているようで、そう捉えるとそれはそれで微笑ましい光景と言えた。
「確かにそうだな……。一見、見方を変えてみるとイメージも変わるもんだな」
と、路世先輩は感心したかのような声だった。まぁしかし、それでも、ちぃの機嫌がどうなのかは分からないが…………。
「先輩……少し離れてください、マトモに本も読めないじゃないですか……」
「本なんか読んでないで、私と遊ぼうよー」
必死にアプローチする先輩の姿は、まるで求愛ダンスを踊る蝶のようだった。それでも、ちぃがそれに応じる事はなく、何としてでも今手元にある本を読まなくては、という様子だった。
と、観念したのか先輩は、急にすっく、と立ち上がった。
「トイレ行ってこよ」
どたどた、と部室を出ていく先輩。どことなくマイペースな先輩だ……。
やっとの思いで、先輩が離れたちぃは、謎の汗を拭きながら、読書を続けていた。そこへ、路世先輩は心配そうに声をかける。
「大丈夫か、ちぃ? ホントに面倒だと思うんだったらちゃんと言った方がいいぞ?」
「いえ、私は別に大丈夫ですよ」
ちぃはそれでも、先輩に嫌だとは言わないとの事だ。
「どうしてだ? 流石にあんなにずっとくっつかれてちゃ、鬱陶しいだろうに」
「いえ、確かにあの望子さんは鬱陶しいですが…………それでも私は、そんな望子さんが好きなんです。なので、鬱陶しいとは思っても嫌だとは思った事はありません」
と、ちぃはにこり、と微笑んでそう路世先輩に返したのだった。
「じゃ、別に機嫌が悪いわけではなかったんだね」
「はい。ですが、望子先輩にはこの事は秘密にしておいてくださいね。きっとその事実を知ってしまうと、もっとエスカレートしてしまう気がするので」
と、ちぃは人差し指を口に当てながらそう告げた。
その表情は、まるでイタズラをする子どものようで、先輩を少しからかって楽しんでるように感じ取れるものだった。
「はい」
と、路世先輩は望子先輩とちぃの方へと目を向ける。それに釣られて僕も目を向けると。
「ねぇねぇちぃちゃーん」
「なんですか、望子先輩……」
ちぃに必要以上にベタベタとくっついていく先輩。ちぃも流石にちょっと困った様子だった。
「あー……あれですか」
僕は小さくため息を吐きながら、路世先輩にそう返した。
最近の先輩は、ちぃにずっとあんな感じにアプローチしていたのだ。ちぃが読書している所にわざわざ向かっていったり、ちぃの背後からおぶさったり、何かと必要以上にちぃにアプローチしていたのだ。
「流石にちぃももう我慢の限界だろう? かれこれ、ああされてもう一週間は経っているんじゃねぇか?」
「そうですね……。ちぃの顔を見る感じ、何とも言えませんが……何だかそろそろ嫌な予感がするって感じがしますよ」
ちぃと長年一緒だった僕だからこそ分かる。あの少しむすっ、とした顔はまさしく、ちぃの機嫌が悪いサインだ。先輩に必要以上に触られ、自分の自由が奪われ、逆にイラついている。そんな気がしてならなかった。
「でも、何だか第三者から見ると姉妹に見えませんか?」
「姉妹?」
「はい。何となくですが、姉妹でじゃれているような感じがして、少し微笑ましいというかなんというか…………」
確かに。ちぃの機嫌が悪そうなのは認める。が、しかしだ。その光景を第三者である僕らから見ると、ただ単に仲の良い姉妹のじゃれ合いのようにしか見えなかったのである。
マイペースな姉が、妹に一生懸命にアプローチしているようで、そう捉えるとそれはそれで微笑ましい光景と言えた。
「確かにそうだな……。一見、見方を変えてみるとイメージも変わるもんだな」
と、路世先輩は感心したかのような声だった。まぁしかし、それでも、ちぃの機嫌がどうなのかは分からないが…………。
「先輩……少し離れてください、マトモに本も読めないじゃないですか……」
「本なんか読んでないで、私と遊ぼうよー」
必死にアプローチする先輩の姿は、まるで求愛ダンスを踊る蝶のようだった。それでも、ちぃがそれに応じる事はなく、何としてでも今手元にある本を読まなくては、という様子だった。
と、観念したのか先輩は、急にすっく、と立ち上がった。
「トイレ行ってこよ」
どたどた、と部室を出ていく先輩。どことなくマイペースな先輩だ……。
やっとの思いで、先輩が離れたちぃは、謎の汗を拭きながら、読書を続けていた。そこへ、路世先輩は心配そうに声をかける。
「大丈夫か、ちぃ? ホントに面倒だと思うんだったらちゃんと言った方がいいぞ?」
「いえ、私は別に大丈夫ですよ」
ちぃはそれでも、先輩に嫌だとは言わないとの事だ。
「どうしてだ? 流石にあんなにずっとくっつかれてちゃ、鬱陶しいだろうに」
「いえ、確かにあの望子さんは鬱陶しいですが…………それでも私は、そんな望子さんが好きなんです。なので、鬱陶しいとは思っても嫌だとは思った事はありません」
と、ちぃはにこり、と微笑んでそう路世先輩に返したのだった。
「じゃ、別に機嫌が悪いわけではなかったんだね」
「はい。ですが、望子先輩にはこの事は秘密にしておいてくださいね。きっとその事実を知ってしまうと、もっとエスカレートしてしまう気がするので」
と、ちぃは人差し指を口に当てながらそう告げた。
その表情は、まるでイタズラをする子どものようで、先輩を少しからかって楽しんでるように感じ取れるものだった。
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