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凌妃
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『お前を、許しは、しないからな。』
榮氏ははね起きた。とてつもなく、嫌な予感がする。
夜着から衣裳に着替え次第、霛塋公主の元へ向かう。
霛塋公主は寝台で眠っていた。だが、何か変わった様子があるわけでもなかった。
榮氏は胸をなでおろす。気のせいだったのかもしれない。
霛塋は変わりない。だが、霛塋に関することではあった。
「新しい妃が入ってくるらしいです。」
侍女は言っている。
「まぁ、それは、本当なの。何処の方なの。」
「此処は後宮だから、定期的に、妃は来るわよ。」
態々訪ねて来てくれた、圓寳闐は優雅に茶を啜る。隣では、その従姉妹である圓稜鸞が頬杖をついている。
「どんな娘かしら、楽しみだわ。」
『私が憎いか?莉鸞。』
「貴人様が、参りました。」
新顔の妃は、貴人の位についたらしい。決して、身分は高くない。最下位だ。
榮氏は胸騒ぎがした。心臓の鼓動が、段々と速くなる。頭が痛い。
「初めまして、皆様。」
ああ、やはり、そう思いながら、榮氏は頭を抱える。
「凌と申します。」
『私が憎いか?莉鸞。』
榮氏は絶句した。女はにやりと笑った。
榮氏の母親は、凌氏と呼ばれていたのである。
(どうしよう。)
言いたい。言えない。怖い。後宮に、母が入って来ただなんて。
榮氏は貴妃だ。護衛もいる。たかが貴人でしかない凌氏が近づくなんて、出来ないはずだ。
そして、更に榮氏を、怯えさせたのが、貴人の侍女だ。雀斑が、あった。
(殺される………)
罪なのだろうか。
自分を売ろうとした母を殺したのは、決して許されないことなのだろうか。
逃げたい、そう、願う。
凌氏は、此処に来てしまうだろう。榮氏の、はたまた霛塋の気配を追って。
また、戻るのだ。
狭い部屋に閉じ込められた日々が。
「変ね、あの人。」
「どうかしたのですか、小姐。凌貴人のことですか?」
宮に帰った寳闐は、俐才人と茶会をしていた。
「気のせいかしらね、榮貴妃様に、似ているのよ、とても。」
誰も、知る由もない。そして、知ったところでどうなるだろう。凌貴人は、榮貴妃の母親だと。
「楽しみだわぁ。」
女は笑った。
『私が憎いか?莉鸞。』
榮氏ははね起きた。とてつもなく、嫌な予感がする。
夜着から衣裳に着替え次第、霛塋公主の元へ向かう。
霛塋公主は寝台で眠っていた。だが、何か変わった様子があるわけでもなかった。
榮氏は胸をなでおろす。気のせいだったのかもしれない。
霛塋は変わりない。だが、霛塋に関することではあった。
「新しい妃が入ってくるらしいです。」
侍女は言っている。
「まぁ、それは、本当なの。何処の方なの。」
「此処は後宮だから、定期的に、妃は来るわよ。」
態々訪ねて来てくれた、圓寳闐は優雅に茶を啜る。隣では、その従姉妹である圓稜鸞が頬杖をついている。
「どんな娘かしら、楽しみだわ。」
『私が憎いか?莉鸞。』
「貴人様が、参りました。」
新顔の妃は、貴人の位についたらしい。決して、身分は高くない。最下位だ。
榮氏は胸騒ぎがした。心臓の鼓動が、段々と速くなる。頭が痛い。
「初めまして、皆様。」
ああ、やはり、そう思いながら、榮氏は頭を抱える。
「凌と申します。」
『私が憎いか?莉鸞。』
榮氏は絶句した。女はにやりと笑った。
榮氏の母親は、凌氏と呼ばれていたのである。
(どうしよう。)
言いたい。言えない。怖い。後宮に、母が入って来ただなんて。
榮氏は貴妃だ。護衛もいる。たかが貴人でしかない凌氏が近づくなんて、出来ないはずだ。
そして、更に榮氏を、怯えさせたのが、貴人の侍女だ。雀斑が、あった。
(殺される………)
罪なのだろうか。
自分を売ろうとした母を殺したのは、決して許されないことなのだろうか。
逃げたい、そう、願う。
凌氏は、此処に来てしまうだろう。榮氏の、はたまた霛塋の気配を追って。
また、戻るのだ。
狭い部屋に閉じ込められた日々が。
「変ね、あの人。」
「どうかしたのですか、小姐。凌貴人のことですか?」
宮に帰った寳闐は、俐才人と茶会をしていた。
「気のせいかしらね、榮貴妃様に、似ているのよ、とても。」
誰も、知る由もない。そして、知ったところでどうなるだろう。凌貴人は、榮貴妃の母親だと。
「楽しみだわぁ。」
女は笑った。
『私が憎いか?莉鸞。』
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