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憾
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永寧大長公主は、直に薨去する。それを聞いて、何故か、驚かなかった。
稜鸞は膝の上で眠っている璙寍皇子の頭を優しく撫でていた。
(お前は、幸せになれるのかしら。)
廃后が、璙寍皇子に、娶らせる、最初の妃を既に選んであることが判明した。名を、瑜琳闇と云う。後宮にいる、瑜才人の姪だっただろうか。そし、妟纛の母である、瑜賷陰とも関係しているのだろうか。
いずれにせよ、前王朝の皇族が後宮にいるというのは、少なからず、影響はあったりするのである。
「妟纛。」
廃后のこと、櫖姮殷淑妃のことを考えていた。そこに声をかけてきたのは、妟纛の両親だった。
瑜太皇太后。妟纛の母。名を、瑜賷陰。そして、妟纛と永寧大長公主の父、龗綝瓈。
「これは、父上、母上、ご機嫌麗しゅう。」
丁寧に拝礼する。
「魖菫児は毒をあおったと聞いたわ。本当なの?」
えぇ、と戸惑いながらも、妟纛は返事をする。
「残念ね。貴方に妃はもう、いないわ。」
「それが、どうか、したのですか?」
「新しい妃を娶ればいいじゃないと、勧められているのよ。女帝様も仰っていたわ。」
考えは、すぐついた。妟纛は首を振った。
「私には、もう、十分です。菫児も、姮殷も無惨に死なせてしまった。これ以上、女性を不幸にはさせられませんから。」
永寧大長公主は寝台に寝転がり、いたずらに一日を過ごしていた。
その間にも、刻一刻と、寿命は近づいてくる。明日を生きる保証はある。だが、死日を知ってしまったからには、どうしても、それを気にしないと、生きてはゆけないのだ。
身体が重くて、思うようには動けなくなった。
代わりに、小明が動いている。働き者だ。
そして、事態を察した璡姚が、数日に一度、薬を持って来てくれる。永寧大長公主の宮は、関係者以外は完全に立ち入りを禁止していた。そして、そのお陰で、秘密は完璧に護られていた。
永寧大長公主はゆったりとした衣裳を召している。官服はきつくて着れない。それに、腹が目立ってしまう。小明が気を使って、永寧大長公主の腹が人から見えないように立ち回ってくれている。古参の侍女等しかしないことだ。気を遣ってくれているのだろう。そして、それが有難かったが、とても申し訳なかった。
旲瑓はまた政務に戻る。魖家の謀反も、なんとか決着がついた。そして、永寧大長公主は、また東宮ではなくなった。
璙寍皇子が、その後を継ぐのだろう。それならば、永寧大長公主はもはや無用なのだ。
(知らない方が、幸せね。)
腹の子である。旲瑓には言うことが出来ない。察してくれれば良いけれど、あの子は鈍感だから、無理だろう。
だが、永寧大長公主を心配していた。もしかしたら、分かっているのもしれない。
あと一年、そんな短い期間を、一日一日を大切に生きたい。かけがえのない。そんか、日々を。
稜鸞は膝の上で眠っている璙寍皇子の頭を優しく撫でていた。
(お前は、幸せになれるのかしら。)
廃后が、璙寍皇子に、娶らせる、最初の妃を既に選んであることが判明した。名を、瑜琳闇と云う。後宮にいる、瑜才人の姪だっただろうか。そし、妟纛の母である、瑜賷陰とも関係しているのだろうか。
いずれにせよ、前王朝の皇族が後宮にいるというのは、少なからず、影響はあったりするのである。
「妟纛。」
廃后のこと、櫖姮殷淑妃のことを考えていた。そこに声をかけてきたのは、妟纛の両親だった。
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「これは、父上、母上、ご機嫌麗しゅう。」
丁寧に拝礼する。
「魖菫児は毒をあおったと聞いたわ。本当なの?」
えぇ、と戸惑いながらも、妟纛は返事をする。
「残念ね。貴方に妃はもう、いないわ。」
「それが、どうか、したのですか?」
「新しい妃を娶ればいいじゃないと、勧められているのよ。女帝様も仰っていたわ。」
考えは、すぐついた。妟纛は首を振った。
「私には、もう、十分です。菫児も、姮殷も無惨に死なせてしまった。これ以上、女性を不幸にはさせられませんから。」
永寧大長公主は寝台に寝転がり、いたずらに一日を過ごしていた。
その間にも、刻一刻と、寿命は近づいてくる。明日を生きる保証はある。だが、死日を知ってしまったからには、どうしても、それを気にしないと、生きてはゆけないのだ。
身体が重くて、思うようには動けなくなった。
代わりに、小明が動いている。働き者だ。
そして、事態を察した璡姚が、数日に一度、薬を持って来てくれる。永寧大長公主の宮は、関係者以外は完全に立ち入りを禁止していた。そして、そのお陰で、秘密は完璧に護られていた。
永寧大長公主はゆったりとした衣裳を召している。官服はきつくて着れない。それに、腹が目立ってしまう。小明が気を使って、永寧大長公主の腹が人から見えないように立ち回ってくれている。古参の侍女等しかしないことだ。気を遣ってくれているのだろう。そして、それが有難かったが、とても申し訳なかった。
旲瑓はまた政務に戻る。魖家の謀反も、なんとか決着がついた。そして、永寧大長公主は、また東宮ではなくなった。
璙寍皇子が、その後を継ぐのだろう。それならば、永寧大長公主はもはや無用なのだ。
(知らない方が、幸せね。)
腹の子である。旲瑓には言うことが出来ない。察してくれれば良いけれど、あの子は鈍感だから、無理だろう。
だが、永寧大長公主を心配していた。もしかしたら、分かっているのもしれない。
あと一年、そんな短い期間を、一日一日を大切に生きたい。かけがえのない。そんか、日々を。
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