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奸佞
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魖氏は、承香宮で、うんうんと唸っていた。
永寧大長公主は、死なない。死んでくれない。
価値がないくせに、まだ、生きていようとする。わけが分からない。
初めて旲瑓が魖氏を訪れた際、微かにだが、衣から、変わった香が薫った。すぐに、永寧大長公主の物だと分かった。
(永寧大長公主は、何がしたいのだろうか。)
あの女は、目障りだ。
現在の後宮で、一番身分高い女は、永寧大長公主である。だが、魖氏からすれば、どんなに繕えど、下女珞燁だ。
『叔母様。珞燁を殺してしまっては、我々にも危害はありますよ。』
『構わないわ。兄さんがなんとかしてくれるだろうし。』
魖氏の父で、太后の兄は、人に媚びるのがお得意だ。今の地位も、先帝に胡麻をすって手に入れたらしい。どうも、威厳に欠ける。
『媚を売るのは、唯一無二の取り柄だもの。』
魖太后は笑った。
魖賢妃-名を、闉黤と云う-の宮である、承香宮では、一人の女官が、せっせと薬草をすり潰していた。
「どう?できそうかしら。」
魖家から連れて来た女で、妾の子だった。妃にはなれなかったが、それなりに使えるので、女官として上がった。
「闉黤様、もう少しで出来ると思います。」
女官は笑った。
魖氏は女官服に目を移した。
「薬草は、貴方が拾って来たのかしら。」
「違いますよ、闉黤様。」
女官が着ていた青い襖裙は、汚れていた。青、ということは、女官の中では中位のはず、泥に塗れることはしないのに。
「まぁ、良いわ。成功したら、貴女もお妃にして、あげるわ。」
女官は目を見開き、閏るとさせた。
「有難う御座います、闉黤様!」
女官は笑顔のまま、薬草、追加採ってきますと出て行った。
(これで死に体になってくれるのかしら。)
すり潰された薬草を見て、魖氏は考えた。
まぁ、良い。
魖太后も喜んでくれるだろう。
けらけらと高笑いした。
(あれは何かしら。)
後宮を散歩していた榮氏は、倒れている女を見つけた。青い襖裙。女官だろう。その周りには、赤い襖裙を着た上位の女官が囲んでいた。
(女官虐め?後宮ではよくある話だけれど。)
青い襖裙の女は、頬を押さえて身動きもしない。
「何をしているの?」
気にしなくても良いのに、つい、声をかけてしまった。
「こ、これは榮淑妃様、ご機嫌麗しゅう。」
全員、膝をついた。
「如何したの?この女官は何か粗相をしたのかしら。」
本題だ。
「そういう訳じゃありません。」
恐る恐る、一人が言った。
「この女官は、魖家の人間です。」
ほう、と相槌を打つ。
「おかしいと思いませんか?この女官、医官でもないのに、薬の匂いがするのですよ。女は医官にはなれないのに。変だとは思いませんか?」
「そうね。」
「もしかしたら、誰かに薬を盛ったのかも、魖賢妃の差し金で。」
「まあ、怖い。」
女官達は意地汚く笑っている。
「そう。」
榮氏は興味がなさそうに答えた。勿論、見た目だけだが。
「榮妃様も、お気をつけ下さいましね。」
えぇ、と榮氏。
「魖家なんですから。」
その台詞の意味が分かるのに、どれだけの時間を要したか、分かるだろうか。
永寧大長公主は、死なない。死んでくれない。
価値がないくせに、まだ、生きていようとする。わけが分からない。
初めて旲瑓が魖氏を訪れた際、微かにだが、衣から、変わった香が薫った。すぐに、永寧大長公主の物だと分かった。
(永寧大長公主は、何がしたいのだろうか。)
あの女は、目障りだ。
現在の後宮で、一番身分高い女は、永寧大長公主である。だが、魖氏からすれば、どんなに繕えど、下女珞燁だ。
『叔母様。珞燁を殺してしまっては、我々にも危害はありますよ。』
『構わないわ。兄さんがなんとかしてくれるだろうし。』
魖氏の父で、太后の兄は、人に媚びるのがお得意だ。今の地位も、先帝に胡麻をすって手に入れたらしい。どうも、威厳に欠ける。
『媚を売るのは、唯一無二の取り柄だもの。』
魖太后は笑った。
魖賢妃-名を、闉黤と云う-の宮である、承香宮では、一人の女官が、せっせと薬草をすり潰していた。
「どう?できそうかしら。」
魖家から連れて来た女で、妾の子だった。妃にはなれなかったが、それなりに使えるので、女官として上がった。
「闉黤様、もう少しで出来ると思います。」
女官は笑った。
魖氏は女官服に目を移した。
「薬草は、貴方が拾って来たのかしら。」
「違いますよ、闉黤様。」
女官が着ていた青い襖裙は、汚れていた。青、ということは、女官の中では中位のはず、泥に塗れることはしないのに。
「まぁ、良いわ。成功したら、貴女もお妃にして、あげるわ。」
女官は目を見開き、閏るとさせた。
「有難う御座います、闉黤様!」
女官は笑顔のまま、薬草、追加採ってきますと出て行った。
(これで死に体になってくれるのかしら。)
すり潰された薬草を見て、魖氏は考えた。
まぁ、良い。
魖太后も喜んでくれるだろう。
けらけらと高笑いした。
(あれは何かしら。)
後宮を散歩していた榮氏は、倒れている女を見つけた。青い襖裙。女官だろう。その周りには、赤い襖裙を着た上位の女官が囲んでいた。
(女官虐め?後宮ではよくある話だけれど。)
青い襖裙の女は、頬を押さえて身動きもしない。
「何をしているの?」
気にしなくても良いのに、つい、声をかけてしまった。
「こ、これは榮淑妃様、ご機嫌麗しゅう。」
全員、膝をついた。
「如何したの?この女官は何か粗相をしたのかしら。」
本題だ。
「そういう訳じゃありません。」
恐る恐る、一人が言った。
「この女官は、魖家の人間です。」
ほう、と相槌を打つ。
「おかしいと思いませんか?この女官、医官でもないのに、薬の匂いがするのですよ。女は医官にはなれないのに。変だとは思いませんか?」
「そうね。」
「もしかしたら、誰かに薬を盛ったのかも、魖賢妃の差し金で。」
「まあ、怖い。」
女官達は意地汚く笑っている。
「そう。」
榮氏は興味がなさそうに答えた。勿論、見た目だけだが。
「榮妃様も、お気をつけ下さいましね。」
えぇ、と榮氏。
「魖家なんですから。」
その台詞の意味が分かるのに、どれだけの時間を要したか、分かるだろうか。
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