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第四章
278『オークション会社』
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魔人領首都のオークションは、他国からもわざわざ競売に参加する富裕層の客が多い、ひとつの社交界とも言える。
今回アンナリーナが紹介されたオークション会社は【ウェンライト】と言って、その中でも特に格の高い事で有名だ。
そこのオーナーや支配人が直々対応するなど、ギルドマスターのヤルディンの力はアンナリーナが思っている以上のようだ。
アンナリーナが気を引き締めている頃【ウェンライト】の上層部の面々も緊張していた。
たった今、彼らの目の前に現れたのは、屈強なボディガードを連れた小柄な少女だった。
……とてもオークション会社に用事があるようには見えない、パッと見はそう判断してしまいそうだが、この3人は一瞬で囚われてしまった。
艶やかな光沢のアラクネ絹は、季節に合わせて厚手に織られている。
そこにこの世界では見られない色鮮やかな色彩で染められた、花、花、花。
地色は薄いクリーム色で、そこに極彩色の花が咲き乱れていた。
襟は立襟、アンナリーナの細い身体にぴったりと沿ったデザインで踝までの丈で、両脇には腰まで大胆にスリットが入っている。
中には黒いレギンス。刺繍の入った踵の低いシューズを履いていた。
守護魔法が付与されているだろう翡翠のネックレスにブレスレット。
ピアスのダイヤは見たことのないカットが施され、同じ宝石に見えない。
アンナリーナはその全身に身につけているものをそのままオークションに出したくなるほどの品だった。
「今回、冒険者ギルドのヤルディンからくれぐれもよろしく、と言われています。
リーナ様が出品されるものが特別だと」
「ええ……
実際に見て頂いた方が良いかもしれませんね。
どこか広い場所はありませんか?」
オークションに出品される品なので、建物の中にいくつかある、オークション会場のうち一番広いステージを持つ会場にやってきたアンナリーナはその場所を確かめるように見回した。
「ここなら大丈夫そうですね」
この世界では大型の魔獣の素材を扱う事もあるので、前世でのそれとは比べものにならないくらい広いステージが用意されていた。
オークションは一種の娯楽だ。
実際に競る代理人や客本人の席だけでなく、観客席まで設けてある。
アンナリーナは、まるで芝居の舞台のようだと思っていた。
「ではリーナ様、お願いできますか?」
「はい!
私が今回出品したいのは、これです!!」
アンナリーナのインベントリから、音もなく現れたのは、水色の肌も瑞々しい中位竜【水竜】だった。
当然の事ながら、男たちは言葉もない。
【迷宮都市】のダンジョン、第100階層で屠った水竜の成体です。
今は時間経過のない私の収納魔法に入れていますが、実際に納品するときは劣化防止の結界で囲むつもりです」
エッケハルトすら何も言えず、ただただ口を開けたり閉じたりするだけだった。
今回アンナリーナが紹介されたオークション会社は【ウェンライト】と言って、その中でも特に格の高い事で有名だ。
そこのオーナーや支配人が直々対応するなど、ギルドマスターのヤルディンの力はアンナリーナが思っている以上のようだ。
アンナリーナが気を引き締めている頃【ウェンライト】の上層部の面々も緊張していた。
たった今、彼らの目の前に現れたのは、屈強なボディガードを連れた小柄な少女だった。
……とてもオークション会社に用事があるようには見えない、パッと見はそう判断してしまいそうだが、この3人は一瞬で囚われてしまった。
艶やかな光沢のアラクネ絹は、季節に合わせて厚手に織られている。
そこにこの世界では見られない色鮮やかな色彩で染められた、花、花、花。
地色は薄いクリーム色で、そこに極彩色の花が咲き乱れていた。
襟は立襟、アンナリーナの細い身体にぴったりと沿ったデザインで踝までの丈で、両脇には腰まで大胆にスリットが入っている。
中には黒いレギンス。刺繍の入った踵の低いシューズを履いていた。
守護魔法が付与されているだろう翡翠のネックレスにブレスレット。
ピアスのダイヤは見たことのないカットが施され、同じ宝石に見えない。
アンナリーナはその全身に身につけているものをそのままオークションに出したくなるほどの品だった。
「今回、冒険者ギルドのヤルディンからくれぐれもよろしく、と言われています。
リーナ様が出品されるものが特別だと」
「ええ……
実際に見て頂いた方が良いかもしれませんね。
どこか広い場所はありませんか?」
オークションに出品される品なので、建物の中にいくつかある、オークション会場のうち一番広いステージを持つ会場にやってきたアンナリーナはその場所を確かめるように見回した。
「ここなら大丈夫そうですね」
この世界では大型の魔獣の素材を扱う事もあるので、前世でのそれとは比べものにならないくらい広いステージが用意されていた。
オークションは一種の娯楽だ。
実際に競る代理人や客本人の席だけでなく、観客席まで設けてある。
アンナリーナは、まるで芝居の舞台のようだと思っていた。
「ではリーナ様、お願いできますか?」
「はい!
私が今回出品したいのは、これです!!」
アンナリーナのインベントリから、音もなく現れたのは、水色の肌も瑞々しい中位竜【水竜】だった。
当然の事ながら、男たちは言葉もない。
【迷宮都市】のダンジョン、第100階層で屠った水竜の成体です。
今は時間経過のない私の収納魔法に入れていますが、実際に納品するときは劣化防止の結界で囲むつもりです」
エッケハルトすら何も言えず、ただただ口を開けたり閉じたりするだけだった。
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