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第四章

274『ドラゴン』

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 アンナリーナたちが100階層に足を踏み入れた時、今までと違う空気に足を止めた。

「熊さん」

「ああ、何かとてつもない奴がいるな」

「おそらく竜……ワイバーンなどの下位竜もいるが、この気配は上位竜。
 それも複数いると思う」

 普段、アンナリーナとテオドールの遣り取りに口を挟む事のないセトが分析した。

「ドラゴン?
 このダンジョンにドラゴンがいるなんて聞いてないわよ」

 何年も人の手が入らなかった下層から上がって来たのだろうか。
 本来、冒険者にとって脅威としかならないドラゴンであるがアンナリーナは違う。
 瞳をキラキラと輝かせて、鼻息が荒い。

「リーナ、何を考えているのかわからんでもないが、無茶はするな」

「うん、大丈夫」

 そうしてアンナリーナたちは100階層に臨んだのだ。


 100階層ともなると、所謂雑魚と言われる魔獣でもそれなりのレベルのものが出てくる。
 今回、地上はテオドールの担当だったのだが小型の地竜に手を焼いた。
 ヒュドラなどはツァーリやアラーニェに任せ、遊撃であるネロやイジなども加わって、アンナリーナが思う存分暴れられるようサポートに徹した。
 セトはアンナリーナとともに空中を駆けた。
 そのレーザーで急所を貫かれたワイバーンがボトボトと地上に落ちていく。
 アンナリーナはと言えば【飛行】を使って飛び回り、ドラゴンを【結界】で囲ん【真空】で屠っていく。
 そして空中で瞬時にインベントリに収納する。これの繰り返しで3日間、夢中で狩りを行ったのだ。


「と、言うことです」

 長いようで短い報告を終え、ネイサンを前にアンナリーナは平然と紅茶の入ったカップを持ち上げた。
 その気になれば貴族然とした所作を操るアンナリーナはすこぶる機嫌が良さそうだ。

「それで、オークションについてだが」

「そうですね。
 ご忠告通り、首都に戻ってから出品する事にします。
 あちらでは私はクラウヘルト魔導学院の生徒ですし、その方面と相談します」

「当ギルドにもいくつか卸してもらえれば嬉しいのだが?」

 アンナリーナは少し考える。

「ワイバーンや下位竜ならば」

 商談はまとまったようだ。
 この商いはアンナリーナとギルド双方に利益をもたらすだろう。



 3日後、アンナリーナたちはまたダンジョンに戻ってきていた。
 その用があるのは100階層のみ。
 前回以上に飛ばし、一泊を挟んで到着したそこは、アンナリーナにとって宝の山のような場所だった。

「熊さん、皆。
 私、今回どうしても欲しいものがあるの。
 それが手に入るまで粘るつもりだからよろしくね」

 テオドールは何となく嫌な予感がする。
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