魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第四章

248『精霊王と唐揚げ』

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「うふふ、大漁、大漁!」

 ラインケトルの群れに行き当たって、アンナリーナは【血抜き】でどんどん屠っていく。
 狩りと下処理を同時に行える【血抜き】は、アンナリーナにとってなくてはならないスキルだ。
 今は、もはや作業となったラインケトル討伐も、美味しい料理のためだと力が入る。

「マスターって、案外容赦がないのだな」

 心無しか、イェルハルドの口許が引きつっている。
 目の前の、大量殺戮問題ないとばかりの、己が主に若干引いているのかもしれない。

「そんな事言わずに~
 鳥料理、きっと美味しいよ?
 ……精霊って、食事できるの?」

「遠慮なくいただきますけどね。
 まだ狩るつもりか?」

 すべてのラインケトルをアイテムバッグにしまい、アンナリーナは探査で引っかかった次の獲物に向かって走り出した。
 お目付役として付いてきたテオドールも呆れている。

「まぁ、ストレスが溜まっていたんだな、きっと」

 もう、思うようにやらせるつもりのようだ。


 まずは一羽解体してもらって、チキン(ラインケトル)ソテーを作ってみる。
 初めて食べてみたラインケトルはジューシーで、臭み等もなく、上質な鳥肉である。
 これなら色々な料理が出来そうだ。


 アンソニーに手伝ってもらって、アンナリーナは唐揚げを揚げていた。

「見たことのない料理だな。
 そして凄くよい匂いがする。
 ……マスター、食べていいか?」

「もうちょっと待って。
 今、テーブルの準備をするから」

 馬車の前に出された魔導コンロの前、アラーニェの趣味のフリフリサロンエプロンをしたアンナリーナが振り向いてそう言った。
 インベントリから取り出した長テーブルに食器類やパンを取り出していく。

「唐揚げか。
 久しぶりに揚げたてが食べられそうだ」

 この旅は完全にプライベートなので、過ごしすぎなければ飲酒も許されている。

「リーナ、ビール……」

「うん、ここに出しておくね」

 プレミアムな瓶ビールが5本、8本と並べられていく。
 それを見たイェルハルドが飛んできた。

「マスター、これはなんだ?酒か?」

 料理にもビールにも興味津々な西風の精霊王だ。

「ヒトの作る酒は中々美味いものがある。
 これは見たことのない容れ物だな」

 ビール瓶を持ち上げ中身を透かし見ている。
 その姿があまりにも物欲しそうなので、アンナリーナはテオドールに合図した。

「まぁ、精霊王殿。一杯行きましょうや」

 テオドールの手にはガラスのジョッキが2つ。
 指先だけで栓を抜き、ジョッキに注ぐ。泡の割合も慣れたものだ。

「まずは、飲んでみてくれ」

 差し出されたジョッキはキンキンに冷えている。
 イェルハルドは一口、口をつけて……あとは一気に流し込んだ。

「何だ、この酒は?!
 神の飲み物なのか?」

 空になったジョッキを呆然と見つめるイェルハルドは言葉を続ける事が出来ない。

「ビールにはこれが合うんだよ」

 アンナリーナの元から揚げたての唐揚げを持ってきたテオドールが、1つ摘み上げて口に放り込んだ。

「美味いぜ?
 ただ熱いから口の中を火傷しないよう気をつけて」

 さきほどからよい匂いをさせていた【唐揚げ】と言うものを摘み、少し齧ってみた。

「!!」

 口内に溢れる肉汁。
 原則食物を必要としない精霊だが、食べることは出来る。
 そして今、その事にこれほど感謝したことはなかった。
 ……至福の瞬間。
 今この時をそう言わねば何を言うというのだ。

「我もマスターと一緒に暮らす」

 暴挙とも言うべき発言である。
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