478 / 577
第四章
238『魔導ギルド』
しおりを挟む
アンナリーナたちが次に向かった【魔導ギルド】は、冒険者ギルドからさほど離れていない、市場を挟んだ向こう側だった。
「ほえ~ 立派だね」
冒険者ギルドはどちらかと言うと質実剛健、華美さを抑えた造りだが、こちらは中世の瀟洒な貴族の館を思い出させる造りだ。
冒険者ギルドと違ってポーチがあり、その入り口の左右に番兵が立っている。
ネロが先に立ち、扉を開けようとすると、番兵が両開きの扉をサッと開けてくれた。
「ようこそ、いらっしゃいませ」
魔法金属製の鎧をつけた番兵が軽く会釈してくれる。
「こんにちは。どうもありがとう」
やはり普段から接するのがインテリ層だからだろう。
冒険者ギルドでは考えられない対応だ。
……実は、アンナリーナには思ってもみなかった理由があるのだが。
建物の中に一歩足を踏み入れた瞬間、その設えの上品さに息を飲む。
白い漆喰の壁には所々壁から生えているかのような女性の像が並び、彼女らが持つ壺から注がれる金粉は床につく瞬間に消えてしまう。
なんと不思議な仕掛けだろう。
他には、宝玉で作られた花がホールを飾っていた。
「ほお~ 豪華だね」
「お褒めいただきありがとうございます。
当方への本日のご用件、承けたまわらせていただきます」
いつのまにか側に来ていた、水色の髪のエルフ女性がにっこりと笑う。
実はアンナリーナは、このエルフ女性がすべからく皆に親切なのだと思っているが、それは違う。
彼女はアンナリーナたち……とりわけアンナリーナから漏れ出す魔力に敬意を表したのだ。
魔法職にとっては魔力がすべてだ。
自然、魔力の高いものは尊敬されるし、そうでないものは高位のものを尊敬する。
今、この魔導ギルドに入ってきた2人は彼女が今まで感じたことがないような魔力を漂わせている。
何しろ魔力が溢れて、髪や瞳の色に反映されている者など初めて見たのだ。
「ありがとう。
この紹介状をお願いします」
アンナリーナに渡された封筒を見て顔つきが変わったエルフ女性は軽く頷くと、すぐに踵を返して奥に引っ込んでいった。
これは冒険者ギルドのマスターから魔導ギルドのマスターへの親書である。
「この魔導ギルドでも登録しなきゃ駄目よね。
もちろんネロも一緒にね。
……だってあっちの分野では、今では私以上のエキスパートだものね」
黒地に鈍銀の織り柄のローブにフードを深く被り、今日は骸骨をモチーフにした面をつけているネロ。
そんな、見るからに怪しい姿だが、ここ魔導ギルドでは気に留める者はいない。
同時に、一見成人していないように見えるアンナリーナにも違和感を感じるものは少ない。
「リーナ嬢、ネロ殿、どうぞこちらへ」
アンナリーナたちが今までいた、広いホールの中央に大きく円を描いた大理石のカウンター。
そこに等間隔に並ぶ受付にはエルフの男女が座っている。
その受付カウンターの奥にある通路を抜けると階段があった。
そこから先は限られたものしか通れない、特別な通路だ。
「どうぞ。この扉の向こうにギルドマスターがおられます」
アンナリーナが頷いて、扉に手をかけようとした時、ふいに扉が開いて声が聞こえてきた。
「ようこそ、お客人。
わざわざきてもらって悪かったね」
そう言って手を差し出したのは、どこかで見た面影を持つ、エルフの老人だった。
「私は、この魔導ギルドの長をしているオルドメーシェ。
冒険者ギルドの長をしているフミラシェは従兄弟にあたる」
道理で見たことがある気がするはずだ。
目の前のオルドメーシェはフミラシェを少し老けさせて、瞳の色を僅かに濃くした容貌をしていた。
「さて、リーナ嬢。
あなたは “ 異邦人 ”だそうだね。
私はあなたたちのこれからの為に、ぜひ魔導ギルドの登録を勧めたいと思うのだよ」
「そうですね。
私たちもそのつもりで、今日ここにやって来たのですが、その他にお尋ねしたい……いえ、教えを乞いたく参りました」
おや、と眉尻をあげたオルドメーシェに、アンナリーナは切り出した。
「属性魔法の事です」
「ほえ~ 立派だね」
冒険者ギルドはどちらかと言うと質実剛健、華美さを抑えた造りだが、こちらは中世の瀟洒な貴族の館を思い出させる造りだ。
冒険者ギルドと違ってポーチがあり、その入り口の左右に番兵が立っている。
ネロが先に立ち、扉を開けようとすると、番兵が両開きの扉をサッと開けてくれた。
「ようこそ、いらっしゃいませ」
魔法金属製の鎧をつけた番兵が軽く会釈してくれる。
「こんにちは。どうもありがとう」
やはり普段から接するのがインテリ層だからだろう。
冒険者ギルドでは考えられない対応だ。
……実は、アンナリーナには思ってもみなかった理由があるのだが。
建物の中に一歩足を踏み入れた瞬間、その設えの上品さに息を飲む。
白い漆喰の壁には所々壁から生えているかのような女性の像が並び、彼女らが持つ壺から注がれる金粉は床につく瞬間に消えてしまう。
なんと不思議な仕掛けだろう。
他には、宝玉で作られた花がホールを飾っていた。
「ほお~ 豪華だね」
「お褒めいただきありがとうございます。
当方への本日のご用件、承けたまわらせていただきます」
いつのまにか側に来ていた、水色の髪のエルフ女性がにっこりと笑う。
実はアンナリーナは、このエルフ女性がすべからく皆に親切なのだと思っているが、それは違う。
彼女はアンナリーナたち……とりわけアンナリーナから漏れ出す魔力に敬意を表したのだ。
魔法職にとっては魔力がすべてだ。
自然、魔力の高いものは尊敬されるし、そうでないものは高位のものを尊敬する。
今、この魔導ギルドに入ってきた2人は彼女が今まで感じたことがないような魔力を漂わせている。
何しろ魔力が溢れて、髪や瞳の色に反映されている者など初めて見たのだ。
「ありがとう。
この紹介状をお願いします」
アンナリーナに渡された封筒を見て顔つきが変わったエルフ女性は軽く頷くと、すぐに踵を返して奥に引っ込んでいった。
これは冒険者ギルドのマスターから魔導ギルドのマスターへの親書である。
「この魔導ギルドでも登録しなきゃ駄目よね。
もちろんネロも一緒にね。
……だってあっちの分野では、今では私以上のエキスパートだものね」
黒地に鈍銀の織り柄のローブにフードを深く被り、今日は骸骨をモチーフにした面をつけているネロ。
そんな、見るからに怪しい姿だが、ここ魔導ギルドでは気に留める者はいない。
同時に、一見成人していないように見えるアンナリーナにも違和感を感じるものは少ない。
「リーナ嬢、ネロ殿、どうぞこちらへ」
アンナリーナたちが今までいた、広いホールの中央に大きく円を描いた大理石のカウンター。
そこに等間隔に並ぶ受付にはエルフの男女が座っている。
その受付カウンターの奥にある通路を抜けると階段があった。
そこから先は限られたものしか通れない、特別な通路だ。
「どうぞ。この扉の向こうにギルドマスターがおられます」
アンナリーナが頷いて、扉に手をかけようとした時、ふいに扉が開いて声が聞こえてきた。
「ようこそ、お客人。
わざわざきてもらって悪かったね」
そう言って手を差し出したのは、どこかで見た面影を持つ、エルフの老人だった。
「私は、この魔導ギルドの長をしているオルドメーシェ。
冒険者ギルドの長をしているフミラシェは従兄弟にあたる」
道理で見たことがある気がするはずだ。
目の前のオルドメーシェはフミラシェを少し老けさせて、瞳の色を僅かに濃くした容貌をしていた。
「さて、リーナ嬢。
あなたは “ 異邦人 ”だそうだね。
私はあなたたちのこれからの為に、ぜひ魔導ギルドの登録を勧めたいと思うのだよ」
「そうですね。
私たちもそのつもりで、今日ここにやって来たのですが、その他にお尋ねしたい……いえ、教えを乞いたく参りました」
おや、と眉尻をあげたオルドメーシェに、アンナリーナは切り出した。
「属性魔法の事です」
3
あなたにおすすめの小説
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの
山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。
玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。
エリーゼ=アルセリア。
目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。
「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」
「……なぜ、ですか……?」
声が震える。
彼女の問いに、王子は冷然と答えた。
「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」
「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」
「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」
広間にざわめきが広がる。
──すべて、仕組まれていたのだ。
「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」
必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。
「黙れ!」
シャルルの一喝が、広間に響き渡る。
「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」
広間は、再び深い静寂に沈んだ。
「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」
王子は、無慈悲に言葉を重ねた。
「国外追放を命じる」
その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。
「そ、そんな……!」
桃色の髪が広間に広がる。
必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。
「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」
シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。
まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。
なぜ。
なぜ、こんなことに──。
エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。
彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。
それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。
兵士たちが進み出る。
無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。
「離して、ください……っ」
必死に抵抗するも、力は弱い。。
誰も助けない。エリーゼは、見た。
カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。
──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。
重い扉が開かれる。
留学してたら、愚昧がやらかした件。
庭にハニワ
ファンタジー
バカだアホだ、と思っちゃいたが、本当に愚かしい妹。老害と化した祖父母に甘やかし放題されて、聖女気取りで日々暮らしてるらしい。どうしてくれよう……。
R−15は基本です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる