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第四章

232『現金調達』

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 小首を傾げたアンナリーナが見つめている。

「出しておいてなんですが、この私の作ったポーション、こちらの大陸の方に効くのでしょうか?」

 少し不安なアンナリーナに、もうすでにフル鑑定したフミラシェと、新たにやって来たエルフの鑑定士は自信を持って頷いた。
 代表で鑑定士が口を開く。

「問題ありません。
 むしろ、とても上質なポーションです。
 特にこの【魔力回復ポーション】
 こちらはこの大陸にはないものです。
 当ギルドではぜひ、リーナ嬢とお取引願いたく思います」

 横でフミラシェが頷いている。

「それは……私としてもよろしくお願いしたいのですが、それには査定が必要なのでは?
 実は……真に恥ずかしいのですが、今現在貨幣の持ち合わせがなくて……両替ができなければ素材を買い取っていただくしか手段がなくて……」

 最後は恥ずかしさのあまり、消え入るような小声になってしまう。
 その姿があまりにもかわいくて、2人のエルフは密かに萌え悶えていた。

「ご心配なさるな。
 私が立て替えておこう。
 両替は……今は正確な交換の相場がわからぬゆえ」

 フミラシェがそう言って、懐から巾着袋を取り出した。

「とりあえず、キリの良いところで金貨10枚。
 心配しないで。ちゃんと納金伝票に記載して引かせていただくので」

「では、遠慮なく。ありがとうございます。
 ……あの、それと私が調薬している他のものを置いて行くので、鑑定してもらえますか?」

 もちろん、徹夜すら歓迎して鑑定士は快諾する。
 それからアンナリーナは鑑定室に移り、主だった薬類とポーション類を取り出した。
 途端にいっぱいになった机に目を見張り、慌てて目録を作成する鑑定士。
 アンナリーナはようやく収入を得る手段が出来てホッとしていた。
 次は宿である。
 これに関してはフミラシェの秘書の女性が待ち受けていて、わざわざ案内してくれた。

「リーナ嬢、私はシャールカと申します。種族は魔人族です。
 これからリーナ嬢専属の職員になりますので、どうぞよろしくお願いします」

 にっこりと笑う妙齢の女性は、よく見れば耳が尖っている。

「こちらこそ。
 お仕事を増やしてしまってごめんなさい」

「そんな事、なんでもないわ。
 ここだけの話、フミラシェ様の補佐は退屈なの。
 リーナ嬢は重要人物ですもの。
 よろしければ町を案内させていただくわ」

「ぜひ!よろしくお願いします」

 2人はがっしりと握手した。



 夕餉を共に、と言ってきたフミラシェに断りを入れ、アンナリーナは紹介された宿に落ち着いた。
 鍵を掛け、室内に結界を張り、テントを取り出す。
 すると、茶器を持ったアラーニェが姿を表した。

「お疲れ様でした。
 お茶でも召し上がって、ゆっくりなさって下さいませ」

 アンナリーナの調合した、疲れの取れるハーブ茶の良い香りが広がる。
 ティーカップを持ち上げ、口をつける姿に微笑みを浮かべて、アラーニェはブーツの紐を解き始めた。

「お風呂の用意も出来ておりますよ。
 夕餉の前にさっぱりしてしまいましょう」

 アラーニェの手によって磨き上げられ、マッサージされる。
 あまりの気持ちよさにウトウトしてしまうアンナリーナだが、きれいに拭われていて目が覚める。
 そしてアンナリーナが留守中に新調されたナイトドレスとガウンを着け、食堂に向かった。


『主人、誰か来たようだ』

 宿の部屋に残っているセトから念話が届く。

「こんな時間に誰かしら?」

 少なくても、女性を訪ねるには良ろしからぬ時間である。
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