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第四章
228『再びの上陸』
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今、アンナリーナは再び、大陸の土を踏んだ。
この大陸の正式な名称は【ブエルネギア大陸】と言い、主に魔族とエルフ、ドワーフに獣人と稀少な種族の暮らす、いわゆる人外魔境であった所を昨今、ヒト属が交易のために入植した、雑多な種族の暮らす地である。
「リーナ、無茶は許せない」
今回、一応船に乗った記録のある4人……アンナリーナを含め、テオドール、セト、イジが転移点から姿を現した。落ち着ける拠点が定まり次第、ネロを呼び出す予定である。
「【飛行】出来るか試してみて、駄目ならセトに乗せてもらって様子を見るだけじゃん。
上空から確認しなければ、どちらの方向に進めば良いかもわからないでしょう?」
いつまでもこんな僻地でぐずぐずしていられない。
アンナリーナはステータスを確認してから【飛行】を行使した。
同時にドラゴンの羽を生やしたセトが続く。
テオドールとイジは、その場で見上げる事しか出来ない。
「【飛行】は問題なさそう」
ゆっくりと上空に上がっていったアンナリーナは、その場で360度見回して見た。
まずは自分たちがやってきた海。
海岸線からどこまでも続く大海原……島影ひとつ見えない。
そしてさらに高度を上げて、砂浜と森の海岸線を追った。
「本当に……まったく何もない所なのね。
もっと上から見ないと全体像が掴めないわ」
この場からでは、どこまでも続く大森林しか見えない。
アンナリーナはさらに上昇して、まるで航空写真のような高度から下を見下ろした。
そして、船の中で見せてもらった地図と重ね合わせて見る。
「ここまで上がるとさすがに、人が住んでいる地域がわかるわよね」
「主人」
「さて、どの方向に行けば良いかしら。
港は……不法入国がバレるからやめた方がいいわよね。
海岸線から比較的近い村か町に、遭難者として潜り込むのが、一番無難かなぁ」
「主人、まさかひとりで行くつもりではないでしょうね?」
セトの怒った声が聞こえてくる。
「その方が警戒されないでしょ?
熊さんやイジを連れていたら警戒されるだけだよ」
「主人、俺は」
「もちろんセトはアイデクセに変化してもらって、一緒にいてもらうよ。
……しかしこの森林は、魔獣の森並みに深いよね。
私たち、実はめちゃくちゃ運が悪い?」
念話でその遣り取りを聞いていたテオドールが吹き出した。
アンナリーナが選んだのはここから海岸沿いに西に向かって、普通の人間の足で3日、さらに内陸部に向かって北に2日歩いた場所にある割と大きめの町だ。
この近くにはいくつかの漁村があったが、あまりにも小さな村なので、余所者に対する危機感が強かった時のため、あえて避けたのだ。
そしてここは元々は魔族の勢力地であったのだが、今は獣人族やドワーフ、少数だがエルフも住む稀有な町だ。
今、アンナリーナはかなり緊張していた。
魔獣の森から出て、初めてモロッタイヤ村を訪れた時を思い出す。
「主人、大丈夫か?震えている」
「うん、ちょっと緊張している。
この大陸での身分証を持っていないし、ちゃんと町に入れるかどうか……
はっきり言って、ちょっと不安」
海側から伸びてきている道は、街道と言うには細すぎて、まるで小径のようだ。
ようやく馬車が通れる、車輪の轍が通り道となっている、そんな道だ。
そこをアンナリーナがトコトコと歩いている。
もうすでに町を囲む高い石壁が見えて来ていて、門に至る道に馬車の姿もあった。
「ドキドキするね」
この大陸の正式な名称は【ブエルネギア大陸】と言い、主に魔族とエルフ、ドワーフに獣人と稀少な種族の暮らす、いわゆる人外魔境であった所を昨今、ヒト属が交易のために入植した、雑多な種族の暮らす地である。
「リーナ、無茶は許せない」
今回、一応船に乗った記録のある4人……アンナリーナを含め、テオドール、セト、イジが転移点から姿を現した。落ち着ける拠点が定まり次第、ネロを呼び出す予定である。
「【飛行】出来るか試してみて、駄目ならセトに乗せてもらって様子を見るだけじゃん。
上空から確認しなければ、どちらの方向に進めば良いかもわからないでしょう?」
いつまでもこんな僻地でぐずぐずしていられない。
アンナリーナはステータスを確認してから【飛行】を行使した。
同時にドラゴンの羽を生やしたセトが続く。
テオドールとイジは、その場で見上げる事しか出来ない。
「【飛行】は問題なさそう」
ゆっくりと上空に上がっていったアンナリーナは、その場で360度見回して見た。
まずは自分たちがやってきた海。
海岸線からどこまでも続く大海原……島影ひとつ見えない。
そしてさらに高度を上げて、砂浜と森の海岸線を追った。
「本当に……まったく何もない所なのね。
もっと上から見ないと全体像が掴めないわ」
この場からでは、どこまでも続く大森林しか見えない。
アンナリーナはさらに上昇して、まるで航空写真のような高度から下を見下ろした。
そして、船の中で見せてもらった地図と重ね合わせて見る。
「ここまで上がるとさすがに、人が住んでいる地域がわかるわよね」
「主人」
「さて、どの方向に行けば良いかしら。
港は……不法入国がバレるからやめた方がいいわよね。
海岸線から比較的近い村か町に、遭難者として潜り込むのが、一番無難かなぁ」
「主人、まさかひとりで行くつもりではないでしょうね?」
セトの怒った声が聞こえてくる。
「その方が警戒されないでしょ?
熊さんやイジを連れていたら警戒されるだけだよ」
「主人、俺は」
「もちろんセトはアイデクセに変化してもらって、一緒にいてもらうよ。
……しかしこの森林は、魔獣の森並みに深いよね。
私たち、実はめちゃくちゃ運が悪い?」
念話でその遣り取りを聞いていたテオドールが吹き出した。
アンナリーナが選んだのはここから海岸沿いに西に向かって、普通の人間の足で3日、さらに内陸部に向かって北に2日歩いた場所にある割と大きめの町だ。
この近くにはいくつかの漁村があったが、あまりにも小さな村なので、余所者に対する危機感が強かった時のため、あえて避けたのだ。
そしてここは元々は魔族の勢力地であったのだが、今は獣人族やドワーフ、少数だがエルフも住む稀有な町だ。
今、アンナリーナはかなり緊張していた。
魔獣の森から出て、初めてモロッタイヤ村を訪れた時を思い出す。
「主人、大丈夫か?震えている」
「うん、ちょっと緊張している。
この大陸での身分証を持っていないし、ちゃんと町に入れるかどうか……
はっきり言って、ちょっと不安」
海側から伸びてきている道は、街道と言うには細すぎて、まるで小径のようだ。
ようやく馬車が通れる、車輪の轍が通り道となっている、そんな道だ。
そこをアンナリーナがトコトコと歩いている。
もうすでに町を囲む高い石壁が見えて来ていて、門に至る道に馬車の姿もあった。
「ドキドキするね」
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