魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第四章

196『依頼』

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「そもそも、エンゲルブレクトさんはどうしてここに?」

 アンナリーナがカップをソーサーに戻してテーブルに置く。

「うちのクランの連中が潜っているのは知っていてくれてると思うが、実は当初の予定ではもう戻っているはずなのだ。
 アシードで合流するつもりで王都から来ていたのだが、連絡がないのでここまで押しかけて来たのだが……」

「そうですか……
 私たちは5階層までしか攻略してませんが、帰りがけに6階層を覗くだけ覗いてきましたが、気配はありませんでした。おそらく、もっと下層まで行かれたのでは?」

「……無理をするなとあれほど言って聞かせていたというのに」

「5階層では “ 湧き ”がありましたし、ひょっとしたらそれに近い状況なのかもしれません」

 黙り込んだエンゲルブレクトは眉間に深い皺を刻んで、考え込んでいる。

「君たちは、またダンジョンにもぐるつもりはないだろうか?」

 最初から、黙って聞いていたテオドールのこめかみがピクリと動く。
 アンナリーナの後ろに立っていた、セトとイジからも不穏なオーラが立ち昇った。

「それはどういう意味です?」

 見かけはとても成人しているとは思えないアンナリーナだが、今この時だけは老獪な魔女のおもむきを醸し出している。

「私は【ジャスティスハート】の副クランマスターとして、あなたに依頼したい。
 どうか、うちのクラン員たちの捜索に手を貸して欲しい」

「ちょっと待ってくれ!
 俺たちもさっき戻ってきたばかりなんだ。そんなにすぐに」

「熊さん!」

 珍しく言葉を荒げて、テオドールの言葉を遮る。

「……わかりました。
 その依頼、お受けしましょう」

 責めるような目を向けてきたセトとイジを抑えて、アンナリーナは立ち上がった。

「では、早速出発しましょうか」

 行くのなら早い方が良いと決心したアンナリーナは、そそくさとテーブルを片付け始めた。

「私も同行させて欲しい」

 ちらりとエンゲルブレクトを見たアンナリーナが首をすくめて見せた。

「お見かけしたところ、装備が十分とは思えませんが」

 エンゲルブレクトのサーコートの下には、鎧すら着けていない。
 腰に剣は佩いているが、その手の手袋は儀礼用のものだ。

「装備は馬車に用意してある。
 もちろん護衛たちも……」

 アンナリーナはそこで言葉を遮った。
 これだけは譲れない事だ。
 彼らのレベルは低すぎる。

「申し訳ないけど、あの人たちは置いて行って。そうでなければこの依頼は受けられないわ」

 従者兼護衛の3人は殺気立ったが、アンナリーナは素知らぬふりでいる。

「何とか1人だけでも、どうにかならないだろうか」

「……」

 アンナリーナを見る、テオドールとセト、そしてイジ。

「まあ、お世話係もいるわよね。
 エンゲルブレクト様の責任で連れて行くのを認めますわ。
 そのかわり、何があっても責任を問わないて下さい」

「っ、承知した」

「では、1時間後に出発します」

 踵を返したアンナリーナに、セトとイジが続く。
 そしてテオドールが振り向きざまに言った。

「リーナの足を引っ張るようなことをしたら、俺が許さない。
 その坊やにも充分言い聞かせとけ」

 エンゲルブレクトも副クランマスターを務めるほどの逸材だが、テオドールとて百戦錬磨の怪物だ。
 その彼の強い眼差しに、ゾクリと寒気をもよおし青ざめるエンゲルブレクトは置き去りにされてしまう。

「エンゲルブレクト様」

「急いで装備を着けよう。
 おまえたちはクラン本部と連絡を取るように」

 萌葱色のサーコートが翻った。

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