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第四章
183『待ち伏せ』
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アシードを出発して、ひと月ほど。
アンナリーナは内陸を順調に旅していた。
街道沿いの衛星都市から辺境に向かう道にそれ、田舎道を進む。
今回、アンナリーナは商家の跡取りとして見聞を広げる為の旅をしている、ということにしていた。
そんなとき訪れたある村で、初めて偽者たちらしきものの情報を聞き込んだアンナリーナたちは作戦会議を行う。
「常識で考えて、この先道なりに進みながら “ 商売 ”していくだろうから、どこかで追い抜いて接触する?」
「あちらも宿泊するんだろう。
追いついて、強襲するか?
出来れば村の外でやっつけた方がいいだろう」
捕まえることしか考えていなかったアンナリーナだったが、その時は人目を避けた方がいい事に考え及ばなかった。
「そうだね。
……聞くところによると4人組だそうだし、冒険者としては大したレベルじゃなさそうだよね」
「どうせおまえのことだから、サクッと殺っちまうんだろ」
「そうできれば簡単なんだけどね~」
大人の都合で、なるべく生かしたまま憲兵隊に引き渡したいものだ。
アンナリーナたちは村々を巡り、着々と目標に近づいていった。
そしてある日、ようやく目標に追いついたアンナリーナたちは、偽者たちの動向を探っていた。
アンナリーナたちが、村に一軒しかない宿屋に落ち着いた頃、偽者たちは村長の家で歓待されていた。
その賑やかさは宿にまで聞こえてきて、それとなく聞き込むことは簡単だった。
それに、こういった田舎の宿屋の女将は話好きである。
少し話の矛先を向けると、あとは勝手に喋ってくれた。
「この村にはギルドも薬屋も無くて、雑貨屋が一軒あるだけなんです。
その雑貨屋の主人も最近は年のせいか、店を開けたり開けなかったりで。
そんな時にあの薬師様は旅人の為に、と仰って特別にうちに卸して下さったのです」
感激した様子でカウンターの奥の棚に並べられた瓶を指し示す女将。
アンナリーナがざっと鑑定したところ、回復薬の回復量はわずか50。
ポーション瓶に入っていたのは回復薬ですら無く、それらしく見える水。
あと、解熱剤や鎮痛剤もあったがそれも薄められていた。
その現状に、アンナリーナは顔に出さずに、はらわたを煮えくりかえらせている。
「そ、それは、よかったですね。
このあたりでは、やはり手に入りにくいものですものね」
「そうなんです。本当に幸運でした」
喜びに破顔する女将に心の中で詫びながら、アンナリーナたちは部屋に向かうために階段を上がっていく。
アンナリーナたちは早朝出発し、一本道を村から離れた、人目につかない場所で、偽者たちの幌馬車を待ち受けていた。
「土煙が見えてきたね。
さあ、馬車で通せんぼして、止まってもらいましょう」
見るからに金のかかった旅装をしたアンナリーナとアラーニェが、困りきった表情を浮かべた芝居をする。
テオドールとガムリは馬車の下を覗き込んでいる。
そこに通りかかった幌馬車が止まり、御者が降りてきた。
「どうした? お嬢さん」
幌馬車の中からも3人、女が1人と男が2人顔を出した。
すぐに、身長2m近い、でっぷりと太った、見るからに冒険者な男が降りてきた。
『こいつが熊さんの役をしてるのね』
念話で話しかけられたアラーニェは、露骨にその美しい顔を歪めた。
「通行のお邪魔をして、申し訳ございません。馬車に不具合があるようで……すぐに道の脇に退かせます」
アンナリーナの、育ちの良さを感じさせる受け答えに、女ともう1人の男が目配せし合っていた。
アンナリーナは内陸を順調に旅していた。
街道沿いの衛星都市から辺境に向かう道にそれ、田舎道を進む。
今回、アンナリーナは商家の跡取りとして見聞を広げる為の旅をしている、ということにしていた。
そんなとき訪れたある村で、初めて偽者たちらしきものの情報を聞き込んだアンナリーナたちは作戦会議を行う。
「常識で考えて、この先道なりに進みながら “ 商売 ”していくだろうから、どこかで追い抜いて接触する?」
「あちらも宿泊するんだろう。
追いついて、強襲するか?
出来れば村の外でやっつけた方がいいだろう」
捕まえることしか考えていなかったアンナリーナだったが、その時は人目を避けた方がいい事に考え及ばなかった。
「そうだね。
……聞くところによると4人組だそうだし、冒険者としては大したレベルじゃなさそうだよね」
「どうせおまえのことだから、サクッと殺っちまうんだろ」
「そうできれば簡単なんだけどね~」
大人の都合で、なるべく生かしたまま憲兵隊に引き渡したいものだ。
アンナリーナたちは村々を巡り、着々と目標に近づいていった。
そしてある日、ようやく目標に追いついたアンナリーナたちは、偽者たちの動向を探っていた。
アンナリーナたちが、村に一軒しかない宿屋に落ち着いた頃、偽者たちは村長の家で歓待されていた。
その賑やかさは宿にまで聞こえてきて、それとなく聞き込むことは簡単だった。
それに、こういった田舎の宿屋の女将は話好きである。
少し話の矛先を向けると、あとは勝手に喋ってくれた。
「この村にはギルドも薬屋も無くて、雑貨屋が一軒あるだけなんです。
その雑貨屋の主人も最近は年のせいか、店を開けたり開けなかったりで。
そんな時にあの薬師様は旅人の為に、と仰って特別にうちに卸して下さったのです」
感激した様子でカウンターの奥の棚に並べられた瓶を指し示す女将。
アンナリーナがざっと鑑定したところ、回復薬の回復量はわずか50。
ポーション瓶に入っていたのは回復薬ですら無く、それらしく見える水。
あと、解熱剤や鎮痛剤もあったがそれも薄められていた。
その現状に、アンナリーナは顔に出さずに、はらわたを煮えくりかえらせている。
「そ、それは、よかったですね。
このあたりでは、やはり手に入りにくいものですものね」
「そうなんです。本当に幸運でした」
喜びに破顔する女将に心の中で詫びながら、アンナリーナたちは部屋に向かうために階段を上がっていく。
アンナリーナたちは早朝出発し、一本道を村から離れた、人目につかない場所で、偽者たちの幌馬車を待ち受けていた。
「土煙が見えてきたね。
さあ、馬車で通せんぼして、止まってもらいましょう」
見るからに金のかかった旅装をしたアンナリーナとアラーニェが、困りきった表情を浮かべた芝居をする。
テオドールとガムリは馬車の下を覗き込んでいる。
そこに通りかかった幌馬車が止まり、御者が降りてきた。
「どうした? お嬢さん」
幌馬車の中からも3人、女が1人と男が2人顔を出した。
すぐに、身長2m近い、でっぷりと太った、見るからに冒険者な男が降りてきた。
『こいつが熊さんの役をしてるのね』
念話で話しかけられたアラーニェは、露骨にその美しい顔を歪めた。
「通行のお邪魔をして、申し訳ございません。馬車に不具合があるようで……すぐに道の脇に退かせます」
アンナリーナの、育ちの良さを感じさせる受け答えに、女ともう1人の男が目配せし合っていた。
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