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第四章
157『検証』
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彼らの隊商は本当にたまたま、アルファ・ケンタウリを目前とした最後の村で宿泊する事が出来ず、さらに村の中に入ることもできなかったので野営する事になったらしい。
「どうして村に入れてもらえなかったの?」
「もうすでに、宿に泊まれない旅人を受け入れていっぱいだと言われたんだ」
隊商の、比較的前の方の馬車を護衛していたメイルという冒険者が、そう説明した。
村の敷地内の野営に適した場所をすべて解放していたそうだが、それもいっぱいだったようだ。
アンナリーナは数日前に立ち寄った村の様子を思い出して、そんなものだろうと、考えを流した。
「それであの野営地で野営することになったのね」
そこでバルトリが頷いた。
隊商の商人たちが集まり、翌日の予定を変更すべきか話し合いを持ち、休むためにそれぞれのテントに戻ったところ襲撃されたそうだ。
「一体、何が起きたかわからなかった。突然、爆発があって隣のテントが吹っ飛び、私も吹き飛ばされたんだ。
その時はどうにか這い出す事が出来たが、仲間たちと合流しようとしていたのだが……それから先は記憶がない」
恐らくその時に攻撃を受けたのだろう。
今回の襲撃は特徴的で、初期の攻撃はすべて魔法職によるものだ。
「俺もその時の爆発に巻き込まれて意識を失ったようだ」
ジルがそう言うと、それまで心ここに在らずといった様子だった男が口を開いた。
「俺はサリトナー、この5人の中では比較的後の方まで意識があったと思う。
魔法職の奴は1人、黒いローブに仮面をつけていた。そして剣を持った盗賊が10人くらい。そいつらも目だけ出した布のマスクをしていて符号のような言葉しか発していなかった」
これは言葉の方言などを知られないようにそうしているのだろう。
ずいぶんと細かい。
「護衛はほとんどがやられた。
……雇い主だった商人の方たちやその側仕えの連中は縛り上げられて連れて行かれちまった」
サリトナーが、悔しそうに唇を噛み締める。
「魔法が相手なんだもの。
遠距離攻撃に対抗するすべはなかったと思う。あなた達はこれからアルファ・ケンタウリに行き憲兵に証言する事によって、盗賊団逮捕に貢献できるんです」
アンナリーナはすでに昨夜のうちから探索を広げて不審な集団を探していたが、かんばしくない。
盗賊団と拉致された旅人たちを合わせると、かなりの人数になるはずなのに、相当広範囲に広げても引っかかるものがない。
だった1日、人質を抱えてそう遠くに行けるはずがないのに、アンナリーナは不思議でしょうがなかった。
「あなたたちは助かったんです。
ほとんど丸一日放置されていて、本当に運が良かった。
特にバルトリさんはかなり重篤な状態だったのですよ。
皆さん、しばらく造血剤は欠かさないで下さいね」
「あの、今更だがあんたは一体……」
「ジルさんに名乗っていたので忘れてました。
私はリーナ、旅の薬師です」
「それでポーションがポンポン出てくるのか……」
ジルが納得したように呟いている。
「どうして村に入れてもらえなかったの?」
「もうすでに、宿に泊まれない旅人を受け入れていっぱいだと言われたんだ」
隊商の、比較的前の方の馬車を護衛していたメイルという冒険者が、そう説明した。
村の敷地内の野営に適した場所をすべて解放していたそうだが、それもいっぱいだったようだ。
アンナリーナは数日前に立ち寄った村の様子を思い出して、そんなものだろうと、考えを流した。
「それであの野営地で野営することになったのね」
そこでバルトリが頷いた。
隊商の商人たちが集まり、翌日の予定を変更すべきか話し合いを持ち、休むためにそれぞれのテントに戻ったところ襲撃されたそうだ。
「一体、何が起きたかわからなかった。突然、爆発があって隣のテントが吹っ飛び、私も吹き飛ばされたんだ。
その時はどうにか這い出す事が出来たが、仲間たちと合流しようとしていたのだが……それから先は記憶がない」
恐らくその時に攻撃を受けたのだろう。
今回の襲撃は特徴的で、初期の攻撃はすべて魔法職によるものだ。
「俺もその時の爆発に巻き込まれて意識を失ったようだ」
ジルがそう言うと、それまで心ここに在らずといった様子だった男が口を開いた。
「俺はサリトナー、この5人の中では比較的後の方まで意識があったと思う。
魔法職の奴は1人、黒いローブに仮面をつけていた。そして剣を持った盗賊が10人くらい。そいつらも目だけ出した布のマスクをしていて符号のような言葉しか発していなかった」
これは言葉の方言などを知られないようにそうしているのだろう。
ずいぶんと細かい。
「護衛はほとんどがやられた。
……雇い主だった商人の方たちやその側仕えの連中は縛り上げられて連れて行かれちまった」
サリトナーが、悔しそうに唇を噛み締める。
「魔法が相手なんだもの。
遠距離攻撃に対抗するすべはなかったと思う。あなた達はこれからアルファ・ケンタウリに行き憲兵に証言する事によって、盗賊団逮捕に貢献できるんです」
アンナリーナはすでに昨夜のうちから探索を広げて不審な集団を探していたが、かんばしくない。
盗賊団と拉致された旅人たちを合わせると、かなりの人数になるはずなのに、相当広範囲に広げても引っかかるものがない。
だった1日、人質を抱えてそう遠くに行けるはずがないのに、アンナリーナは不思議でしょうがなかった。
「あなたたちは助かったんです。
ほとんど丸一日放置されていて、本当に運が良かった。
特にバルトリさんはかなり重篤な状態だったのですよ。
皆さん、しばらく造血剤は欠かさないで下さいね」
「あの、今更だがあんたは一体……」
「ジルさんに名乗っていたので忘れてました。
私はリーナ、旅の薬師です」
「それでポーションがポンポン出てくるのか……」
ジルが納得したように呟いている。
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