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第四章

130『セトと王都防衛線』

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 アモンたちはずいぶんな距離を駆けてきたようだ。

「ふむ、このあたりに魔獣はいなかったようだな」

 そして逃げ出した人間をわざわざ追ってくるものも少なかったようだ。
 だが、それはセトに嫌な感じを与えるのに充分だった。

「まるで隊列を乱さないように進む軍団のようではないか」

 本能に動かされている魔獣なら、目の前から逃れようとする餌……人間を見つければ、ほぼ絶対に追いかけてその腹に収めようとするだろう。
 だが、今回はそれが顕著なほど少ない。

「まさか、何かに操られているとでも言うのか?」

 ボソボソと続けられる独り言は、アンナリーナに筒抜けだ。

『うん、それは私も考えていた』

「主人!?」

『考えてもみて?
 今回の、いえここ数年のダンジョン発生を初めとした、この小スタンピートはおかしい……
 何かが、何者かが意図して行っているような、そんな気がする』

「主人……」

『クロンバールでの件は、半分は私の工作の結果だけど、発端であるあの【穴】は自然発生したわけで……』

 アンナリーナは何かが引っかかり、ガリガリと擦られる感覚がしてとても気持ち悪かったのだが、この時はそれ以上掘り下げる事はなかった。



 不思議なことにいくつかの荷馬車はほぼ無傷で発見された。
 付き添っていた商人はともかく、あれほどいたはずの冒険者の姿が、途中で発見した8人を除きまったく見られなくて、そのほとんどの者が喰われてしまったのだろうと結論づけた。
 高速で飛んだセトは王都まで行ってみたが、途中から街道は魔獣で溢れ、王都は防壁での防衛戦に向けて兵を集合させていた。

「やはり、ヒトを狙っているのか……
 このレベルの魔獣に突破されるとは思わないが」

『セト、姿を現さないようにして撃退する事は出来る?
 クロンバールはともかく、私はこの国を潰すつもりはないの』

「主人?
 では夜闇に紛れて上空からブレスで薙ぎ払おうか」

『うん、正体がバレないようにヨロシク』

「はい」


 一気に高度を下げ、口内にエネルギーを溜める。
 そして一気に、レーザー光線が発射され、瞬時に魔獣の軍団を薙ぎ払った。
 セトは、己の起こした状況を見ることもなく上空に飛び去る。
 そのまま高速でアンナリーナのいる中継地に戻っていった。


 その時、王都の防衛に当たっていた者たちは、真っ暗な上空から発射された光線を、唖然として見つめていた。
 あるものは、これで最後かと覚悟を決めた。
 だがそれは防壁の外、自分たちのすぐそこまで迫っていた魔獣の群れを一閃すると、もう二度と発射される事はなかった。

「おい!
 残存した魔獣を狩るぞ!」

 呆けていた意識が戻ったある冒険者が叫んだ。

「おう、このくらいなら俺たちでも何とかなる!行くぞ!」

 ほとんどの魔獣がセトのレーザーで屠られていて、あとはわずかに残った群れの一部と、傷ついたものだ。
 そこに、一気に士気のあがった冒険者たちが襲いかかった。

 ……こうして、第一回防衛戦は終わった。
 この後、酒場で打ち上げをしていた冒険者の中に、あの時上空にドラゴンの影を見たと言うものがいた。

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