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第四章
89『飛び級試験とその結果』
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アンナリーナが心ゆくまで極楽鳥やオーク肉のストックを増やして帰って来ると、アラーニェが学院の寮から伝言を持って帰って来ていた。
「ユングクヴィスト様から?」
「はい。緊急のお呼び出しとか」
アンナリーナは首を傾げて、少し考える。師匠にはダンジョン攻略に行くと伝えてあったはずだ。
「わかったわ、これから行ってきます」
すっかり夕刻だが、塔に住んでいるユングクヴィストに時間は関係ない。
「では、私もお供します」
学院内では、従者を伴う事が許されている。
「では、参りましょうか」
学院の塔と呼ばれる研究施設には、国内有数の魔法職たちがそれぞれの研究をしながら暮らしていた。
その中の最古参と言うべきユングクヴィストは、アンナリーナも展開している【空間魔法】で拡張された部屋に住んでいて、居住スペースに組み込まれた研究室にこもり、日々研鑽を続けている。
寮から出て学院の校舎を通り抜け、塔の部分に到着する。
そこは、一階部分は回廊で繋がっていて、扉の前には兵が2人、常時警備にあたっていた。
そこを通してもらうと広いホールの真ん中に転移陣が描かれていて、アンナリーナのように一定の資格がないと転移出来ないようになっている。
アンナリーナはアラーニェを連れて、迷いなく転移陣を踏み、最上階に近いユングクヴィストの研究室に転移した。
「ユングクヴィスト様、お待たせしました」
「おぉ、リーナか。
急な呼び出し、悪かったな」
「いえ、それで何事ですか?」
この師匠には、アンナリーナは自身の能力のことを細かに伝えていないのだが、ダンジョンに行っているはずが当然のように呼び出しに応じる事に疑問を感じる事もない。
「実はな、リーナの “ 飛び級 ”について、皆と話し合ったのじゃ。
それでの、真に急な事だがこの休暇中に各教科3年生までの教科書を復習ってもらって、試験の結果初等科終了を許可しようという話になった」
アンナリーナの通うこの学院では、6年間のうち最初の3年間は初等科、後の3年を専科と分けている。
専科となるとかなり自由に時間を使うことが出来、在校生の中には冒険者として諸国を漫遊している者も少なくない。
「そなたは春になれば3年生だが、ここで飛び級が叶えば自由行動が増える。どうじゃ? 少しばかり日程はキツいだろうが新学期前の飛び級試験、受けてみぬか?」
もし、それが叶えば1年と言う時間を無駄にせずに済む。
そして夢の馬車生活が叶うのである。
「やります! ぜひやらせて下さい!
ユングクヴィスト様、よろしくお願いします」
アンナリーナの頬は興奮のあまり、紅潮していた。
その後アンナリーナは、従魔たちに前言撤回し、デラガルサのダンジョンにも拠点を置きながら、飛び級試験に臨むためまずは教科書を読み込み、確認、暗記をしていった。
今年はほとんど免除されていた薬学も最初から目を通していく。
そうして2月が経った3月の半ば、アンナリーナは筆記と問答の試験を受け、めでたく飛び級を勝ち取り、専科生となった。
「今度こそアグボンラオールに行きましょう。そこで腰を据えて【迷いの森】攻略をするのです!」
新学期の始業式を迎え、専科生としてユングクヴィストの元に付き、挨拶もそこそこに寮の部屋に戻ってきたアンナリーナはその足で王都にある【疾風の凶刃】のテオドールの部屋に転移した。
「おぉ、どうした? リーナ」
突然目の前に現れたアンナリーナに、驚きを隠せないテオドールだが、それでも嬉しそうに笑った。
「熊さん……お話があるの」
「ユングクヴィスト様から?」
「はい。緊急のお呼び出しとか」
アンナリーナは首を傾げて、少し考える。師匠にはダンジョン攻略に行くと伝えてあったはずだ。
「わかったわ、これから行ってきます」
すっかり夕刻だが、塔に住んでいるユングクヴィストに時間は関係ない。
「では、私もお供します」
学院内では、従者を伴う事が許されている。
「では、参りましょうか」
学院の塔と呼ばれる研究施設には、国内有数の魔法職たちがそれぞれの研究をしながら暮らしていた。
その中の最古参と言うべきユングクヴィストは、アンナリーナも展開している【空間魔法】で拡張された部屋に住んでいて、居住スペースに組み込まれた研究室にこもり、日々研鑽を続けている。
寮から出て学院の校舎を通り抜け、塔の部分に到着する。
そこは、一階部分は回廊で繋がっていて、扉の前には兵が2人、常時警備にあたっていた。
そこを通してもらうと広いホールの真ん中に転移陣が描かれていて、アンナリーナのように一定の資格がないと転移出来ないようになっている。
アンナリーナはアラーニェを連れて、迷いなく転移陣を踏み、最上階に近いユングクヴィストの研究室に転移した。
「ユングクヴィスト様、お待たせしました」
「おぉ、リーナか。
急な呼び出し、悪かったな」
「いえ、それで何事ですか?」
この師匠には、アンナリーナは自身の能力のことを細かに伝えていないのだが、ダンジョンに行っているはずが当然のように呼び出しに応じる事に疑問を感じる事もない。
「実はな、リーナの “ 飛び級 ”について、皆と話し合ったのじゃ。
それでの、真に急な事だがこの休暇中に各教科3年生までの教科書を復習ってもらって、試験の結果初等科終了を許可しようという話になった」
アンナリーナの通うこの学院では、6年間のうち最初の3年間は初等科、後の3年を専科と分けている。
専科となるとかなり自由に時間を使うことが出来、在校生の中には冒険者として諸国を漫遊している者も少なくない。
「そなたは春になれば3年生だが、ここで飛び級が叶えば自由行動が増える。どうじゃ? 少しばかり日程はキツいだろうが新学期前の飛び級試験、受けてみぬか?」
もし、それが叶えば1年と言う時間を無駄にせずに済む。
そして夢の馬車生活が叶うのである。
「やります! ぜひやらせて下さい!
ユングクヴィスト様、よろしくお願いします」
アンナリーナの頬は興奮のあまり、紅潮していた。
その後アンナリーナは、従魔たちに前言撤回し、デラガルサのダンジョンにも拠点を置きながら、飛び級試験に臨むためまずは教科書を読み込み、確認、暗記をしていった。
今年はほとんど免除されていた薬学も最初から目を通していく。
そうして2月が経った3月の半ば、アンナリーナは筆記と問答の試験を受け、めでたく飛び級を勝ち取り、専科生となった。
「今度こそアグボンラオールに行きましょう。そこで腰を据えて【迷いの森】攻略をするのです!」
新学期の始業式を迎え、専科生としてユングクヴィストの元に付き、挨拶もそこそこに寮の部屋に戻ってきたアンナリーナはその足で王都にある【疾風の凶刃】のテオドールの部屋に転移した。
「おぉ、どうした? リーナ」
突然目の前に現れたアンナリーナに、驚きを隠せないテオドールだが、それでも嬉しそうに笑った。
「熊さん……お話があるの」
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