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第四章
58『建築魔法士の仕事ととモニターのお礼』
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結局、建築魔法士に関してはユングクヴィストが尽力してくれた。
彼の知人のその建築魔法士はちょうど仕事がなく難儀していたので、この一件に飛びついてくれたのだ。
その日のうちに見積もりし、材料の木材を購入、それはアンナリーナのインベントリに収めて元宿屋(現クランハウス)に搬入された。
あとは、設計図を構築、展開して、その日のうちに骨組みまで完成させてしまった。
「すごいわね~
どうしてこんな人が、仕事がなくて大変な思いをしていたのかしら?」
エメラルダの疑問はもっともだが、実は彼、とても工賃がお高いのだ。
この中で、今回の支払額を把握しているのはアンナリーナだけなのだが、それを知れば皆、顔が強張るだろう。
見積もり金額、金貨800枚。
アンナリーナだからさほど気になる額ではないが、一般人が依頼出来る額ではない。
一部の富豪か王侯貴族しか依頼できないだろう。
だがアンナリーナなら、少しレベルの高いポーションをそれなりの数売れば回収出来てしまえる額だ。
木材の代金だけクランに請求し、新作のB級ポーションで阿漕に稼ぐつもりだ。
それと、石化予防薬を冒険者ギルドに足下を見て売りつけようと思っている。
「リーナさん?
今回のお支払いは……クランですよね?」
その事に関して、何も言わない事にさすがに訝しんだアーネストの問いに、笑って応えないアンナリーナ。
後日、本来の支払額を聞いて真っ青になった彼は、その代わりに売りつけられた品々にまた沈黙した。
わずか5日で完成したクランハウスは、あとは生活魔法持ちのアマルとアラーニェの手によって綺麗に掃除された。
そしてアンナリーナの【異世界買物】で購入した、収納引き出し付きトールサイズWベッドを全室に配置し、これで一応、引き渡しの準備は終わった。
「で、エメラルダさんとアーネストさんはどの部屋にしますか?」
実はアンナリーナ、2人には特別に机と椅子、そして寝具を用意していた。
これは魔力回復ポーションのモニターをしてもらっていた礼でもある。
「そうね、私は……あまり部屋の前で騒いで欲しくないから、右側の一番奥にするわ」
「私はその向かい側で。
わいわいと部屋の前を通られたくないので」
エメラルダもアーネストも、魔法職はやはり脳筋と合わないようだ。
「では、行きましょう」
2人の前をスタスタと歩いて、アンナリーナはまず、一番奥の左側のドアを開けた。
「机はどこに置きますか?」
前世日本で言う、いわゆる10畳より少し広い部屋にはすでにWサイズのベッドが置かれている。
「このあたりだろうか?」
わけがわからない質問をされて、アーネストは困惑している。
「では!」
インベントリから直接、部屋に出したのは、やはり【異世界買物】で購入したマホガニーのデスクである。
よく宿の部屋にある簡単な机ではなく、どっしりとした大型だ。
「これは何て素晴らしい机だろうか……」
つや消しのマホガニーのデスクには、右側に三段と正面に薄い引き出しがついていて、一番上には鍵穴もある。
「ごめんね、椅子は自分で用意してくれるかな?
そのかわり」
次に出したのは、アンナリーナの部屋で使っているレザーのソファーの廉価版だ。
「ああっ! これは!!」
アンナリーナの居間で腰掛けるたび、その手触りや座り心地にうっとりして、いつか手に入れたいと焦がれていたソファーを目の前にして、アーネストの意識は異次元に飛んでいってしまった。
彼の知人のその建築魔法士はちょうど仕事がなく難儀していたので、この一件に飛びついてくれたのだ。
その日のうちに見積もりし、材料の木材を購入、それはアンナリーナのインベントリに収めて元宿屋(現クランハウス)に搬入された。
あとは、設計図を構築、展開して、その日のうちに骨組みまで完成させてしまった。
「すごいわね~
どうしてこんな人が、仕事がなくて大変な思いをしていたのかしら?」
エメラルダの疑問はもっともだが、実は彼、とても工賃がお高いのだ。
この中で、今回の支払額を把握しているのはアンナリーナだけなのだが、それを知れば皆、顔が強張るだろう。
見積もり金額、金貨800枚。
アンナリーナだからさほど気になる額ではないが、一般人が依頼出来る額ではない。
一部の富豪か王侯貴族しか依頼できないだろう。
だがアンナリーナなら、少しレベルの高いポーションをそれなりの数売れば回収出来てしまえる額だ。
木材の代金だけクランに請求し、新作のB級ポーションで阿漕に稼ぐつもりだ。
それと、石化予防薬を冒険者ギルドに足下を見て売りつけようと思っている。
「リーナさん?
今回のお支払いは……クランですよね?」
その事に関して、何も言わない事にさすがに訝しんだアーネストの問いに、笑って応えないアンナリーナ。
後日、本来の支払額を聞いて真っ青になった彼は、その代わりに売りつけられた品々にまた沈黙した。
わずか5日で完成したクランハウスは、あとは生活魔法持ちのアマルとアラーニェの手によって綺麗に掃除された。
そしてアンナリーナの【異世界買物】で購入した、収納引き出し付きトールサイズWベッドを全室に配置し、これで一応、引き渡しの準備は終わった。
「で、エメラルダさんとアーネストさんはどの部屋にしますか?」
実はアンナリーナ、2人には特別に机と椅子、そして寝具を用意していた。
これは魔力回復ポーションのモニターをしてもらっていた礼でもある。
「そうね、私は……あまり部屋の前で騒いで欲しくないから、右側の一番奥にするわ」
「私はその向かい側で。
わいわいと部屋の前を通られたくないので」
エメラルダもアーネストも、魔法職はやはり脳筋と合わないようだ。
「では、行きましょう」
2人の前をスタスタと歩いて、アンナリーナはまず、一番奥の左側のドアを開けた。
「机はどこに置きますか?」
前世日本で言う、いわゆる10畳より少し広い部屋にはすでにWサイズのベッドが置かれている。
「このあたりだろうか?」
わけがわからない質問をされて、アーネストは困惑している。
「では!」
インベントリから直接、部屋に出したのは、やはり【異世界買物】で購入したマホガニーのデスクである。
よく宿の部屋にある簡単な机ではなく、どっしりとした大型だ。
「これは何て素晴らしい机だろうか……」
つや消しのマホガニーのデスクには、右側に三段と正面に薄い引き出しがついていて、一番上には鍵穴もある。
「ごめんね、椅子は自分で用意してくれるかな?
そのかわり」
次に出したのは、アンナリーナの部屋で使っているレザーのソファーの廉価版だ。
「ああっ! これは!!」
アンナリーナの居間で腰掛けるたび、その手触りや座り心地にうっとりして、いつか手に入れたいと焦がれていたソファーを目の前にして、アーネストの意識は異次元に飛んでいってしまった。
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