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第四章
32『セトとイジのギルド昇級』
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冒険者ギルドでは花形冒険者を何人抱えられるかを、他の支部と競っているような所がある。
今回、王都のギルドに登録及び本拠地を移した者たちの中のテオドールはすでにS級寸前のA級、アンナリーナは進んで昇級していないが、ポーションの供給だけですでにB級になっている。
そして見るからに強大な力を持つ二人の従魔……いや、もう冒険者なのだが。
そしてその二人は、登録した翌日にはもうF級からE級に昇級し、わずか5日でD級となった。
実は、ギルドの昇級条件というのはいくつかあるが、まずよく知られているのは単純に件数だ。
そしてもうひとつは討伐の内容だ。
例えば最下級のFからEに上がる場合、単純に数で言えばF級の魔獣スライムなら100匹、E級の角ウサギやゴブリンなら50匹なのだが、彼らは初日から自分たちが受けられる限度の……この場合テオドールが同行していたので、C級の魔獣の依頼まで受注できた。
それで森熊や銀狼などの依頼を受け、魔の森に入ったのだ。
セトたちの地力でそんな事をすればあっという間にランクは上がっていく。
そうこうするうちに、単純な討伐数と共に、見とどめ役が付くテストを兼ねた護衛依頼を受ける事になった。
これにはセトとイジの他にテオドールとアンナリーナも参加することが義務づけられており、入念な打ち合わせが行われた。
「護衛依頼ですか?」
「そうなの。ギルドの昇級試験なのよ」
今、アンナリーナはアレクセイと共に午後のティータイムを過ごしていた。
「昇級試験?リーナ様も?」
「そうね、内容によっては上がれるかもしれないね。
今回は従魔のセトとイジのC級昇格試験なんだ」
「従魔も冒険者になれるのですか?」
アレクセイが目を輝かせて聞いてくる。
「すごく珍しい事だけど、ない事は無いみたい。
セト……竜人は王都でもたまに見るわよね」
「すごいです。僕も一度でいいから行ってみたいなぁ」
それは叶わない願いである。
アレクセイは侯爵家の後継というだけでなく、実は戦闘職にまったく向かないのだ。
アンナリーナが鑑定してみたところ、見事に文系のスキルばかりだった。
まだギフトの授与は行われていないが、文官というより研究職……史実研究家などが向いているようだ。
「それよりもこれ。
先日約束していた古代エレメント語の本よ。
もう一冊は同じことが書いてあるインドゥーラ語の本。
これである程度勉強出来ると思うの」
「わあ!ありがとうございます。
でも、いいのですか?貴重な本なのに」
「それは写本だから気にしないで」
最近のネロは気分転換に写本に精を出している。
彼にとって両言語は、普通に使っていたものなのだ。
「ところでリーナ様。
学期中に、10日間のお休みとはどうなされたのですか?」
「ああ、それ!聞いてくれる?
授業を先取りしてレポートを書かされたのよ。それも5科目も!」
それでも話の内容の割には楽しそうだ。
「俺が新人の試験官を?」
その頃冒険者ギルドでは、副ギルドマスターに呼び出されたA級冒険者、サルバドールが戸惑いの声をあげた。
「新人と言っても例の奴らだ。
その、C級の試験を頼みたい」
「C級……もうC級なんすか?」
「それから【疾風の凶刃】のテオドールと噂のお嬢さんがついてくる」
「……それって、断れませんよね」
ジロリと睨みつけられて、サルバドールは口を噤んだ。
今回、王都のギルドに登録及び本拠地を移した者たちの中のテオドールはすでにS級寸前のA級、アンナリーナは進んで昇級していないが、ポーションの供給だけですでにB級になっている。
そして見るからに強大な力を持つ二人の従魔……いや、もう冒険者なのだが。
そしてその二人は、登録した翌日にはもうF級からE級に昇級し、わずか5日でD級となった。
実は、ギルドの昇級条件というのはいくつかあるが、まずよく知られているのは単純に件数だ。
そしてもうひとつは討伐の内容だ。
例えば最下級のFからEに上がる場合、単純に数で言えばF級の魔獣スライムなら100匹、E級の角ウサギやゴブリンなら50匹なのだが、彼らは初日から自分たちが受けられる限度の……この場合テオドールが同行していたので、C級の魔獣の依頼まで受注できた。
それで森熊や銀狼などの依頼を受け、魔の森に入ったのだ。
セトたちの地力でそんな事をすればあっという間にランクは上がっていく。
そうこうするうちに、単純な討伐数と共に、見とどめ役が付くテストを兼ねた護衛依頼を受ける事になった。
これにはセトとイジの他にテオドールとアンナリーナも参加することが義務づけられており、入念な打ち合わせが行われた。
「護衛依頼ですか?」
「そうなの。ギルドの昇級試験なのよ」
今、アンナリーナはアレクセイと共に午後のティータイムを過ごしていた。
「昇級試験?リーナ様も?」
「そうね、内容によっては上がれるかもしれないね。
今回は従魔のセトとイジのC級昇格試験なんだ」
「従魔も冒険者になれるのですか?」
アレクセイが目を輝かせて聞いてくる。
「すごく珍しい事だけど、ない事は無いみたい。
セト……竜人は王都でもたまに見るわよね」
「すごいです。僕も一度でいいから行ってみたいなぁ」
それは叶わない願いである。
アレクセイは侯爵家の後継というだけでなく、実は戦闘職にまったく向かないのだ。
アンナリーナが鑑定してみたところ、見事に文系のスキルばかりだった。
まだギフトの授与は行われていないが、文官というより研究職……史実研究家などが向いているようだ。
「それよりもこれ。
先日約束していた古代エレメント語の本よ。
もう一冊は同じことが書いてあるインドゥーラ語の本。
これである程度勉強出来ると思うの」
「わあ!ありがとうございます。
でも、いいのですか?貴重な本なのに」
「それは写本だから気にしないで」
最近のネロは気分転換に写本に精を出している。
彼にとって両言語は、普通に使っていたものなのだ。
「ところでリーナ様。
学期中に、10日間のお休みとはどうなされたのですか?」
「ああ、それ!聞いてくれる?
授業を先取りしてレポートを書かされたのよ。それも5科目も!」
それでも話の内容の割には楽しそうだ。
「俺が新人の試験官を?」
その頃冒険者ギルドでは、副ギルドマスターに呼び出されたA級冒険者、サルバドールが戸惑いの声をあげた。
「新人と言っても例の奴らだ。
その、C級の試験を頼みたい」
「C級……もうC級なんすか?」
「それから【疾風の凶刃】のテオドールと噂のお嬢さんがついてくる」
「……それって、断れませんよね」
ジロリと睨みつけられて、サルバドールは口を噤んだ。
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