魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第三章

127『ポーションの販売と馬車の受け渡し』

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 大陸の最南端に位置する【アグボンラオール国】は魔力を有するものが少ない、特殊な土地だった。
 それ故魔法職は数少なく、この王都といえども薬師は僅か数人……そして、錬金薬師は存在しない。


「こんにちは、先日は紹介していただいてありがとうございました」

「良い馬車はございましたか?」

 受付の男はにこやかに聞き返してきた。

「ええ、今仕上げをしてもらっているところなのですよ。
 明日には受け取る事が出来そうです。
 ……それでですね、今日は鑑定の方を呼んで欲しいのですが」

 アンナリーナの意図する事がわかったのだろう。
 彼はアンナリーナたちを、奥の小会議室に案内し、鑑定士を呼びに行った。

「リーナ?」

「馬車にお金を使うからね。
 ちょっと補充しようと思ってね」



「お待たせいたしました」と、やってきたのは珍しく女性だった。
 それも、もう老婦人と言える年齢の女性だ。

「よろしくお願いします」

 と礼をして、アイテムバッグから箱に入ったポーション瓶を取り出した。

「体力値回復ポーション、回復値1000を24本をお売りしたいと思います」

 老婦人の顔が引きつった。
 手早く箱から瓶を抜き出し、鑑定しながら頷いている。

「鑑定させて頂きました。
 間違いなく、回復値1000の体力値回復ポーションを24本。
 こちらを当方にお売り頂けると?」

「はい、どのくらいで買い取っていただけますか?」

 老婦人は持参してきた冊子を捲り、何度も確かめて、買取額を書いて寄越した。


 体力値回復ポーション
 回復値1000

 1本 金貨10枚×24
 合計 金貨240枚

「こちらでいかがでしょうか?」

「え?」

 金貨10枚と言えば、回復値2700の中級ポーションの最低金額である。

「申し訳ございません。
 やはり低額過ぎますよね。
 この季節に国境を越えて来てくださった薬師様に失礼でした。
 では改めて、これくらいでお願いします」

 1本 金貨15枚×25
 合計 金貨360枚

「ええ、はい。これで結構です」

 少し顔を引きつらせたアンナリーナに、老婦人は申し訳なさそうにしている。
 双方には見解に、重大な齟齬があるようだ。


「本当におまえって、すごいのな」

 テオドールは、アンナリーナがちょこっとポーションを売っただけで金貨360枚を手に入れたことに感心しきりである。

「まあ、もうちょっと数を売ってあげても良かったんだけど……様子見~」

 思ったよりも高く売れて、アンナリーナはご機嫌である。



「急なお願いを受けて下さって、本当にありがとうございました」

「いえ、こちらこそ在庫が捌けて、助かりました」

 テオドールの手から金貨の詰まった布袋がふたつ、店主に渡され確認が始まる。
 アンナリーナは棟梁と話しながら馬車の中に入って行き、喜びに目を輝かせた。

「素敵! イメージ通りです!」

 入り口はバスのステップのように3段の階段になっている。
 それを上がると目の前には普通の馬車のように対面で座席が設えてあるのだが、その座席はアンナリーナが【異世界買物】で購入した高級ブランドのソファーだ。
 柔らかく、しかし適度な弾力があって腰に優しい、人体工学に沿って作られたこのソファー、お値段も半端ではない。
 それを2脚、馬車に固定し、向き合ったその間に折りたたみのテーブルを作ってもらった。
 向かって左側のソファーの背面は壁で仕切られており、通路を経てドアがついている。
 その向こうは何もない部屋だ。
 棟梁は寝室にでもすると思っていた。
 実はこの後、テオドールを始め、従魔全員で新たに増えた拠点のレイアウトが待っているのだが、今のところそれを知る者はアンナリーナのみだった。

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