232 / 577
第三章
125『王都での大きな買い物』
しおりを挟む
今、アンナリーナたちは【アグボンラオール国】の王都ベソリナにいた。
一昨日、ようやく43日かかって到着した王都は、未だ自国の王都すら詳しく把握していないアンナリーナにとって、まさに大都市だった。
「リーナちゃん、本当にありがとう」
到着した日はもう遅い刻限だったのでそのまま宿に入り、昨日改めてギルドに向かった。
道中、何度も危機はあったが、やはり危機一髪だったのは あの “ 異常寒波 ”だろう。
もし、アンナリーナがいなければ、完全にアウトだった。
ダージェは本当に恩義を感じていて、ギルドでの依頼料のほかに、アンナリーナに特別手当を渡したほどだ。
そして、帰りの護衛も是非にと頼んできたのだが、ダージェはこの後商談があって半月ほど、この地に滞在する予定らしい。
「ダージェさん、お誘い本当に嬉しいのですが、私の学院が4月に新学期を迎えるのです。
それに間に合わなければならないので……今回はごめんなさい」
ペコリと頭を下げたアンナリーナの、そのへんの事情を思い出して、ダージェは笑顔で了承した。
そのかわりアンナリーナは、あまりにもオーバーテクノロジーすぎるジグソーパズルを、商品化しないことを条件に、彼らが遊んだものを無償で譲った。
道中振る舞った前世の料理に関しては、揚げ油が高価な事と、ソース類の再現が難しいため、あまり心配していない。
逗留している宿が一緒のため、夕食を共にする約束をして、その場は別れた。
そして今日は、冒険者ギルドから紹介状をもらい、商業ギルドにやってきている。
ここで、紹介状とともにアンナリーナのギルドカードを見せると、途端に受付てくれた男性の目つきが変わる。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
実はアンナリーナ、この王都に来る前に【召喚魔法】で魔獣であり、騎獣として使役される事のある【エピオルス】を2羽、召喚していた。
「馬車を購入したいと思っているんですけど、少し特殊なものが欲しいのです。でも、一から製作してもらう時間はないので、条件次第では購入出来ないかもしれません」
「なるほど、無駄な時間を省くため、ある程度の情報が欲しい、ということですね?」
「はい、話が早くて助かります」
「失礼ですが、ご予算の方は?」
「気に入れば、予算は決めていません」
満足そうに頷いた彼は、すぐにギルドの事務員を数人呼んで、そして彼らはすぐに飛び出して行った。
アンナリーナが購入しようとしているのは、普通の箱馬車ではない。
出来れば以前乗った事のある、ベルネット・プルルスの乗り合い馬車のような少々大型の馬車を探している。
ほぼ、注文製作だろう乗り合い馬車が、あったら儲けもの……ぐらいに思っていた。
だが、やはり御都合主義な世界、アンナリーナの欲する馬車があるようで、報せを受けた彼女らは商業ギルドの事務員を案内に、馬車卸商に向かったのだ。
「おお!excellent!!」
急いで埃を払ったのだろう、そこかしこに埃の残る大型馬車。
それは、あの生まれて初めて乗った乗り合い馬車と同じくらいの大きさで、外側は完璧に出来上がっている。
テオドールと2人で外周りを一周、確認して回ったが、放置されていた間の劣化なども無く、とても良い状態だった。
「ただ、内装が済んでいなくて」
店主が申し訳なさそうに言うと、呼び出されていた、工房の棟梁が口を挟んだ。
「そちらの希望を聞いて、出来るだけ添うようにするが、どのような設えを考えているのだ?」
アンナリーナはちょっと考えた。
「ベンチはいりません。
それから中に壁を作ってドアをつけて欲しいのです」
倉庫から動かされた馬車は、敷地内の駐馬車場に移され、アンナリーナは中に入る。
それからしばらく、巻尺と石筆を持った棟梁との話し合いが続いた。
一昨日、ようやく43日かかって到着した王都は、未だ自国の王都すら詳しく把握していないアンナリーナにとって、まさに大都市だった。
「リーナちゃん、本当にありがとう」
到着した日はもう遅い刻限だったのでそのまま宿に入り、昨日改めてギルドに向かった。
道中、何度も危機はあったが、やはり危機一髪だったのは あの “ 異常寒波 ”だろう。
もし、アンナリーナがいなければ、完全にアウトだった。
ダージェは本当に恩義を感じていて、ギルドでの依頼料のほかに、アンナリーナに特別手当を渡したほどだ。
そして、帰りの護衛も是非にと頼んできたのだが、ダージェはこの後商談があって半月ほど、この地に滞在する予定らしい。
「ダージェさん、お誘い本当に嬉しいのですが、私の学院が4月に新学期を迎えるのです。
それに間に合わなければならないので……今回はごめんなさい」
ペコリと頭を下げたアンナリーナの、そのへんの事情を思い出して、ダージェは笑顔で了承した。
そのかわりアンナリーナは、あまりにもオーバーテクノロジーすぎるジグソーパズルを、商品化しないことを条件に、彼らが遊んだものを無償で譲った。
道中振る舞った前世の料理に関しては、揚げ油が高価な事と、ソース類の再現が難しいため、あまり心配していない。
逗留している宿が一緒のため、夕食を共にする約束をして、その場は別れた。
そして今日は、冒険者ギルドから紹介状をもらい、商業ギルドにやってきている。
ここで、紹介状とともにアンナリーナのギルドカードを見せると、途端に受付てくれた男性の目つきが変わる。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
実はアンナリーナ、この王都に来る前に【召喚魔法】で魔獣であり、騎獣として使役される事のある【エピオルス】を2羽、召喚していた。
「馬車を購入したいと思っているんですけど、少し特殊なものが欲しいのです。でも、一から製作してもらう時間はないので、条件次第では購入出来ないかもしれません」
「なるほど、無駄な時間を省くため、ある程度の情報が欲しい、ということですね?」
「はい、話が早くて助かります」
「失礼ですが、ご予算の方は?」
「気に入れば、予算は決めていません」
満足そうに頷いた彼は、すぐにギルドの事務員を数人呼んで、そして彼らはすぐに飛び出して行った。
アンナリーナが購入しようとしているのは、普通の箱馬車ではない。
出来れば以前乗った事のある、ベルネット・プルルスの乗り合い馬車のような少々大型の馬車を探している。
ほぼ、注文製作だろう乗り合い馬車が、あったら儲けもの……ぐらいに思っていた。
だが、やはり御都合主義な世界、アンナリーナの欲する馬車があるようで、報せを受けた彼女らは商業ギルドの事務員を案内に、馬車卸商に向かったのだ。
「おお!excellent!!」
急いで埃を払ったのだろう、そこかしこに埃の残る大型馬車。
それは、あの生まれて初めて乗った乗り合い馬車と同じくらいの大きさで、外側は完璧に出来上がっている。
テオドールと2人で外周りを一周、確認して回ったが、放置されていた間の劣化なども無く、とても良い状態だった。
「ただ、内装が済んでいなくて」
店主が申し訳なさそうに言うと、呼び出されていた、工房の棟梁が口を挟んだ。
「そちらの希望を聞いて、出来るだけ添うようにするが、どのような設えを考えているのだ?」
アンナリーナはちょっと考えた。
「ベンチはいりません。
それから中に壁を作ってドアをつけて欲しいのです」
倉庫から動かされた馬車は、敷地内の駐馬車場に移され、アンナリーナは中に入る。
それからしばらく、巻尺と石筆を持った棟梁との話し合いが続いた。
2
お気に入りに追加
612
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
【完結】ちびっこ錬金術師は愛される
あろえ
ファンタジー
「もう大丈夫だから。もう、大丈夫だから……」
生死を彷徨い続けた子供のジルは、献身的に看病してくれた姉エリスと、エリクサーを譲ってくれた錬金術師アーニャのおかげで、苦しめられた呪いから解放される。
三年にわたって寝込み続けたジルは、その間に蘇った前世の記憶を夢だと勘違いした。朧げな記憶には、不器用な父親と料理を作った思い出しかないものの、料理と錬金術の作業が似ていることから、恩を返すために錬金術師を目指す。
しかし、錬金術ギルドで試験を受けていると、エリクサーにまつわる不思議な疑問が浮かび上がってきて……。
これは、『ありがとう』を形にしようと思うジルが、錬金術師アーニャにリードされ、無邪気な心でアイテムを作り始めるハートフルストーリー!
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる