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第三章

125『王都での大きな買い物』

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 今、アンナリーナたちは【アグボンラオール国】の王都ベソリナにいた。
 一昨日、ようやく43日かかって到着した王都は、未だ自国の王都すら詳しく把握していないアンナリーナにとって、まさに大都市だった。


「リーナちゃん、本当にありがとう」

 到着した日はもう遅い刻限だったのでそのまま宿に入り、昨日改めてギルドに向かった。

 道中、何度も危機はあったが、やはり危機一髪だったのは あの “ 異常寒波 ”だろう。
 もし、アンナリーナがいなければ、完全にアウトだった。
 ダージェは本当に恩義を感じていて、ギルドでの依頼料のほかに、アンナリーナに特別手当を渡したほどだ。
 そして、帰りの護衛も是非にと頼んできたのだが、ダージェはこの後商談があって半月ほど、この地に滞在する予定らしい。

「ダージェさん、お誘い本当に嬉しいのですが、私の学院が4月に新学期を迎えるのです。
 それに間に合わなければならないので……今回はごめんなさい」

 ペコリと頭を下げたアンナリーナの、そのへんの事情を思い出して、ダージェは笑顔で了承した。
 そのかわりアンナリーナは、あまりにもオーバーテクノロジーすぎるジグソーパズルを、商品化しないことを条件に、彼らが遊んだものを無償で譲った。
 道中振る舞った前世の料理に関しては、揚げ油が高価な事と、ソース類の再現が難しいため、あまり心配していない。
 逗留している宿が一緒のため、夕食を共にする約束をして、その場は別れた。

 そして今日は、冒険者ギルドから紹介状をもらい、商業ギルドにやってきている。
 ここで、紹介状とともにアンナリーナのギルドカードを見せると、途端に受付てくれた男性の目つきが変わる。

「本日はどのようなご用件でしょうか?」


 実はアンナリーナ、この王都に来る前に【召喚魔法】で魔獣であり、騎獣として使役される事のある【エピオルス】を2羽、召喚していた。

「馬車を購入したいと思っているんですけど、少し特殊なものが欲しいのです。でも、一から製作してもらう時間はないので、条件次第では購入出来ないかもしれません」

「なるほど、無駄な時間を省くため、ある程度の情報が欲しい、ということですね?」

「はい、話が早くて助かります」

「失礼ですが、ご予算の方は?」

「気に入れば、予算は決めていません」

 満足そうに頷いた彼は、すぐにギルドの事務員を数人呼んで、そして彼らはすぐに飛び出して行った。


 アンナリーナが購入しようとしているのは、普通の箱馬車ではない。
 出来れば以前乗った事のある、ベルネット・プルルスの乗り合い馬車のような少々大型の馬車を探している。
 ほぼ、注文製作だろう乗り合い馬車が、あったら儲けもの……ぐらいに思っていた。
 だが、やはり御都合主義な世界、アンナリーナの欲する馬車があるようで、報せを受けた彼女らは商業ギルドの事務員を案内に、馬車卸商に向かったのだ。


「おお!excellent!!」

 急いで埃を払ったのだろう、そこかしこに埃の残る大型馬車。
 それは、あの生まれて初めて乗った乗り合い馬車と同じくらいの大きさで、外側は完璧に出来上がっている。
 テオドールと2人で外周りを一周、確認して回ったが、放置されていた間の劣化なども無く、とても良い状態だった。

「ただ、内装が済んでいなくて」

 店主が申し訳なさそうに言うと、呼び出されていた、工房の棟梁が口を挟んだ。

「そちらの希望を聞いて、出来るだけ添うようにするが、どのような設えを考えているのだ?」

 アンナリーナはちょっと考えた。

「ベンチはいりません。
 それから中に壁を作ってドアをつけて欲しいのです」

 倉庫から動かされた馬車は、敷地内の駐馬車場に移され、アンナリーナは中に入る。
 それからしばらく、巻尺と石筆を持った棟梁との話し合いが続いた。

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