魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

文字の大きさ
210 / 577
第三章

103『駐馬車場への襲撃』

しおりを挟む
 今回買い込んだもので特筆すべきものは【ケバブ】だ。
 正確には違う名なのだが、味見をしてピンときた。
 無理を言って、買わせてもらえるだけ買って、明日の朝にも予約した。
 屋台の主人に少し割高の金を渡したら喜んで受けてくれた。
 お互いがwin-winである。
 そして迎えた夜。

 アンナリーナは市で買えた【鍋】を持って帰っていた。
 テントやツリーハウスで使うなら【異世界買物】で買ったものの方が使い勝手はよい。
 だが、テオドールはともかく商人であるダージェに見られるわけにはいかないのだ。
 サイズもちょうど半寸胴くらいの鍋が朝食のスープなどを小分けするのにちょうどいい。

「今夜は男同士3人で、ゆっくり飲んだらいいと思うよ。
 私はこっちでゆっくりさせてもらおう」

 貴重品を積んでるという事で、馬車は駐馬車場でも、屋内に入れられていた。
 隣接する馬屋と箱馬車の両方に結界を強めに張って、その外側に自分のテントごと、もう一重結界を張った。
 一応外にセトを残し、アンナリーナは一度ツリーハウスに戻る。
 今回、この城塞都市に入る折に余計な揉め事を避けるため、従魔はセトしか申請していない。
 だから今ツリーハウスには、セト以外の従魔たちが揃っていた。
 そして、今夜は早い目の夕食を摂り、アマルとアラーニェを連れてテントに戻ってきた。

「たまには女子会も楽しいよね」

 2人の手も借りて、何種類かの煮込み料理やスープの仕込みを終え【時短】で仕上げてしまうと、あとはお茶会だ。
 今夜は【異世界買物】でお取り寄せしたマカロンやバウムクーヘン、チョコレートなど、この世界にはない菓子。
 特にチョコレートは、カカオ豆すら未だに見つからず、諦めた方が良いのかもしれない。
 お茶はすっきりとした一番詰みで、今は砂糖もミルクも使っていない。
 アンナリーナは、一口大のチョコレートケーキに舌鼓を打った。

「美味しいわあ……幸せ」

 だが、そんな幸せな時間を壊そうとするものがいる。

「リーナ様」

『主人!』

「うん、わかってる」

 わざわざ駐馬車場の鍵を壊して侵入してくる者たちがいる。

「……15人。
 やっぱり、お出でなすったわね」

 前世の、時代劇での口調を真似てみたのだが見事にスベってしまった。
 アラーニェの視線が痛い。

「軍事都市で、治安は良いはずじゃなかったの?
 まさか軍人じゃないでしょうね?」

 そうだとすると、面倒な事になる。
 アンナリーナは【聞き耳】を立て、外の様子を窺った。

『主人、侵入者全員が武器を手に、周りを取り囲みました。
 そのうち5名が馬の方に向かっております』

 馬屋にも結界を張っていてよかった。
 アンナリーナがそう溜息していると、あちらこちらで喚き声が聞こえ出した。

「なんだこれェ!?
 何かにあたって先に進めないぞ」

「見えない壁があるみたいだ」

 どうやら彼らは【結界】というものを知らないらしい。
 馬屋の方でも騒ぎが起きて、侵入者たちは一斉に抜刀した。

 剣や斧の、金属が結界を叩く事による甲高い音があたりに響き、これはもう攻撃を受けたと認識出来る。
 どうやら宿屋の方でも騒ぎに気づいたようで、喧騒が聞こえてきた。

「リーナ様、どうなさいます?
 私が捉えて参りましょうか?」

 良い考えに思えたが、今回アラーニェはこの城塞都市に入る折、申請していない。
 要らぬ面倒は避けたいので、今回は自分が出る事にした。


 見えない壁をガンガンと叩き続けていた侵入者たちは、馬車の傍に張られていたテントから2人の女が出てきたのに気づいた。
 1人は子供だが、もう1人は妖艶な美女である。
 2人とも絹の長衣という薄着で、美女の方が少女に豪華な毛皮を着せかけた。
 侵入者たちは、この願ってもない商品に狂喜する。
 そして、さらに強く見えない壁を叩き始めた。

「うるさいわねぇ」

【圧縮】と、少女の声が聞こえた瞬間、今まで剣を振り上げていたひとりの男が、グシャリと潰れてしまった。
 目の前で起きた事が信じられない侵入者たちは呆然としている。

「あれ、加減を間違えちゃったかな。潰れちゃったよ?」

 眼前で、ひと1人が無残な骸となったのに、アンナリーナは至って無邪気だ。
 その、見かけとの落差に侵入者たちは鳥肌立てた。

「【圧縮】」

 再び唱えられた時、男は押し付けられるように、地面に横たわったが、頭が不自然に凹んでいる。

「ありゃ、また失敗しちゃった」

 地面に転がる男の、見た目ではわからない全身の骨が砕けてしまっていた。

「今度こそ【圧縮】」

 意識して、手足の骨や背骨だけを折ることを意識して、残りの13人全員を地面に転がし、ダージェたちの到着を待った。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの

山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。  玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。  エリーゼ=アルセリア。  目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。 「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」 「……なぜ、ですか……?」  声が震える。  彼女の問いに、王子は冷然と答えた。 「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」 「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」 「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」  広間にざわめきが広がる。  ──すべて、仕組まれていたのだ。 「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」  必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。 「黙れ!」  シャルルの一喝が、広間に響き渡る。 「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」  広間は、再び深い静寂に沈んだ。 「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」  王子は、無慈悲に言葉を重ねた。 「国外追放を命じる」  その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。 「そ、そんな……!」  桃色の髪が広間に広がる。  必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。 「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」  シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。  まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。  なぜ。  なぜ、こんなことに──。  エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。  彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。  それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。 兵士たちが進み出る。  無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。 「離して、ください……っ」  必死に抵抗するも、力は弱い。。  誰も助けない。エリーゼは、見た。  カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。  ──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。  重い扉が開かれる。

留学してたら、愚昧がやらかした件。

庭にハニワ
ファンタジー
バカだアホだ、と思っちゃいたが、本当に愚かしい妹。老害と化した祖父母に甘やかし放題されて、聖女気取りで日々暮らしてるらしい。どうしてくれよう……。 R−15は基本です。

処理中です...