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第三章

54『学校の事を聞いてみた』

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「今日はあの書類を片付けて、それからギルドに行って、熊さんにイジの訓練してもらって~ マスターさんの返事は向こうから言ってくるまで放っておく、として……あと、何かあったかな」

 ダイニングで朝食を頬張りながら、アンナリーナは今日の予定を諳んじる。

「ねえ、クランっていう組織はお抱えの鍛治師とかいるのよね?」

「ああ」

「そろそろイジの防具や武器を作ってあげたいの。
 でも、領都の鍛冶屋に連れて行くわけにはいかないでしょ?」

「うちの鍛治師はこの建物の敷地内に仕事場を持ってる。
 紹介してやろうか?」

「マスターさんの許可は?
 いらないの?」

 テオドールはパンを噛みちぎりながら考える。

「そうだな、ヨーゼフには一言かけといた方がいいな」

「じゃあ、まずは書類整理だよ」

 ホットミルクを飲むアンナリーナの横で、熊男が盛大に嫌そうな顔をしていた。



「熊さん、これ何よ?」

 山と積まれた書類を整理して、その中身を見てみると、ほとんどすべてが計算の必要なものだった。

「あー、依頼報酬の請求書?」

「なんで放っておくのよ。
 依頼を受けてお金もらわなかったら意味ないじゃん」

「別に金には困ってないし」

 そう言う問題ではない。
 アンナリーナはカリカリしながら書類を手にした。

『会計ソフトとか、せめて電卓でもあれば楽なんだけど……まあ、いいけど』

 熊男の部屋でペンとインクを探すのは無駄である。
 自前のものを取り出して、さっさと仕上げてしまおう。
 幸い、大した桁数ではないのでサクサク進んでいき、一刻ほどで仕上がった。

「クランに所属するとこんな事もしなきゃならないのね。
 次からはマメに、自分でしなきゃ駄目だよ?」

 自分の半分の歳の少女にそう言われて、どちらが年上かわからない。

「読み書きは問題ないんだが、計算はな~」

 これはしょうがない事かもしれない。
 識字率も低いのだ。
 四則演算までこなせる冒険者がどれだけいるだろうか。

「あ~ そうだ。
 私、魔法学校に通いたいんだけど、どうしたらいいのかな?」

「学校ォ?」

 テオドールは勉強が苦手で、準成人になって教会主催の勉強会から解放されて、清々した口だ。自ら願って勉強とか理解出来ない。

「そう、この間ダンジョンで治癒師の人と会ってね。
 その人から王都には魔法学校があるって聞いたの。
 ねえ、この国の魔法学校のレベルってどうなのかな?」

 そんな事を言われてもテオドールにとっては畑違いだ。

「アーネストにでも聞いてみるか?
 あいつもエメラルダも魔法学院卒だから」

「ほんと? ありがとう」



 ギルドに行って、目を見張るような金額を平然と受け取って、アンナリーナはテオドールと連れ立って領都の門をくぐり、森に向かった。
 人目のないところでテントを出し、イジを呼ぶ。

「師匠、よろしくお願いします」

 木剣を持って礼をするイジとそれを見つめるテオドール。
 アンナリーナはその場をテオドールに任せ、テント経由でツリーハウスに戻る。

 そこで腰を据えて【異世界買物】の画面を見つめ、今夜の夕食のための買物を始めた。

「むひひ……食べたかったアレ、お腹いっぱい食べるよ!」

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