魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第三章

50『クラン【疾風の凶刃】』

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 ドミニクスに渡したポーションや薬は、数が数なので支払いは後日、という事で納品書と金子との引き換え証を渡され、ギルドを後にした。

 横には熊男がいる。
 彼は絶対に逃さない、とばかりにアンナリーナを睨んでいる。

「もう…… ごめんってば。
 絶対に逃げないって」

 唇を尖らせて熊男を見上げると、いきなり腰に手が回った。

「うわぁっ」

 大男(熊)の小脇に抱えられ、アンナリーナは運ばれて行く。

『主人様、大丈夫ですか?』

『しょうがないよ。
 ちょっと自由に動きすぎた。
 今回はある程度、合わせてあげるつもり。ナビ、ありがとうね』

『わかりました』

 アンナリーナが一緒に歩いているよりずっと早い歩みで熊男が進んで行く。
 目的のクランはギルドからさほど離れていないと聞いていたのだが。



 クラン【疾風の凶刃】のドアが開き、その場にいたものは我が目を疑った。
 クランでも1、2を争う巨体のテオドールが、その手に女の子を抱えて現れたのだ。
 仰天しない方がおかしい。


「マスターは上か?」

 全員が一斉に頷き返す。
 その前を歩く男、そして女の子は手を振り振り運ばれて行く。
 その様子を皆は黙って見送っていた。


「ヨーゼフ、入るぞ」

 3階の奥まった部屋。
 他のドアとは違い、両開きのそれを蹴り開けて、熊男が入っていく。

 老眼だろうか、書類を見ていた手を止め、眼鏡の上越しに侵入者を見つめた。
 見たところ50がらみの、所々白の混じった藍色の髪をした翠目の男が席を立つ。

「やっと捕まえて来たぜ!
 こいつ……どこかのダンジョンに潜っていたらしい」

 ヨーゼフと呼ばれたクランマスターがぶらりとぶら下げられた少女に視線を移す。
 ……まるで、テオドールの扱いは小さな子供か荷物だ。

「いい加減にしろ。薬師殿が苦しそうだろう」

 ようやく床に降ろされたアンナリーナは、わずかな眩暈を感じながらも【クランマスター】ヨーゼフと初対面の挨拶を交わす。
 略式のカーテシーに始まり、名を名乗り、勧められたテーブルに着く。
 いつものようにアイテムバッグから茶器一式を取り出し【異世界買物】で取り寄せたロンネフェルトの紅茶を淹れた。
 菓子は甘さ控えめのソフトクッキー、ナッツが練りこまれている。

「少し取り込んでいて、こちらに来るのが遅れたことを謝罪します」

 会談はここから始まった。

「話はテオドールから聞いている。
 薬師殿が我々に、色々なものを売って下さるとか」

「ええ、そうですね。
 私は今、冒険者ギルドともう一軒、取り引きしているのですが……貴クランと差別化を図るために、少しですが効力を上げたものを用意しました。
 それを冒険者ギルドと同額で卸そうと思っています」

 制作過程で込める魔力をほんのすこし増やすだけで回復値+100の【中級体力ポーションC】の出来上がりだ。
 アンナリーナにとってまったく労力は変わらない。

 これも、とりあえず10本机の上に並べて目の前の男の反応を見る。

「それと、これは各種状態異常解除薬……冒険者ギルドにも卸しましたがもしよろしければ、こちらでも。
 あと、そちらが何かご入用のものがあればお訊きします。
 それと……ああ、テントでしたね」

 立ち上がったアンナリーナが部屋の空いている空間にテントを出した。

「携帯型簡易テント、熊さんや炎のお姉さんや氷のお兄さんを招待したのとはかなりダウングレードするけど、これが限界だと思います」

 外見は普通の夜営用テントだ。
 だがアンナリーナの魔法で中の空間は居心地よく拡張されている。
 机を回り込んでこちらにやってきたヨーゼフも、入り口の布を持ち上げて中に入ってきた。

「これは……」

 外から見ると、テント内では中腰でしか動けない筈だ。
 だが一歩足を踏み入れてみると、大柄なヨーゼフでも普通に立って歩けている。
 アンナリーナがクラン用に新しく作成したそれは、中が6畳ほどで簡易のベッドと、机と椅子が設えてあった。

「緊急時は6人くらいなら寝れるんじゃないですか?」
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