魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第三章

30『エイケナールの今』

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「今夜はこの村に泊まって行くんだろ?」

 グレイストの問いかけに頷いたアンナリーナはその意図を図りかねていた。

「以前と違って宿も混んでる。
 よければ家に泊まらないか?」

 ふむ……と考える。
 テントもあるし、危険はないだろう。

「では、お言葉に甘えて。
 あれからの事も色々聞きたいし、ちょうどいいね。
 何刻くらいに戻ってきたらいい?」

「俺は今日は早番なので、夕方の5刻には上がる」

「ん~ じゃあ、その位に戻ってくるよ」

「おう」

 ヒラヒラと手を振って村の中に入っていく。
 以前から捉えどころのないアンナリーナだったが、今回さらにその度合いをあげている。

「まあ、いいか」

 門の外に並ぶ馬車を尻目に、グレイストは仕事に戻っていく。


 前回訪れた時とは比べものにならないくらい賑やかになった村の様子を見回しながら、懇意になった肉屋への道を歩いていく。
 鉱山のダンジョン化はこの村に恵みをもたらした。
 お膝元のデラガルサはどうなのだろうか…… 実はアンナリーナ、このあとデラガルサ鉱山に向かうつもりでいた。
【位置特定】で、マチルダとマリアの点がグリッドされている。
 彼女らの様子を見るついでに、回復薬を卸そうと思っているのだが、果たして彼らの商売は上手くいっているのだろうか。


「おはようございます。いらっしゃいませ」

 肉屋の店先には見慣れない女性が店番していた。

「おはようございます。
 私、リーナと言いますが女将さんいらっしゃいますか?」

 訝しげな店番の女性と遣り取りしていると、奥から女将が飛び出してきた。

「まあっ、リーナちゃん!!」

 女将の叫びを聞いた店主イゴルもやってきて開口一番。

「肉は持ってるか?!」だ。

「久しぶりだな、リーナちゃん。
 いつまでいるんだ?」

「今夜一泊して、明日立ちます」

 イゴルの目がキラリと光、口角が上がる。

「じゃあ前回のように、限界まで頑張ってやろう。
 新しく雇った連中の、いい経験になる」

「ありがとうございます。
 では、お肉を出しましょうか」

 イゴルとアンナリーナの2人が黒い笑みを浮かべていた。


 解体済みのオーク肉、解体済みの森猪肉、屠ってすぐにインベントリに収納していたオーク、森猪、森大蛇、角兎……
 需要はたくさんあるし、解体職人の数も増えた。
 最近は料理のテイクアウトの種類も増え、兎は早速シチューになるようだ。

「嬢ちゃん、鍋寄越しな。
 大1、中2だ」

 楽しみだ。



 昨夜はグレイストと有意義な時間を持てた。
 夕食を、宿の酒場でと誘われたが、少々込み入った話もあったので、グレイストの家にて摂ることになった。
 やはり、デラガルサのダンジョン化が明らかになってから、寂れかけていた村は明るさを取り戻していた。
 だが、色々な弊害もあったようだ。
 まず治安が悪くなった。
 王都から、いや国中からやって来る冒険者の補給地として賑わったのはいいが、冒険者同士のトラブルは日曜茶飯事だ。
 そして村の周りの森に魔獣が増えた。
 この事があった為、グレイストがアンナリーナの捜索に着手出来なかったのだという。
 ……結果的には助かったが。


「やっぱり行くのか?」

 グレイストは寂しそうな目を向けてくる。

「また来るよ。ここには美味しいソーセージがあるからね」

 今朝一番に受け取ったソーセージは絶品だった。

「じゃあね、デラガルサに行ってきます」
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