魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第二章

64『山賊との交渉』

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アンナリーナは言葉を切って、ティーカップに口をつけた。

「もし、よろしかったら、これからの私や、同じ馬車に乗っていた人たちの事を聞きたいのですけど」

 このあたりがアンナリーナの抜け目のないところだ。
 マリアの状態を小出しにし、その後で自分の身の上を保証させる。
 言質を取るまで動かないよ、と相手に思わせるのだ。
 フランクが何か言いたげにアンナリーナを見る。

「乗客の皆は、いつも通りだ。
 俺たちの流儀でやっていく」

「あの、それについてはさっき、説明しました」

 フランクが二度手間を避けるために口を挟んだ。

「そうか、で薬師殿だが、俺が招いた俺の客だが?」

 一体、それ以上の何が聞きたいかわからないようだ。

「私もっ、身代金とか?奴隷商人に売られたり、という事は?」

「そんな事、あり得ない!」

 乱暴に立ち上がった事で、卓の上のティーカップから茶が溢れる。

「ちゃんと治療の対価も払う!
 もし用意するものがあるなら存分に言ってくれ」

 大切な存在があるというのは、いいな……
 そのときアンナリーナはそう思った。
 強面の大男がこんなにも必死になる相手。アンナリーナの鑑定では、マリアはまだ清い身体だ。
 体調の面もあるが、ジャマーがマリアを大事に扱っていることの証しだろう。

「嬢ちゃん、マチルダさんたちは俺らがちゃんと領都に送り届けるから安心してくれ。ただ天候次第では少し時間がかかるかもしれない」

「どういう事?」

「雪の降った後の峠に馬車が通れるようになるまで、って事だよ」

 阿吽の呼吸で、フランクが解説をしてくれるので助かる。

「わかりました。
 では、マリアさんの話に戻りますね。
 ……今夜、これから熱が上がるのは確定です。
 私はこれから薬の調合に入りますが、その前にいくつか問題点を。
 洞窟って凍えるほど寒くならない代わりに、岩肌は冷えたまんまですよね?」

「洞窟とはそんなもんだろう」

「あの、動き回っている健康な皆さんと違って、マリアさんは脂肪や筋肉が薄くて……この洞窟の中では芯から冷えちゃうんですよ」

 いわゆる、冷え症に近いものだが、これの厄介なところは目立った自覚症状のない事だ。

「元から身体の弱いマリアさんですけど、冷えてるんだと思うんですよね。
 身体の奥深いところが。
 これは、表面と違って温めるのが難しいし、一番の問題は内臓って冷えると、働きが鈍るんですよ」

「洞窟がマリアを弱らせていると?」

 大男がブルブルと震えている。

「一概には言えませんけどね。
 ……身体に合う薬草を見繕いますが、マリアさん、このままだと冬は越せないでしょうね」

 立ち上がった大男がいきなりアンナリーナに覆いかぶさってきた。
 腋の下を掴まれて、持ち上げられる。

「なんとかならないのか?
 頼む、頼む、マリアを助けてくれ!
 なんでもする。なんでも聞くから!」

「それについては考えがあります。
 でも、今は目の前のことから片付けていきましょう」

 厳つい顔をくしゃくしゃにして、ジャマーが泣いている。
 それは絶望なのか、安堵からなのか、アンナリーナにはわからなかった。


「今夜はどのくらい冷えるのかな?
 マチルダさんたちはちゃんと暖かいところにいるのかしら」

 アンナリーナの呟きにザルバが答える。

「俺たちは、檻に閉じ込めたりしないぜ。客なんだぜ?丁重に扱うさ」

「食事は? 私、今夜は作る事が出来ないけど?」

「ちゃんとたっぷり、与えられる筈だ……質は大分落ちるがな」

 それはしょうがないだろう。

「女性だけでも、私の目の届くところに置けないかな?
 マチルダさんは高齢だし、キャサリンさんは病み上がりだし」

「どうするつもりだ?」

「部屋の中に予備のテントを出して、そこで過ごしてもらうよ。
 ……あと、頼みがあるんだけど」

 アンナリーナに関する一切の窓口となったザルバが、その先を促す。

「ちょっとね、かなり大きいものを出したいの。
 主に高さがね……ここでは外しか無理かなあ」

「高さ? 一体どのくらいだ?」

「んん~ 20mくらい?」

「随分とデカ物だな……
 洞窟内がいいのなら、入ってすぐの大ホールくらいしかないな。
 厩や馬車留めがあるところだが」

「やっぱり外にしようかな……
 あとで付き合ってくれる?
 ここの中を1人でうろつくのは、さすがに怖いし。
 あ、フランクも連れて行こう」


 そのあとアンナリーナは、マリアの部屋の近くに続き部屋を貰い、準備を始める。ここでのフランクはもう公式な下僕だ。アンナリーナの指示に従い、毛布などを運び込んでいる。
 その、少しの隙を見計らって【異世界買物】で、何種類かのゼリーやジュレ、プリンやムースなどを買い込んだ。
 それを持ってマリアの元に急ぐ。
 すでに発熱し始め、頬を赤くしていたが、物珍しさと、美味さ、そして何よりもその喉ごしの良さに、結構な量を平らげてくれた。

「よかった、これだけ食べてくれたら大丈夫。今夜はなるべく辛くないようにするから安心してね」

 アンナリーナはテキパキと動き、次の仕事に移っていく。

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