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第二章

37『お邪魔虫フランクと森の主の体液』

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フランクなんていうお荷物をぶら下げたまま、森に行くのは御免蒙る。
 しかし彼は律儀に、雇い主であるザルバに言われた通りアンナリーナにくっついて離れない。
 彼女は今、ほとほと困り果てている。

『宣誓魔法はいかがですか?』

 突然ナビが思考に割り込んできた。
 これはいわゆる【念話】というもので、アンナリーナとナビだけの間で成立する会話法だ。
 もちろん他人に聞かれる事はない。

『そうだね、どちらにしても一度、テントは出さなきゃね』

 一度、宿屋に向かうための道を歩いていたアンナリーナは、後ろを歩いているフランクを振り返った。

「ちょっと話そうか」

 道端の、ちょうどいい加減の大石に並んで座る。
 アイテムバッグから冷えたハーブ茶とソフトクッキーを出してフランクに渡した。

「私ね、これから採取に行きたいってさっきから言ってたでしょ?
 ぶっちゃけ、ついてこられたら困るわけよ……薬師の秘密ってやつな訳。
 出来たら森の入り口あたりで待っててくれないかなぁ?」

「俺はザルバさんに依頼されてる。
 嬢ちゃんの言う事もわかるんだが」

「じゃあ、ザルバさんがいいって言ったら一人で行かせてくれる?」

「それは、まあ……」

 奥歯にものが挟まったような物言いだ。
 護衛と言うより監視という方の批准が多いのだろう、少し可笑しくなる。

「ザルバさん、探しに行こうか?
 どこにいると思う?」

「どちらかの宿屋だろうな」

 どちらにしても揉めていると思う。
 第一に、今夜もう一泊する事になる、ザルバの乗り合い馬車の客6名の、余分にかかる今夜の宿代だ。
 これを客に負担させるわけにはいかないので、ザルバと組合の方で話し合いが持たれているはずだ。

「ザルバさんとこ、行こうか」


 ギルド出張所の交信水晶の前で、今まさに頭の血管が切れそうになっているザルバを見て、アンナリーナはフランクと顔を見合わせた。

「あまり刺激したくないなぁ……
 ねえ、フランク?」

 2人はザルバに声をかけずに回れ右する。そのまま馬車の置いてある空き地に戻って来た。

「えーっとね。
 私はこれから、薬師の秘密を使って採取に行く。
 他の人に見られたくも、知られたくもないわけで、もしもついてくるなら、それなりの覚悟をしてもらわなきゃならないの。
 あなたにその覚悟はある?」

 フランクの顔が引き締まる。

「具体的な内容は?」

「宣誓魔法を受けてもらう。
 もし破ったらさっきのオークやトサカ鳥のようになるよ?
 それから好奇心からついて来ても、私は容赦しない」

 アンナリーナの身体から、大量の魔力が溢れ出す。
 あまり魔力値の高くないフランクには見えないが、黒い負の魔力が彼の周りを取り巻き、その圧を強めていく。
 息苦しくなるほどの圧力にフランクが悲鳴をあげた。

「嬢ちゃん!リーナ!
 わかったから、もうやめてくれ!」

 一瞬にして緩む圧力。
 睨めつけるアンナリーナを前に、フランクは崩れ落ちた。

「わかってくれて、うれしいです。
 必ず戻ってくるから安心して。
 これでも解体して待っててよ」

 アンナリーナはバッグからトサカ鳥を2羽取り出す。

「羽をむしって解体しておいて?
 ももを骨つきにして山賊焼にするね。
 一応、骨も内臓も棄てないでくれる?」

 フランクにトサカ鳥を2羽押しつけて、アンナリーナは駆け出した。

 やっと自由に動くことが出来る。
 身体強化して全速力で走るアンナリーナを、フランクは呆然と見送っていた。


 森に入って、視界が遮られているのを確かめたのち【飛行】を使って奥に進んでいく。

「ちょっと “ 大物 ”を探さなきゃいけないから……手間取るかな」

 実はアンナリーナ。
 魔獣除けの香を作ろうと思っている。
 御者台で使えば馬車全体をカバーする、いつもより強力なものを用意するため、格上の魔獣の体液が必要なのだ。

「何か、ちょうど良さそうなのがいないかしら」

「この先、正面の山を越えたあたりに強力な反応があります。
 おそらく【バイパー】ではないかと」

 ナビの指摘にアンナリーナは小躍りせんばかりに喜ぶ。

「おお、それは重畳。
 早速、仕留めに行きますよ~」

 ここ数日のストレス解消のようにトばして、あっという間に山越えをした彼女は、空中を浮遊しながら探索した。

「クリムゾンバイパー……
 毒々しい大蛇だね。
 でも、いっちゃうよ~
【サファケイト】」

 森の中の木よりも太い胴をした、全長30mはある巨大な蛇の魔獣。
 この森の主であろう【クリムゾンバイパー】を、アンナリーナは呼吸するものすべての命を刈り取る【サファケイト】で屠った。
 周りが一瞬で真空になった中、生命機能を停止したこと自体気づかずに骸となった【クリムゾンバイパー】を悦に入った表情で見つめるアンナリーナ。
 バッグからガラス瓶を何十本も取り出し、地面に置いた。

「体液【抽出】」

 アンナリーナの言葉ののち現れたのは、血液、リンパ液、精液、その他の体液に分けられた瓶だった。

「どれを使ってもいいんだけど、今回はリンパ液でいこうかな」

 魔獣除けの香は、普段は魔獣の嫌がる植物とクズ石炭、そして綿毛を練り上げる。
 今回はそれに上位魔獣の体液……この場合はクリムゾンバイパーのリンパ液を混ぜて出来上がる。

「ナビ、無事に採取できたよ。
 一度ツリーハウスを出して、ゆっくりしようか」

「もう少し村に近い方がよろしいのでは?そしてハウスを展開したまま、テントとの間を繋いだらいかがでしょうか?
【異空間魔法】空間接続です」

「それ!便利そうだね。
 早速ギフトで取ってみよう」


「先にセトの方を終わらせるね」

 ローブを脱いで身軽になったアンナリーナが、手のひらの上のセトを撫でる。


「【体力値供与】【魔力値供与】
 そして【鑑定】」

 セト(アイデクセ、雄)
 体力値 3500
 魔力値 370


「ギフト【異空間魔法】
 そして、ステータスオープン」


 アンナリーナ 14才
 職業 薬師、錬金術師、賢者の弟子
 
 体力値 102400
 魔力値 34843571040055/34843561040054
(ステータス鑑定に1使用、異空間魔法に10000000)

 ギフト(スキル) ギフト(贈り物)
  [一日に一度、望むスキルとそれによって起きる事象を供与する]
 調薬
 鑑定
 魔力倍増・継続 (12日間継続)
 錬金術(調合、乾燥、粉砕、分離、抽出、時間促進)
 探索(探求、探究)
 水魔法(ウォーター、水球、ウォーターカッター)
 生活魔法(ライト、洗浄クリーン、修理リペア、ファイア、料理、血抜き、発酵)
 隠形(透明化、気配掩蔽、気配察知、危機察知、索敵)
 飛行(空中浮遊、空中停止)
 加温(沸騰)
 治癒(体力回復、魔力回復、解毒、麻痺解除、状態異常回復、石化解除)
 風魔法(ウインド、エアカッター、エアスラッシュ、ウインドアロー、トルネード、サファケイト)
 冷凍(凍結乾燥粉砕フリーズドライ)
 時間魔法(時間短縮、時間停止、成長促進、熟成)
 体力値倍増・継続(12日間継続)
 撹拌
 圧縮
 結界
 異空間収納(インベントリ、時間経過無し、収納無限、インデックス)
 凝血
 遠見
 夜目
 解析スキャン
 魔法陣
 マップ
 裁縫
 編み物
 刺繍
 ボビンレース
 検索
 隠蔽(偽造)
 従魔術ティム
 体力値供与
 細工
 再構築
 無詠唱
 悪意察知
 魔力値供与
 空間魔法(転移)
 異世界買物
 位置特定
 異空間魔法(空間接続、空間増設)
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