それでは明るくさようなら

金糸雀

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この後何か取ってる?ない?じゃぁ何か飲も。コーヒーが良い?お酒?えーお酒の方がいいのぉ?今から飲める?でしょ、まだ昼間ー!とりあえずほら、いこ!

『えぇ?』

ここ!来たことある?ない?コーヒー好き?ここの美味しいよぉ。チーズケーキも美味しいの。食べる?雪先輩食べてたよぉ、美味しいって。えーいらないかぁ、じゃぁボクもいいかな!お昼食べちゃう?ボクまだお腹空いてないからこの甘々ほうじ茶ラテのはちみつ追加にしよぉ。葉海先輩は?コーヒーだけ?


『うーん、このブレンドにしようかなぁ。そう、オリジナルの。なんかすっごい美味しそうな気がするんだよね。』


ボク苦いのキライだから飲んだことないけどぉ、他のひとは美味しいって飲んでた!すいませーん、これとこれお願いします。楽しみにしててね、先輩。これ絶対美味しいからね!ボクはキライだけど!






『あ。ほんとだ。美味しい!』


でしょぉ。あ、ねぇねぇ動画!雪先輩に聞いてからボク見てみたくってぇ。なんでって。だってそんなのなかなか見れないでしょ?しかもほら、自分で撮ろうって撮ったやつと違うし。自然なさ、自然なアノ時のボクどんな感じなのかなぁって。どんな顔してた?どろえろだったぁ?え?顔見てない?そうなんだぁ。わ!じゃぁ今日ハジメテ顔わかった感じ?ど?ボク、可愛い?


『うん、可愛い。』


あっは!葉海先輩、今の本心?えーおっかしい。可愛いって!言わないでしょふつー。


『いやでも可愛いし。目、おっきいよねぇ。何センチあるの?色素薄いしきらきらしてるし、さっき思わず見つめちゃったよ。』


…やっば。

『やっば?』




あーん!ねね!動画!動画見せて!え…消しちゃったの?!わぁー…遅すぎたなぁ…つかえねー。まぁ。いっかぁ。ね、ここ美味しかったでしょ?ボク美味しいコーヒーのお店たくさん知ってるの。先輩はオススメとかない?ある?わ!連絡先交換しよ!なんで、って。だから、ね!ほらスマホ出して、はい!はい!これ、このケーキのアイコンがボク。そ!ケーキ大好き!あ。時間きちゃったじゃぁまたね!!








「またね?」





一通り喋り飲んで流れるように連絡先の交換を済ませ会計してそれで。彼はにこにこしながらまたね!って片手あげて華麗に去っていった。浮気現場に残されたあの良い匂いを撒き散らしながら。


「え、また?またがある…?」
つられてあげた上げた片手そのまま、置いてけぼりのボク。
流れるように交換した連絡先、すごい。あまりに自然すぎてなんの反応も返せなかった。
すごい。
ボクの関係図、大雑把に分類したら間違いなくマイナス枠じゃないの、あのヒトの位置。
いやもう関係ないし今更雪でどうこう思うところもないけど、それにしたって。線と線とが絶対交わらないとこにそれぞれ存在してそのまま一生関わらないとか、見かけても敢えて避けるとかそんな感じじゃないの?さすがのボクだってあのヒトだーってわかったら掌で目とか隠してお互いなんもないですよーってするよ?多分するよ?!
なんかあのヒト、すごい。
カフェの前でしばし呆然…え?ほんとになんで?
左手のスマホの画面表示にはスマホに提示されたケーキのアイコン。その横に並ぶ文字は"マロ''
「マロ?」
まろ?
ボク、ケーキのアイコンを画面からどかすみたいにスマホ操作して、通話履歴第一位の番号を迷わず選択、耳に当てる。
麻呂?。


『はい。』
何コールかして、ふつりと繋がる。
感情のない、いつもの宮君の声が耳に届いた途端、ぶわわって。なんだかすごい、感情が揺れて思わず叫んだ。
「宮君、宮君!!」
『はい。宮です。先輩今どこですか?』
「知らないカフェの前だよ宮君!」
『はぁ…?』
宮君の声、ちょっとだけ低くなる。
わかるよ宮君。今こいつ大丈夫かって副音声ついちゃう感じなのわかる。ボクも今おかしいってわかってるんだけんども!
「マロに連れてこられたんだけど宮君!」
『マロ…?誰ですかそれ。』
「ほら、あの、雪の!好き好き言って言ってた!」
『…動画の?』
ボクの説明らしからぬ説明に、ちょっとの間だけ開けてすぐさま理解してくれる宮君、感謝だよ!
「そうその、マロ君?」
『…マロ』
「マロ君?多分!わかんないけど、でもアイコン横にマロって!」
『アイコン横…?名乗らなかったんですか?そいつ。』
訝しげな宮君の声にボク息飲んだ。
な、名乗る…?



「名乗りません…でしたねぇ。」
あんだけ喋ってたのに。ボクの名前知ってて何度も口にするから名乗るとか、考えなかったわ…。
息、吐き出すみたいに、はぁぁぁって口から音が漏れ出していけば、宮君もスマホの向こうで息を吐く。



『先輩、バカですか?』
「否定、はしないっ…」


名前も知らぬ相手とカフェでお茶したボクは、なんとか迎えにきてくれた宮君からものすごーい冷たい視線をいただきましたちくしょう。
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