それでは明るくさようなら

金糸雀

文字の大きさ
上 下
21 / 29

始めました

しおりを挟む
「はっ…。」
「は、はぁっ…。」



ようやく宮君の舌が口から出ていった頃にはボクはもう身体のありとあらゆるところから力が抜けちゃって。ブリッジの潰れちゃった状態でベッドにそのまま、沈んだ。後頭部押さえてた宮君の手を下敷きにして。

口からは、ただ荒い息が。

呼吸するだけで精一杯、唾液でべちゃべちゃの口元を拭う気力も唇を舐める余力もない。
息苦しさと湧き上がってくる如何ともし難いあの気持ちよさとで涙は出るわ、鼻は出るわ。
それもそのまま出しっぱなし。
あー…ほんとに、ねぇ。
ぼんやりとした頭ん中に浮かぶのは、
(宮君とのちゅーって、なんでこんなんばっかりなんだろうなぁ。)
なんて、そんな、アホみたいな事。
なんかもっとこう爽やかなちゅっとか甘やかなちゅっとかさ、いろいろいろいろあるでしょうに。
ちゅーだけで、どろっどろ。物理的に。
…主にボクの顔が。


「はぁ…はぁっ…葉海。」


ボクの顔の側に片手ついて。上からはぁはぁ荒い息を繰り返す宮君。無意識なのか、さっきからボクを名前呼びしてる。
『はる。』
たった一言。
周りもボクのことは名前呼びだから慣れてるし、特に何か思ったこともない。名字か名前かあだ名か、気にしたことなんてない。
でも宮君から名前呼び。
ただそれだけなのに胸がキュンとかする。誤動作じゃなくてだよ。
思わず顔に熱とかさ。赤くなってるの分かる。
ついでにさ。荒い息の合間にボクの名前呼ぶその声音がまた、腰にきてるとか。ホント。

(大概です、ねぇ。)

はっはって。
息を整えるだけで精一杯。宮君の呼びかけにお答えはできません。胸はとくとく。顔に熱がじわじわ。腰はじーんと重い。
涙の滲む目を軽く閉じ、ひたすらはーはーって、肺を使って息を整えてーー。


「葉海。」


宮君がまたボクを呼ぶ。
ボクはうっすらとだけ開けていた目を、顎を上げ宮君へと向けた。
「…葉海。」
また、呼ぶ。その唇の横からぼたり。
片手はボクの頭の下。もう片手をボクの横についてるから拭えてない、宮君の紅い唇の横から唾液がぼたりと、落ちてくる。
「宮君。」
赤い舌が、さっきまでボクの口の中で暴れ回った舌がべろりとその、次に溢れでそうな唾液を大きく舐めとって。
かちり、と歯を鳴らす。


「葉海。」


うっそりと、宮君ったら目元を細めたりして。
もちろんその目はボクだけを見てて。




(食べたそうだなぁ。)




本能でボク。そんなことを思う。




宮君の舌。ボクのか宮君のかわかんない唾液をべろりと舐めとった舌、その唇が動いて。
言葉を紡ぐ前にボクに近づいてきてそれで。
ボクの耳に、宮君が直接言葉を流し込む。
「処理が追いつかず混乱の極みなんですけど。」
「同じくぅー。」
ボク即同意。
いやむしろボクこそが、宮君意味わかんな過ぎて頭回ってないんですけども。
仮定してみたり付き合ってるの疑ったり怒ってんのかと思ったら喜んでたり。追いつかないのはボクの頭。
濃厚ちゅーがしかも追い打ち。
もー処理速度は底辺。わけわかんなすぎだよねーもーほんとに、もー。
…宮君。極みとか言っといて、本当は整理ついてんじゃないのかな?
いつも通りの顔だもの。
ただ綺麗な顔が前面に出ているだけの、他は通常通り。
いつもの宮君。
顔はね。綺麗なだけ。いつもの顔。



「葉海、先輩。」



低くて。
流し込まれるその声がまた、低くてそら恐ろしい程の暗さで。
じっとりと。どっろどろの粘度で流れ込んでくる、ボクの中に。
性交渉含む性的接触は自分とだけ食らうのは自分だけと、そう今、確約して下さい。」
そんなバカみたいな懇願が。






でももう宮君への好きがただの後輩親友へのそれとは別物の好きだと。気づいちゃったボクにとってはもうさ。
宮君のそんな、自分だけが食ってやるって副音声聞こえてきそうな声音にだってさ。もうさ。ただただ。
ぞくりとしてしまうんだよ。 




宮君のわけのわからなさも、困ったことに好きだわぁなんてさ。
ほっぺ齧るくらいなら断りなく良いよ?
いつでもほら。
なんて。
口にしそうなくらい。
本当に全くなんなの、宮君。



ただのバカでアホなの?



なんなの、ボクも。
ほんとにもうもうもう!チョロ甘アホおバカちゃん。

だからこそ。
なんて可愛いんだろうなぁなんて。
思ってしまうわけで。




ふぅぅぅとボクはとにかく息を。
あれやこれやの言いたいことはとりあえず吐き出す中に溶かし込んでね。口にするのは、ひとまず置いといて。

ボク、深く深く息を吐いて。



「当たり前でしょ。」



ってさ。
万感の思いを込めた一言を。
肺の中の息を吐き切った途端、そう呟いて無理やり横向いて。
宮君の口に。
ちゅーしてやったよね。


無理やり首を動かしただけだからね。
唇掠めて端っこにちゅー。
あぁほんとにもう。
甘くて優しいちゅーには程遠い。



それでもボクから宮君への初ちゅー。



「先輩っ!」
宮君への効果は抜群だったみたいなので、よし。









「先輩はほんとに摩訶不思議です。」
「宮君には言われたくないかなぁ。」






ボクらはなんとなく笑い合って(多分。)
それからもう一度、始めました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

処理中です...