それでは明るくさようなら

金糸雀

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どこがちがいましたか?



(突きつけられたのは質問というよりむしろ。)



「え?」


どこが?
ちがう?



雪と宮君。
当時友だちの雪と現在後輩の宮君。
どっちもカレ氏じゃない。
どっちも合意から始まってない。
だけど結果は正反対。
返り討ちにした雪と最後まで致した宮君。
 

「え?」


掴まれた肩がびくって震える。
ちがう。どこが、ちがう?ちがった?
最後までシタかどうかの差異?それならば確かに違う。
圧倒的に違い過ぎる。けども。
「うえぇ?」
だったらなんで。
違う?
雪が襲いかかってきた時にボクは何を思って。
宮君に襲われた時ボクはどう思って。
なにがどうしてこうなって、今のこの状態にまで辿り着いたのかをボクは、初めて。
初めて、なんでなんだろうって、自分でも思った。


なんでボク、宮君と。


逃げれなかった?
それは、ある。あるわ。逃げれませんでした、ねー!!
今みたいに宮君はボクを捕まえて離してくれなかったし離そうとしなかった。すごい圧で、絶対離してなるものか。そんな気迫と熱量。
雪の時は雪の雪を蹴っ飛ばしてまで断固拒否だったのに。
あれ?なんでボク、宮君の宮君蹴っ飛ばさなかったんだろう?
足とか肩とかは蹴って抵抗したのに。
なんで?


「えぇ?」


ボクはボクの思考に戸惑う。戸惑って困惑して、眉毛が多分へにょり。宮君から視線外して右見て左見てそれからまた宮君見て。
宮君からの強過ぎる視線。多分だけど、宮君さっきから全然瞬きしてない。
なんだって宮君はそんな熱量でもってボクを見るんだよ。
まるでボクの何もかも。ほんのちょっとの表情すら、取り零さんとしてるみたいに。
まるであの時みたい。
最中も、宮君はボクを見てた。
いつの間にか外されてた眼鏡なしの目で。
すぐ近くで宮君はボクを見てた。


『葉海。』
『先輩。』
「ひぇぇ…」



ぶわって。
ぶわぁぁぁあって。雪との渋い記憶も宮君との鮮烈な記憶も。
ぶわって鮮やかに思い出されてボク。目、ぐるぐるさせながら必死に。
考える。




雪はがばってきた。
問答無用でずるってボクのパンツ下ろしてがしってボクのボクを掴んでだから断固拒否!
宮君もいきなりちゅー!
シていいですか?なんてそんな事前にお伺いされてない。されてな、い?ん?あれ?いい子がどうとかって、お伺いして。してた?あぁしてましたねぇって、待て。ボク、待て。お伺いすればいいわけじゃない。だってボク同意してない。ゴーサインしてないそれはない。でも始まって。ボク抵抗した。挿れんな無理って言った。だけど触ってきて、そこまでするの!?ってくらい触って触って舐めて触って触って触って。ボク、イッちゃって宮君の背中にぎりぎりって爪立てて。え?あれ。なんでボク。イッて、宮君の背中に腕とか回しちゃったの?あれ?ボク泣きながらしがみついて。あれ?なんでだ。
だからなんで。
宮君とは、なんで最後までシタの??



「えぇ?」
「先輩。」


宮君がボクを呼ぶ。
ボク、目をぐるぐるするの止めて宮君に視線戻す。
さっきからずっと身体、拘束されてるのに。
ボクを見てくる目とか、なんかちょっと飛んじゃってるみたい。黒がさらに深く濃く真っ黒黒で、ボクを見て。そこにボクしか映り込んでない程、怖いくらい見てきてるっていうのにさ。
ボク。
嫌だって、逃げないのなんでだ。



「先輩。」
「宮君。」



宮君が呼ぶ。
抑揚の無い声で、ボクを呼んで。
ボクも、呼んで。


宮君は。
ボクの懐いた後輩。
親友って、思ってて。




雪の浮気にそうかもしれないと思ったあの日、頭の中には宮君。
行く先は宮君しか思いつかなくて。



いつだって。気づけば隣にいるんだ、この子。
道場で、独り引いてて。飲み会で独りで。だからボクが側に行って。飲み会で宮君の、隣に。料理食べずにお酒ばっかりだから。だから心配になっちゃって料理盛り付けて、ボクの美味しいと思ったの食べさせたくて。美味しくなかった時は残念で、嫌で。だったらボクが作るって、家にお邪魔して作って食べさせて。一緒に作るようになって、一緒に食べて。
道場で独り引く姿が凛としてて綺麗で。その姿をもっとよく見たいなって思ってだからボク近くに行って。宮君の引く姿を眺めて、ボクも弓引いて。大学の食堂で見かければ隣に座って一緒に食べて。講義が同じなら隣で。雪との距離が離れていくのと反対に、どんどんボクの日常に宮君が浸透してきて。
そうして気づけば、いつだって隣にいたんだ。
雪じゃなく。
宮君が。




だから、ボクが。
ちがうボク、が。




「え?」




気づけば。
ボクが。
側に行きたくて。
近くにいたくて。
隣に、いたくて。
もっとずっとずっとずっと宮君といたくて。


ひぅって、息のむ。





「違いましたか?」





宮君の問い「どこかちがいましたか?」への返答にボク。
とうとう、辿り着く。




(ちがったよ。ぜんぜんちがったよ、宮君。)




隣が近くが側にいるのが嬉しくてボク。
ナカまで、宮君ならって。
侵食してこい、宮君ならば。
なんて。
入ってくる宮君の宮君をボクはまぁいいかって。
ついでに。
ほんの少し嬉しいとか。
思っちゃったん、だ。
思っちゃったんだよ。



その思考に!到達して!しまったよ!!!



宮君の声が聞こえてきそう。
『先輩はチョロアホですね。』って声がさ、聞こえてきそうです。




(あー!!ボクはチョロアホですね!知ってた!!!)





ボクの口元、への字だ。
晒したくなかったなっさけない顔が宮君の黒目に映ってます。
眉毛まで下がってる。への字の口元が震える。だから出た声はやっぱりなっさけない小声だ。
「…違いましたねぇ。恐ろしいことに全然違いました。」
ボクのちいちゃな声での返事はしかしちゃんと届いたみたい。
宮君の目が揺れた。
「先輩。」
揺れて。
それから。


宮君は笑った。
艶やかでも怖くもない。
明るく優しい、嬉しくてたまらないって顔で笑ったんだ。



(なんかもう、それって物事の真理じゃない?)
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