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雪は弓道が大好きで。ホント大好きで。
高校生時代、全情熱と青春捧げてた。
だからかなぁ…負の反動も強くってさ。
大学入って最初の個人戦で、他校のすごい選手に出逢っちゃって。
それが良い方向に進めれば良かったんだろうけど、雪にとってその出逢いは駄目な方向まっしぐら。
圧倒され。叩きのめされて。
自分の全てが駄目に見えちゃって。
そっから射形も精神もボロボロ。
「そのまま弓道、やめちゃった。」
ボクの初心者発言の後、骨砕かれそうな勢いで抱擁されたボク。断末魔の如き雄叫びをあげようが頭突きを喰らわせようが、宮君はボクを離してくれなかった…いや死ぬから。死ぬからね?ほんとに冗談抜きでボクもうダメだと思った…ぎりぎりと食い込んでくる指やら腕やらで呼吸がね。肺が潰されかけましたね…半分意識ぶっ飛んでそろそろ血反吐でも吐けそうになってようやっと、ようやっと宮君はボクの惨状に気づいてくれまして。
『すみませんでした?』
ってさ。
んん?どこかな?どこにゴメンナサイの気持ち、入ってるのかな??
思わず半眼閉じのじと目になっちゃったのも仕方ないと思うんだ。
ボクが動かなくなったことに何かを感じたのか、宮君は絡めていた手足に少しだけ。最後にぎゅっと力を込めてから、ゆっくりと抱擁を解いた。
ようやく離れていく宮君の手足と身体。
ボクはすぐさま飛び起きーーたかったけど!痛みで!無理!
でも可能な限りの速さで宮君からなるべくなるべく遠ざかる様にベッドの端っこへとにじにじ移動する。にじにじにじにじ。壁とヘッドボードで作り上げられた隅っこにまでどうにか移動して、ボクは宮君の方へと身体を向けた。
視線の先では、身体を起こしてベッドのわりと足元寄りに座ってる宮君がいて。先ほど見た衝撃映像的な、お顔がね。晒されていまして。
逸らしかけた目を、逸らしてしまいそうになる心を叱咤して!
うぅぅって小さく唸り声を上げ、
でも相変わらずの無表情。
ボクをぎりぎり締め付けてたとは思えないその変わらなさに思わず向けた胡乱なボクの視線など。宮君の視界には入ってなかったようです。
目ぇ合ってるけどねぇ!!
『先輩、説明を求めます。』
いつもと同じ声で、宮君は。
『今すぐ詳細にあの不用ブツと先輩の関係性。自分にもわかるように詳らかにお願いします今すぐ。』
全く、ちらりとも。欠片も微塵も!ゴメンナサイ要素皆無な謝罪言葉の後で。宮君から下された説明要求命令…だよね?お願いとか言ってるけど、ほぼ命令だよねぇぇ??
ぐぬぅって変な声あげそうになりながら、でも負けるかよって!ボクは果敢にも口を開く。
『それより宮君?痛かったボクに気持ち込めたゴメンナサイはーー』
『説明。』
『ぐぬぅうぅぅ。』
一途両断宮君に、ボクはやっぱり変な声上げた。
雪とのあれやこれやの説明を求められたボクは、ならばとパンツと引き換えに宮君のそれにお応えすることとなった。
まぁねぇ、宮君には常日頃お世話になっていたわけだし。いろいろ話も聞いてもらったしね。
そこに不満はない、そこには。
そんなわけで、今2人仲良くベッドの上。
ボクは正座。
両膝をきっちりつけて背筋もびしっ。膝の上に両手も置いてこの上なく立派な正座姿。気分はあれだよ、棒持ってお坊さんが闊歩する中、胡座みたいな足つきで座ってスパーンってされるあれ。
…まぁ。違うか。無我の境地とは程遠いとこにいるしね、ボク。
宮君は肩膝立ててそこに顎なんて乗せちゃってさ。真正面で向かい合うにはまだ見慣れない顔面に、(うわーもーうわー。ちょっと前髪ぼさってしてくんないかなー。あと眼鏡。あの黒縁最高に可愛いんだけどなー。)内心、切々と訴えてはいるんだけど。
はらり。
後ろとか横とかに流してた前髪が良い具合に垂れてきて!よしよしそのままいつもの宮君に、って願うボクにまるで見せつけるかのよう!に!
宮君は大きな手でその前髪を後ろに撫で付ける、その仕草がまた。
破 廉 恥 すぎだよー!!
だってさ。ただ、ざって適当に後ろに前髪やればいいだけでしょ?それをなんでわざわざちょっと顎とかくいってあげるの?なんでその黒曜石みたいな真っ黒お目目でボクのこと流し目みたいにして見下ろすの?!ねぇ宮君。
無駄なその色気ほんっといらないんだけど!!!
「先輩?続きをどうぞ。」
宮君絶対わかってる。
自分の顔面が優良なこと!絶対!!
楽しげなのわかってんだよ!無表情なのに頬がちょっとあがってんの!わかる!!
ぎりぎり歯を食いしばり唸り声をあげながらも、でもボクは続きを話す。
約束したからね。パンツと引き換えに!
「雪は辞めちゃったけど、宮君が知ってるようにボクはそのまま。雪は学部の友達やらいろんなこと知り合ってなんだかいつの間にか今みたいに軽薄そうな見た目になっちゃってさぁ。」
真面目だった雪とは正反対、ただのんびり引くことが楽しくて仕方なかったボクは、雪と同じとこに進んだ大学でも一緒に弓道やってて。雪が辞めた後も、だから残ってて。
そっから。
ボクたちの関係も変わっちゃった。
雪はそれまでボクにとって大事で大好きな友達だったし、一緒にいて気楽で楽しくていつも一緒だったけど。
道場で会わなくなって、学部だって違って。
前の様に一緒にいなくなって、それで。
ボクは宮君の目を見ながら、変わっちゃった頃の話をする。
思い出すだけでため息出そうになる。
渋い記憶の。
「それで、襲ってきたから返り討ちにしたの。」
高校生時代、全情熱と青春捧げてた。
だからかなぁ…負の反動も強くってさ。
大学入って最初の個人戦で、他校のすごい選手に出逢っちゃって。
それが良い方向に進めれば良かったんだろうけど、雪にとってその出逢いは駄目な方向まっしぐら。
圧倒され。叩きのめされて。
自分の全てが駄目に見えちゃって。
そっから射形も精神もボロボロ。
「そのまま弓道、やめちゃった。」
ボクの初心者発言の後、骨砕かれそうな勢いで抱擁されたボク。断末魔の如き雄叫びをあげようが頭突きを喰らわせようが、宮君はボクを離してくれなかった…いや死ぬから。死ぬからね?ほんとに冗談抜きでボクもうダメだと思った…ぎりぎりと食い込んでくる指やら腕やらで呼吸がね。肺が潰されかけましたね…半分意識ぶっ飛んでそろそろ血反吐でも吐けそうになってようやっと、ようやっと宮君はボクの惨状に気づいてくれまして。
『すみませんでした?』
ってさ。
んん?どこかな?どこにゴメンナサイの気持ち、入ってるのかな??
思わず半眼閉じのじと目になっちゃったのも仕方ないと思うんだ。
ボクが動かなくなったことに何かを感じたのか、宮君は絡めていた手足に少しだけ。最後にぎゅっと力を込めてから、ゆっくりと抱擁を解いた。
ようやく離れていく宮君の手足と身体。
ボクはすぐさま飛び起きーーたかったけど!痛みで!無理!
でも可能な限りの速さで宮君からなるべくなるべく遠ざかる様にベッドの端っこへとにじにじ移動する。にじにじにじにじ。壁とヘッドボードで作り上げられた隅っこにまでどうにか移動して、ボクは宮君の方へと身体を向けた。
視線の先では、身体を起こしてベッドのわりと足元寄りに座ってる宮君がいて。先ほど見た衝撃映像的な、お顔がね。晒されていまして。
逸らしかけた目を、逸らしてしまいそうになる心を叱咤して!
うぅぅって小さく唸り声を上げ、
でも相変わらずの無表情。
ボクをぎりぎり締め付けてたとは思えないその変わらなさに思わず向けた胡乱なボクの視線など。宮君の視界には入ってなかったようです。
目ぇ合ってるけどねぇ!!
『先輩、説明を求めます。』
いつもと同じ声で、宮君は。
『今すぐ詳細にあの不用ブツと先輩の関係性。自分にもわかるように詳らかにお願いします今すぐ。』
全く、ちらりとも。欠片も微塵も!ゴメンナサイ要素皆無な謝罪言葉の後で。宮君から下された説明要求命令…だよね?お願いとか言ってるけど、ほぼ命令だよねぇぇ??
ぐぬぅって変な声あげそうになりながら、でも負けるかよって!ボクは果敢にも口を開く。
『それより宮君?痛かったボクに気持ち込めたゴメンナサイはーー』
『説明。』
『ぐぬぅうぅぅ。』
一途両断宮君に、ボクはやっぱり変な声上げた。
雪とのあれやこれやの説明を求められたボクは、ならばとパンツと引き換えに宮君のそれにお応えすることとなった。
まぁねぇ、宮君には常日頃お世話になっていたわけだし。いろいろ話も聞いてもらったしね。
そこに不満はない、そこには。
そんなわけで、今2人仲良くベッドの上。
ボクは正座。
両膝をきっちりつけて背筋もびしっ。膝の上に両手も置いてこの上なく立派な正座姿。気分はあれだよ、棒持ってお坊さんが闊歩する中、胡座みたいな足つきで座ってスパーンってされるあれ。
…まぁ。違うか。無我の境地とは程遠いとこにいるしね、ボク。
宮君は肩膝立ててそこに顎なんて乗せちゃってさ。真正面で向かい合うにはまだ見慣れない顔面に、(うわーもーうわー。ちょっと前髪ぼさってしてくんないかなー。あと眼鏡。あの黒縁最高に可愛いんだけどなー。)内心、切々と訴えてはいるんだけど。
はらり。
後ろとか横とかに流してた前髪が良い具合に垂れてきて!よしよしそのままいつもの宮君に、って願うボクにまるで見せつけるかのよう!に!
宮君は大きな手でその前髪を後ろに撫で付ける、その仕草がまた。
破 廉 恥 すぎだよー!!
だってさ。ただ、ざって適当に後ろに前髪やればいいだけでしょ?それをなんでわざわざちょっと顎とかくいってあげるの?なんでその黒曜石みたいな真っ黒お目目でボクのこと流し目みたいにして見下ろすの?!ねぇ宮君。
無駄なその色気ほんっといらないんだけど!!!
「先輩?続きをどうぞ。」
宮君絶対わかってる。
自分の顔面が優良なこと!絶対!!
楽しげなのわかってんだよ!無表情なのに頬がちょっとあがってんの!わかる!!
ぎりぎり歯を食いしばり唸り声をあげながらも、でもボクは続きを話す。
約束したからね。パンツと引き換えに!
「雪は辞めちゃったけど、宮君が知ってるようにボクはそのまま。雪は学部の友達やらいろんなこと知り合ってなんだかいつの間にか今みたいに軽薄そうな見た目になっちゃってさぁ。」
真面目だった雪とは正反対、ただのんびり引くことが楽しくて仕方なかったボクは、雪と同じとこに進んだ大学でも一緒に弓道やってて。雪が辞めた後も、だから残ってて。
そっから。
ボクたちの関係も変わっちゃった。
雪はそれまでボクにとって大事で大好きな友達だったし、一緒にいて気楽で楽しくていつも一緒だったけど。
道場で会わなくなって、学部だって違って。
前の様に一緒にいなくなって、それで。
ボクは宮君の目を見ながら、変わっちゃった頃の話をする。
思い出すだけでため息出そうになる。
渋い記憶の。
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